第9話

 最悪だ・・・・・・なぜ気づかなかったのか自分でもわからない、雰囲気が違かったからか、予想外だったまさか白河も海に遊びにきてるとは・・・・・・


 三村の奴はさっき離れてから、見当たらないし、蒼太のジュース買うのめんどくさいし、せっかくの海が少し台無しになった気分だ。


 でも、水着の上からラッシュガードを着ていたけど、水着姿の白河を見れたのだけはよかったのかもしれない。


 はぁっ・・・・・・とため息を吐きながらコンビニ向かう。


「えーと・・・・・・サイダー、サイダーっと」


 コンビニの棚からサイダーを取り出す。


「私は、麦茶が欲しいなぁ〜」


 後ろからそんな声が聞こえたので、後ろを振り返ると、髪の毛を縛った白河がいた。

 美少女の名がふさわしい姿だった。


「えっと・・・・・・その」

「ナンパした相手には、飲み物とか食べ物奢ったりするんじゃないの?」

「人違いだと思います・・・・・・」

「えぇ〜そうかな〜?


 白河はずっとニヤニヤしながらこちらを見ている。絶対にバレているはずなのだが、知らんぷりを俺は続ける。続けるしかなかった。


 すると、白河がいきなり背伸びをして、俺の方に顔を近づけてくる。


「えっ?ちょっ・・・・・・」


 俺は反射的に目を瞑ってしまった。すると、濡れている前髪を小さな手で上にあげられる。

 目を開けると、白河が大きな瞳で俺の方をジロジロと見ていた。


「やっぱりかっこいいね」

「やっぱり?見たことないだろ」

「ん〜?さっきナンパしてきた人とそっくりだよー?双子かなー?」


 もう正直に言えといった表情で俺の方を見てくる。流石に誤魔化すのは無理だった。


「すみません、ナンパなんかして」

「ふふっ、怒ってないよっ、彼女でもなんでもないし」


 そうだ、なんで俺は謝っているんだ、俺が悪いみたいになっていたが、別に白河は彼女でもないし、怒るわけ・・・・・・いや、多少不快な気持ちにさせたかもしれないからな・・・・・・


 俺は、再びコンビニの棚を開き、今度は麦茶を取り出す。そのまま会計を済ませる。


「ほらっ、やるよ」

「えっ・・・・・・ありがとうっ」

「じゃあこれで」

「あっ!ちょっと待って!」


 そう言って白河は俺の腕を掴み、俺が帰ろうとするのを止める。


「もう少し、喋らない?」

「えっ・・・・・・それは、麦茶だけじゃ、足りないということですか?」

「ち、違くて!わ、私が喋りたいだけ・・・・だめ?」


 いやいやいや、白河が俺と?学年一の美少女だぞ?断れないだろ・・・・・・


「大丈夫」

「本当?!やったぁ!じゃあ、外にテーブルとか椅子あるから、あそこで喋ろっ」


 ぱぁっと顔が明るくなって、俺を外に連れて行く。


「遠くから私ってわかんなかったの?」

「えっ・・・・・・?」

「ナンパした時」

「えっと・・・・・もう勘弁して・・・」

「あははっ!ごめんごめんっ、でも、気になって」


 まぁ、隠す必要もないが話す必要もないと思った。まぁ、どうせ言っても減るもんじゃない。


「雰囲気がいつもと違かったし、それに八割三村のせいだから」

「そうなんだ・・・・・・」

「そのナンパした二人組は可愛かった?」


 なぜそんなことを聞いてくるんだ、自分だって分かっているのに、意地悪だ。


「さぁ〜どうだったか、覚えてない」

「まぁ、黒田くんはおっぱいばっかり見てたからなぁー」

「見てない!ちゃんと顔みて・・・・・・・・・あっ」

「ふ〜ん、顔見てたんだ・・・・・・」


 とテーブルに肘をつけ、手に顎を乗せて、ニヤリと笑っている。

 ハメられた。なんか今日はやたらと白河に、イジられる。怒ってないってさっき言ってたけど、やっぱり怒ってるんじゃないだろうか。


「2人とも、その、か、可愛かったよ」

「そ、そっか・・・・・・」


 顔が赤くなるのがわかる。気温が暑いというのもあるが、それだけではない。


「顔赤いよ?」

「暑いから・・・・・・」


 そう言って、白河の方を見ると、白河も顔を伏せているが、見間違いかもしれないが、耳まで真っ赤だった気がする。


「白河だって赤いじゃん」

「暑いもんっ」

「・・・・・・そう、だよな」


 白河は、その会話をすぐに終わらせると俺が買った麦茶のキャップを開けると、ごくごくっと麦茶を飲んでいる。


「あれっ?黒田くんはそれ飲まないの?」


 それと言って、指を指してきたのは、蒼太に買ったサイダーだ。


「いや、これは友達に頼まれたやつで」

「じゃあ他には・・・・・・」

「あいにく、お金2人分しか持ってこなかったから」


 白河はそれを聞いて、自分の麦茶を見つめていた。別に嫌味で言ったわけではない。

 本当に2人分しか持ってきてないとありのまま伝えただけなのだ。


「ちょっと待ってて!」


 すると、白河はまたコンビニに入っていく。そして、帰ってきた時には、片手にもう一本サイダーを持っていた。


「はいっ!あげるっ」

「えっ、でも」

「黒田くんは優しいねっ」

「優しくはないと思うぞ」

「そうかなぁ・・・・・・じゃあ、そろそろ戻ろっか」


 白河がそう言ったので、戻ることにした。とりあえずは、よかったんじゃないだろうか。


◆◆◆


 コンビニから徒歩5分くらいで、さっきまでいた場所に着いたので、そこで白河はとは別れた。


 すると、すぐ近くに白河の友達がいたみたいで、逃げるように、その場から離れた。


「あれっ?なんか嬉しいことあった?」

「ん〜?ちょっとねー」


 そんな会話が聞こえたような気がした。蒼太たちのところにようやく戻ると。


「遅いっー、死んじゃう・・・・・・」


 蒼太が日陰の中で、干からびそうになっていて、サイダーをあげると、ごくごくと飲み干す勢いで飲んでいた。




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