第24話 アズモールと王家

「「「「いただきます」」」」


「お!」

「んー!!」

「美味いな……」


 四人でハンバーグを試食していると、元気な看板娘がやって来た。


 「おはようございまーす!って、あれ?何食べてるんです?」

 「あ! もしかして新作ですか!」


 「今日の賄いはリアさんとシャルルさんだけ、ハンバーグになるね」


 「単品ですか?」


 「いや、定食の予定だから、米かパンになるよ」


 「米……米ってもしかして…」


 「そう、餌として扱われてる米」


 「え! あれって食べれるの?!」


 「精米して炊くと食べれるよ」


 「もしかして今後、米も使っていくんですか?」


 「メニュー候補に書いた、オムライスとカレーライスは、米を使う食べ物なんだ」


もち米があれば、大福とか作れるんだけどなあ。 いや、いっそのこと浮遊城で作るか……





 開店し、チラホラと常連さん方が入店し始めた頃…


カラン


 「いらっしゃいませ」

 「お帰りはあちらです」


 何を言ってるんだ。 と思ったが出入り口を見て、なるほどと思った。


 カフェシエルを建築中の頃に、商業ギルドのギルドマスターであるアイリスさんが『紅茶の王家御用達』の証を持ってきた事があった。 その時に没収というか回収された商会が、アズモール商会だ。

 また、『パンの王家御用達』の証を回収されたのも、パン屋アズモール。 

 つまりアズモールさんの実家だ。

『王家御用達』という代々保ってきた証明を失ったアズモールさんからすれば、カフェシエルは敵そのもの。


 ハッキリ言って逆恨みなので、困ってる。

 という事をアイリスさんに相談したところ、アズモールさんとその関係者はカフェシエルに出入り禁止になった。

 にも関わらず、度々こうして足を運んで来る。

 今日も、同じ内容だろうと思っていると……

 リアさんが先手を打った。


 「商業ギルドのギルドマスターより、アズモールさんと関係者さんはカフェシエルへの出入りを禁止されているはずですが、御用は何でしょうか」

 

 「もちろんこの事はギルドマスターである、アイリス様に報告させていただきます。 もし、前回と同様又は類似した内容であるなら、今回は厳重注意だけでは済まされない事は、アズモールさんもご存知だと思います」


 「きょ、今日はそこの少年に、は、話があって来た!」


 「こ、これを見ろ! 陛下より頂いた書状だ。 内容は、アズモール商会にカフェシエルで出している品のレシピ及び出来ている品のレシピを渡すように、と書かれている!」


 「わかったら、さっさとレシピを寄越せ!……まさかとは思うがS級冒険者ともあろう者が、陛下より頂いた書状を無視する訳がないよな?」


 と、勝ち誇ったかの様にニヤニヤするアズモールさんに、僕はアズモールさんにとっての特大級の爆弾を投げて上げた。


 「全くわからないですね。 理解に苦しみます」


 「これだから最近のガキは……」


 「なので」


 「わからない事は、アズモールさんの後ろにいる陛下に、直接聞きますね」






 「カフェシエルに度々絡んできたアズモール商会のアズモールの事じゃが、余罪含めて終身奴隷になり、鉱山送りになったわ」


 「偽の書状を作り、国王であるわしの名前を使ったんじゃ。 当然といえば当然の結果じゃな」


 王城の応接室に着くなり、陛下から開口一番にアズモールの末路を聞かされた。


 応接室には、国王陛下、王妃殿下、多分テオシウスさん、知らない女性と、シャーノアくん。 

 更に宰相のトルパーダさん、騎士団長と知らない男の子がいた。

 計八人だ。


 王族と宰相と護衛の騎士団長がいる部屋に、入室したのは僕とゼダンとマリナの三人で、室内は大所帯となっていた。



 「ユウトに紹介したい者達がいる。 わしの妻と後日即位するテオシウス、娘のアリス、騎士団長であるデイッグとその息子だ」


 「王妃のリーフェイト・フォン・ファジールよ」


 「私の名は、テオシウス・トルテ・ファジール。 陛下からユウトさんのことは聞いてます」


 「私は、王女アリス・トルテ・ファジールです」


 「冒険者ギルドでは失礼な対応をしてしまい、申し訳なかった。 騎士団長デイッグだ」


 「私はギルバート、十六歳。 騎士団長の息子でキオラール様の護衛です」


 「丁寧な挨拶ありがとうございます。 僕はユウト・サトウ。 十三歳ですがS級冒険者であり、カフェシエルのマスターをしています。 よろしくお願いします。 そして後ろの2人が、執事のゼダンとメイドのマリナです」


 「『神の島』と呼ばれる浮遊城で、執事をしております、執事型オートマタのゼダンと申します」


 「同じく、メイド型オートマタのマリナと申します」


 「「王族の方々、宰相様、騎士の方もよろしくお願い致します」」


 タイミングぴったりだなあ。


 「あら、『神の島』から来たのですね。 光栄に思いなさい、国王陛下と王妃である父上と母上が生活するのですから。 貴方達三人は召使いとして励みなさい」


 その侮辱とも言える発言に、陛下と王妃はもちろん、テオシウスさん、キオラールくん、デイッグさんは一瞬だけ緊張した顔をした。


 僕じゃなかったら見逃してたね。


 「アリス」


 「はい、母上」


 「今なら謝罪出来ますよ」


 「何故私が謝罪を?」


 「ユウトは、S級冒険者の疾風や青龍が重症を負いながら戦い抜いた魔族よりも、更に強い上位魔族を倒し戦闘終結に貢献したただけでは無く、『神の島』である浮遊城やそこに住まう神獣の管理者でもある」


 「え」


 「にも関わらずお主は、ユウトを含む三人に対してあろう事か『召使いとして励め』と言った。 知らぬ事とはいえ、知ろうとしなかったのもまた事実だ」


 ガジャーノさんや、娘さんの顔が真っ青になってますよ。


 「『神の島』とそこで働くオートマタ達は元々、ユウトの為にアリディーテアの神が作った事は、真偽の魔道具で確認済みだ。 『光栄に思え』と言ったな、こちらが住まわせてもらうにも関わらず、その発言はないだろう。 それに『神の島』には既に神獣様が生活していらっしゃる。 その様な態度では失礼でしかない。 王妃であるリーフェイトが親切心で聞いても、謝罪する気配が無かったことを含め、自室にて待機を命じる」


 あらら、真っ青から白くなってる気がするよ。


 「失礼した。 まさかあの様な事を言うとは……」


 「いえ、ギルバートさんも顔が真っ青ですが、大丈夫ですか?」


 「だ、大丈夫で、す」


 「では、気を取り直して。 まずは間取り図の確認から……」





 後日、キオラールくんの話によればアリスさんは、厳しい再教育を受け、見違える様になったとか。



 傲慢な態度はダメだね。

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