第3話

 ご飯を食べ終えて、椅子に座って白河姉がれてくれたコーヒーを一口飲みながら、バラエティ番組を見ている。


 すると、白河姉が俺の正面に座り、マグカップをテーブルにコトッと置いて、ふうっと一息ついている。


「コホンッそれで?あの子はどこで迷子になってたの?」

「えっと・・・・・・公園の近くのコンビニの駐輪場で、ポツンって立ってた」

「そっか・・・・・・」


 白河姉のその表情は、どこか安堵しているようにも見えたが、俺には悲しそうな表情に見えた。


 肝心の白河妹は、ご飯を食べて眠くなったからかリビングのソファでぐっすりと眠っている。


 なんと呑気な妹なのだと笑ってしまう。しかし、その姿を見て、「平和だ」と言い笑ってしまう。


 すると、白河姉が、テーブルに頭をつけそうになるくらいに、頭を下げてきた。


 正直いきなり何をやっているんだと思いびっくりした。申し訳なさが勝ってすぐにでもやめて欲しかった。


「ありがとうっ。本当にありがとうっ」

「いや、そこまでしなくても・・・・・・」

「ううん、もし、妹になにかあったら、私は、私は本当にダメなお姉ちゃんになっちゃう」


 それを聞いて、やっぱり姉としての責任があるんだなと、思った。しかし、一つだけ違うと思ったところがあった。


「君は、ダメなお姉ちゃんなんかじゃないと思うよ、とっても立派なお姉ちゃんだよ、ね?白河妹?」


 白河姉はダメなお姉ちゃんなんかじゃない。ここまで妹を心配して、妹のために頭を下げられるのだ。立派なお姉ちゃんじゃないか。


「うーん、あたまえ、、、」

「ふふっ、なにそれ・・・・・・」


 白河妹が、寝ぼけているのか言葉にならないような声で精一杯喋っている。


 くしゃりと、笑った白河姉はとても綺麗だった。吸い込まれそうな大きな瞳に、艶のある肌、ほんのり赤い頬に、唇。


 隠さず言おう。この時の俺は、白河綾乃に見惚れていた。そりゃそうだろ学年1の美少女が笑ったんだぞ、これが見惚れないわけないだろ。


「黒田くんは兄弟いる?」

「うん、いるよ姉が1人」


 すると白河姉が驚いた様子で俺の方を見てきた。なんだ?そこまで俺に兄弟がいるのがおかしいと思ったのだろうか。


「なんだ?何かおかしいか?」

「いや、ずっと1番上かと思ってた」

「俺が?まさか・・・・・・そんな器じゃないよ」

「えー?でも、すごく妹に懐かれてるから・・・・・・」


 それで1番上と思ったのか・・・・・・下に兄弟が居る人は歳下の扱いになれていると聞いたことがあるが本当なのだろうか。


 でも確かに歳下には懐かれる方だと自分でも思う。しかし、懐かれてるじゃなくて舐められてるだけじゃないかと最近になって気づいてきた。


「ふふっ、なんかこういう話するの新鮮だな〜」

「そうなのか?友達とかとしないの?」

「たまにするけど、そんな頻繁にしないし、それに男の子とこんな話しないよ〜」


 勘違いしちゃうかもしれないだろ。そんな何気ない言葉が世の中の男を悲しい目に遭わせるんだ。と男子を代表しては言えなかった。


 そのあとは用事も済んだので、白河の家を出た。まさかご飯までご馳走させてもらえるとは予想外だった。


 というか、そんなことに誰が予想できるというのだ。もしできていたら、そいつは預言者かなんかになった方がいいだろう。


 そんなことを思いながら、自分の家に帰るまで白河の家の余韻に浸っていた。

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