第31話 二号店 その二
「し、失礼します!」
リンクは緊張しながら入室した為、若干裏返った声が出る。
「あの! 先程は先王陛下ご一行に失礼な対応をした事、まことに申し訳ありませんでした!」
初めて見たな、キレイな四十五度の最敬礼。
「良い、こちらも名乗らなかったのだから」
「あ、ありがとうございます」
「人数が多くなったから、下へ行こうか。 そろそろ帰って来そうだ」
◇
「戻りました」
「お、久しいなガジャーノ、リーフェイト」
「アイリスは変わらんな」
「エルフじゃからな」
二人は久しぶりの出会いに固い握手を交わした。
「知らない人もいる事だし、自己紹介をしよう」
「こちらご存知、先王陛下ご一行です。 子供達の入学式を終えて戻って来ました」
「ガジャーノ・トルテ・ファジールだ。 今は『神の島』で生活しておる」
「妻のリーフェイト・フォン・ファジールよ。 同じく『神の島』で生活してるわ」
「レン・トルテ・ファジールです。 ファジール魔術学園の一年生になりました。 キオラール兄さんの元で生活しつつ、カフェシエルで働く事になってます。 よろしくお願いします」
「アイリ・トルテ・ファジールです。 同じく一年生で、キオ兄様の屋敷で生活し、シエルで兄レンと交代で働きます。 よろしくお願いします」
「そしてこちら、カフェシエルの新従業員のリンクと商業ギルド職員」
「初めまして。 母、シャルルの息子になります。 リンク十七歳です。 カフェシエル一号店で働いています。 よろしくお願いします」
「商業ギルドマスターのアイリスじゃ! まだ三百五十七歳のピチピチじゃ!」
アイリスさん、三百十五七歳だったのか……。
「商業ギルドの職員をしています、ポールです。 カフェシエル一号店の担当です」
「商業ギルドの職員をしています、サリーです。 喫茶シエル二号店の担当です」
「あ……レン、アイリ! 僕の事は、シャーノアって呼んで。 カフェシエルでは昔からこれで通してるから」
「「わかりました」」
「それで、二号店はどうだった?」
「はい、率直な感想を言いうと……」
何が言われる? 広さか?
「何もかも広くて、驚きを通り越して呆れました」
隣の二人は頷き、交互に意見を述べる。
「出来れば、通路を半人分広く出来ませんか? 厨房の通路です」
「家族で来てもいいように、店内の色を明るくして欲しいです」
◇
「くそっ! いつになったら、レシピが公表されるんだ! もう、十二年だぞ!」
「あの
「ねえあなた、あの子にやらせましょ。 私たちが従業員として入るよりも、確実性が増すんじゃないかしら?」
「いや、だがあいつはケーキにしか目がないぞ?」
「だからよ。 ケーキのレシピを盗らせて私たちが先に作るのよ。 そうすればもっと売上が上がるわ」
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