第5話

「はーい、それじゃあ明日からの夏休み怪我や事故のないように、気をつけて過ごしてくださいねー」


 担任の1学期最後のホームルームが終わった。

 明日からは夏休みに入る。みんな、楽しみにしていた夏休みだ。

 周りからは喜びを訴えるかのように声を上げている。


「なぁ、今日どっかいかね?」


 三村から誘われたのは嬉しいが、今回は行かないことにする。

 単にめんどくさいわけではない。決してちがうぞ


「あー、俺パス」

「はぁー?なんだよー」

「まぁ、今度の海とか遊びには行ってやるから」

「それならよしとするか・・・・・・」


 三村はしぶしぶ、OKみたいな顔だった。決して納得はしていなかった気がする。


 まぁ、今度の海にまで行かないって言ったら流石に三村が可哀想だと思ったので、一緒に海に行く約束は守ろうと思う。


◆◆◆

 そんなに俺とどこかに行きたかったのか、三村は帰り道が遠くなるのを知っているのに、俺について来た。


「じゃあ俺こっちだから」

「あー、じゃあな俺の彼女」

「誰が彼女だ気持ち悪い」


 結局いつも喋ってるようなことを話して三村とは別れた。

 それにしても今日は暑い。予報では最高気温は30度らしい。

 額から汗が垂れる。


「誰の彼女だって??」


 後ろからそんなことを聞かれた気がして振り向く。

 後ろには夏服姿の白河が立っていた。


 盗み聞きなんてタチの悪いと思ったが、たまたま聞こえた、だけかもしれないので、今思ったことは無かったことにしておく。


「三村が適当なこと言ったんだよ、俺に彼女なんているわけないだろ?」

「あははっ!そっかそっか」

「笑うなよ・・・・・・結構傷つくぞ」

「あっ・・・・・・ごめんごめんっ」


 手のひらを合わせて、謝ってくる白河に、別に大丈夫と少し強がった返事をした。


「あっ、今暇?暇だよね?暇でしょ!」

「な、なんだよ急に」


 なんなんだ急に、嫌な予感しかしないんだが・・・確かに暇だが、何をする気なのだろうか。


「買い物手伝ってくれない?一人じゃ結構重たくて厳しいんだよねー・・・・・・だめ?」

「だめ・・・・・・じゃない」

「やったー!!ありがとうっ!」


 俺はおしに弱いのだろうか。断れなかった。

 上目遣いで、大きくて綺麗な瞳に、なにも抵抗出来なかった。


 はぁっ、と視線を下に逸らすと、半袖のシャツが汗でぬれて、胸のあたりから、黒い何かが見える。

 ゴクリッと思わず生唾を飲み込んだ。


 そんな視線に気づいたのか、白河が俺の目線を辿ると、自分のシャツが透けていることに気づいた。


「あ、あの、着替えてから行ってもいい?」

「いいけど、別に、そのままでも・・・・・・」

「ん〜?何か言った??」


 つい出来心で、もう少し見たかったのだが、表情は笑っているのに、なぜかとても怖かった。

 本能がこれ以上はやめておけと言っていた。


「いえ、なんでもないです・・・・・・」

「よしっ!それじゃあ、まずは〜私の家行こっか!」

「ど、どうしてそうなる」


 いきなり何を言い出すんだと思い、慌てて理由を聞くと、白河は逆になんで行かないの?みたいな顔をしてきた。


 白河は額の汗をハンカチで拭いたあと、手でパタパタと自分の方向に風を送っている。


「だって、私の家にしか着替えないし・・・・・・」

「いや、じゃあ俺はここで」

「何言ってるの!こんなところで待ってて熱中症で倒れたりしたらどうするの!」


 と言って腕を引っ張られ白河の家に連れてかれる。

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