第37話 チーズケーキの為に


 可愛く首を傾げたレンに、食べたいか尋ねると、即答された。

 だけど、残念! すぐ出来ません。

 この世界の大陸にチーズはない。

 あるのは、浮遊城の無限食料庫だけ。


 「レンはチーズケーキの元になるチーズから、作りたい?」


 「チーズが何かわからないけど、ケーキが食べたい」


 





 「カフェシエルに新メニューを追加します。 今から作るので、調理組は作り方と時間を覚えて下さい。 残りの人は、感想を」


 今この場には、カフェシエル一号店と二号店のメンバーが、集まっている。

 調理組は、一号店がリンク、二号店がリオルクさん。

 他、リアさん、シャルルさん、シャーノア、レン、アイリの五名が感想組になる。



 「この世界にチーズがないので、浮遊城から持ってきました。 右がゴーダチーズで、左がクリームチーズです」


 「この、ゴーダチーズというのは固そうですね。 これを食べるんですか?」


 「チーズケーキは一時間程かかります。 なので、ゴーダチーズを使ったピザを食べてて下さい」


 アイテムボックスから、浮遊城で作ったアメリカ風ピザを出した。

 その瞬間、店内にピザ特有のマッタリとした、具材とチーズの焼ける匂いが充満する。 全員の視線を奪う匂いに、調理組は食べられないことで悲しい表情をした。


 この勢いなら絶対に完食するだろう、と思いながら五人の前に八枚切りのピザを置く。

 

 既に食べ始めている面々を振り返ることなく、僕は調理組と一緒にチーズケーキ作りを開始した。



 「用意する材料は……クリームチーズ二百グラム、砂糖七十グラム、卵二個、薄力粉大さじ三、生クリーム百五十グラム、レモン汁は適当に、バター五十グラム、ビスケット六十五グラム」


 「じゃあまずは、クリームチーズなんだけど。 ひたすら柔らかくなるまで混ぜて、リオルクさん」

 

 その固まってるのを柔らかく……バカじゃないのか。 ってこと思ってそう。

 

 「リンクは生クリーム作りね。 百五十グラムになるように作ってね」


 二人がかき混ぜてる間に、ビスケットを粉々にする為、ガンガン叩いていく。


 防音とはいえ、厨房にはシャカシャカ音と叩く音が響いている。


 クリームチーズが良い感じに柔らかくなってきたところで、砂糖、卵、薄力粉、生クリーム、レモン汁の順で混ぜては入れるを繰り返す。


 「リンクは粉々ビスケットとバターを混ぜて」


 この世界にはシートがない為、わざわざ底取れ式の焼き型を創造魔法で作ったんだ。


 「バターをしっかり混ぜたら、型に敷き詰めて冷蔵庫に入れる。 後はリオルクさん待ちだから、洗い物をしとこうか」


 「もう終わりなんですか」


 「後は百七十度で四十五分間、焼くだけだからね」







 焼いている間、食べるまでヒマなので、感想を聞きに行った。


 「マスター、トッピングを考えてたんですよ! 見てくださいこの数!」


 玉ねぎ、トマト、ベーコン以外に結構、候補が出ていた。

 チキン、ソーセージ、マッシュルーム、パプリカ、ブロッコリー、じゃがいも、ニンニク、コーン、ベーコン。


 「ファジール王国は海があるから、海産物も良いかもね。 後は……フルーツとか」


 『ええええ!!!』


 「マスター、海産物は良いとしてもフルーツはさすがに……」


 「そうですよ。 果物は合わないと思います」


 「そのピザはもうスイーツなのでは?」


 本場のイタリアからすれば激怒物かもしれないが、アメリカ風を採用してるので。


 「候補としてだよ。 良いと思うよフルーツピザ……食べたことないけど」


 「マスター、焼けたんで持ってきました!」


 「ありがとうリンク。 ホントなら一晩冷蔵庫で寝かせるんだけど……」


 〈冷却フレイス


 「さ、切り分けて食べよう」

 

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