第37話 チーズケーキの為に
可愛く首を傾げたレンに、食べたいか尋ねると、即答された。
だけど、残念! すぐ出来ません。
この世界の大陸にチーズはない。
あるのは、浮遊城の無限食料庫だけ。
「レンはチーズケーキの元になるチーズから、作りたい?」
「チーズが何かわからないけど、ケーキが食べたい」
◇
「カフェシエルに新メニューを追加します。 今から作るので、調理組は作り方と時間を覚えて下さい。 残りの人は、感想を」
今この場には、カフェシエル一号店と二号店のメンバーが、集まっている。
調理組は、一号店がリンク、二号店がリオルクさん。
他、リアさん、シャルルさん、シャーノア、レン、アイリの五名が感想組になる。
「この世界にチーズがないので、浮遊城から持ってきました。 右がゴーダチーズで、左がクリームチーズです」
「この、ゴーダチーズというのは固そうですね。 これを食べるんですか?」
「チーズケーキは一時間程かかります。 なので、ゴーダチーズを使ったピザを食べてて下さい」
アイテムボックスから、浮遊城で作ったアメリカ風ピザを出した。
その瞬間、店内にピザ特有のマッタリとした、具材とチーズの焼ける匂いが充満する。 全員の視線を奪う匂いに、調理組は食べられないことで悲しい表情をした。
この勢いなら絶対に完食するだろう、と思いながら五人の前に八枚切りのピザを置く。
既に食べ始めている面々を振り返ることなく、僕は調理組と一緒にチーズケーキ作りを開始した。
「用意する材料は……クリームチーズ二百グラム、砂糖七十グラム、卵二個、薄力粉大さじ三、生クリーム百五十グラム、レモン汁は適当に、バター五十グラム、ビスケット六十五グラム」
「じゃあまずは、クリームチーズなんだけど。 ひたすら柔らかくなるまで混ぜて、リオルクさん」
その固まってるのを柔らかく……バカじゃないのか。 ってこと思ってそう。
「リンクは生クリーム作りね。 百五十グラムになるように作ってね」
二人がかき混ぜてる間に、ビスケットを粉々にする為、ガンガン叩いていく。
防音とはいえ、厨房にはシャカシャカ音と叩く音が響いている。
クリームチーズが良い感じに柔らかくなってきたところで、砂糖、卵、薄力粉、生クリーム、レモン汁の順で混ぜては入れるを繰り返す。
「リンクは粉々ビスケットとバターを混ぜて」
この世界にはシートがない為、わざわざ底取れ式の焼き型を創造魔法で作ったんだ。
「バターをしっかり混ぜたら、型に敷き詰めて冷蔵庫に入れる。 後はリオルクさん待ちだから、洗い物をしとこうか」
「もう終わりなんですか」
「後は百七十度で四十五分間、焼くだけだからね」
◇
焼いている間、食べるまでヒマなので、感想を聞きに行った。
「マスター、トッピングを考えてたんですよ! 見てくださいこの数!」
玉ねぎ、トマト、ベーコン以外に結構、候補が出ていた。
チキン、ソーセージ、マッシュルーム、パプリカ、ブロッコリー、じゃがいも、ニンニク、コーン、ベーコン。
「ファジール王国は海があるから、海産物も良いかもね。 後は……フルーツとか」
『ええええ!!!』
「マスター、海産物は良いとしてもフルーツはさすがに……」
「そうですよ。 果物は合わないと思います」
「そのピザはもうスイーツなのでは?」
本場のイタリアからすれば激怒物かもしれないが、アメリカ風を採用してるので。
「候補としてだよ。 良いと思うよフルーツピザ……食べたことないけど」
「マスター、焼けたんで持ってきました!」
「ありがとうリンク。 ホントなら一晩冷蔵庫で寝かせるんだけど……」
〈
「さ、切り分けて食べよう」
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