第6話
俺はまた、白河の家に上がることになってしまった。
俺はやっぱり外で待ってると言ったのだが、白河が呆れた顔で
「はぁっ??なに言ってるの?こんなに暑いんだから本当に熱中症にでもなられたら困るから、家に入って。というか入りなさい」
「・・・・・・それじゃぁ、お邪魔します」
あんなに言われたら仕方なくだ。そう仕方なくだ。
まぁ本当に熱中症などになったら洒落にならない。そう、あくまで熱中症にならないために家に入ったのだ。
リビングのソファに座り、白河が出してくれた冷たい麦茶を飲む。
ごくごくと喉を通っていく時、最高に美味しいと感じた。
ご飯を食べるときに1番の調味料は空腹というが水分をとる時の1番のおいしく感じる方法は渇きなのかもしれない。
◆◆◆
数分待つと、白河が白のワンポイントのTシャツにジーンズを履いていた。
とてもラフな格好だった、買い物といってもスーパーやコンビニなどだろう。
そりゃ、そうだ彼氏とのデートでもないんだし。お洒落をする必要がない。
しかし白河が着ればどんなラフな格好も一周回ってお洒落に見える。というかお洒落だ。
「ごめんっ待たせて、それじゃ行こっか!」
元気な声を響かせ、飲みかけだった麦茶をグイッと最後は飲み干して、白河の家を出た。
「それで?どこ行くんだよ」
ふと疑問になったし、俺もついて行くんだから知る権利くらいはある。
白河は、人差し指を頬に当てうーん、と考えているポーズをとっている。
「うーん、玉ねぎ、人参、豚肉、あとルーが欲しいかな?あとは・・・・・・」
「ちょっと待て、俺はどこに行くか聞きたいのであって、買いに行くものを聞いたんじゃない」
「あれっ?じゃあ今ので分かったでしょ?」
まぁ、今のを聞いて、スーパー以外言う奴は俺の知っている中で一人もいない。
「じゃあ黒田くんもなんでも一つ買っていいよ」
「えっ?いいのか?」
「うん!もちろんっ!荷物持ちさせちゃうんだし」
「まぁ、お言葉に甘えて」
「しかも私も悪いと思ってるんだよー」
「その棒読みは悪いと思ってないだろ」
バレた?と笑いながら言ってくる。その笑みは、さすが学年一位の笑顔と言ったところだろうか。
しかし、その悪戯っ子のような笑顔をしといて俺に反応して欲しかったのだろうか、白河は恥ずかしくなったのか顔を赤く染めていた。
なぜか俺のことをポスッと軽く殴って来た。
俺は意味がわからなかった。とても頭が混乱した。
「も、もうすぐっ、つ、着くから!今のは・・・その・・・・・・」
「今のは?」
「忘れて・・・・・・」
恥じらいながらも、俺の方を見つめながらお願いしてくる様は、とても可愛らしく小動物のような感じだった。
いつもは、クールで美人なお姉さんキャラって感じなんだが、普段というか、素の白河はこっちなのかもしれない。
これを学校の男子が知ったら、ギャップ萌えで死ぬだろうな。まさに俺が今死にそうなのだから。
また白河の人気が上がって今度はファンクラブや写真集まで作られるのではないかと、馬鹿みたいな妄想をしていた。
いや、必ずしもないとは言い切れないな・・・・・・
◆◆◆
白河が「もうすぐ着く」と言った通り、すぐに着いた、そしてこの辺りは学校の生徒があまり来ない超絶スポットのスーパーらしい。
なので、学校の生徒に見られることはまずないから安心はした。
「じゃあ、あとは自由行動で黒田くんも自分が買いたいの持ってきていいよー」
「いや、着いてくよ」
「えっ?でも・・・・・長くなっちゃうかもしれないよ?」
「ふふっ別にいいよっ」
そのあとは白河は少し納得してない様子だったが、本当に長くなるとかは気にしていない。
それに買いたいものがあまり無いというのも理由の一つだ。
あとは、スーパーだとしても白河が一人でいるのは、危ないと判断したからだ。
通りすがりの人からずっとチラチラ見られたり、女性ですら見惚れていたのだから、襲われたりしたら、全責任が俺にくるし、放っておけない。
白河と一緒に買い物をしていると、白河が新妻のような感覚だった。
いつもより、安い野菜をすぐにカゴに入れたり、お一人様1個までの卵を俺もいるから2個買えるからお得など、とにかくすごかった。
想像くらいはしてもいいだろっ?と思いながら、もし結婚したらこんな感じなのかと感じた。
「じゃあ最後は、お菓子買いに行こっか」
最後にお菓子コーナーに寄り、俺はポテトチップスを手に取り、カゴに入れた。
「ありがとうございまする」
「いやいや、こちらこそー」
変なノリに乗ってきてくれた。
スルーされるよりも、乗ってきてくれる方がボケた方としてたとても助かる。
そのあとレジに行って会計をしていたのだが、レジ打ちのおばちゃんに彼氏と言われて、なんとも言えない空気になった。
とりあえず否定はしておいたが、なぜかスーパーから出るとき、あきらかに
◆◆◆
「はいっ!これお礼のポテチッ!」
白河の家の前に着いたあと、ポテチを袋から取り出し、俺の目の前に突きつけてくる。
「なんでそんなに怒ってるんだよ」
「べ、別に怒ってないけど・・・・・・」
「嘘つくなよ」
「じ、じゃあ!一つ聞きたいことある」
なにか、まじまじと俺の方を見てきた。
否定できそうな空気ではなかった。
「高校に入る前のことなんだけど、私のこと覚えてない?」
白河のことを?高校に入る前?
知らない。そんな記憶はなかった気がする。
それに、こんなに美人なのだったら、印象的すぎて覚えてるに決まっている。
「覚えて・・・・・・ない」
「そっか・・・・・・そうだよねっ」
少し、沈黙が続いた。
「あっ、今日本当にありがとうねっ」
白河は去り際にジュースまで俺にくれた。
「小学生の頃・・・・・・一緒の学校だったのにな・・・・・・ばか・・・・・・」
白河が何か言ったような気がしたのだが、よく聞き取れなかった。
俺はもやもやした気持ちが晴れないまま、家に帰った。
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