第23話 新メニュー

 「ハンバーグ定食……ですか?」


 聞き慣れない言葉に頭を傾ける仕草をする。


 「どういった肉料理なんです、マスター」


 「肉をただ焼くんじゃなく、細かくした肉を平たくして焼いた食べ物です。 まあ作ってみましょう」


 材料を思い浮かべながら伝えようとした時、来客を告げるカランという音と共に元気な声が店内に響く。


 「材料を言いま「おはようございまーす!」この声は……シャーノアくんかな」


 「あれ、マスターにリオルクさん、ガリムさん。 何してるんですか?」


 「マスターが新メニューの作り方を教えてくれようとしてたんだ」


 「もしかしてガリムさん、怒ってるー?」


 「気のせいだ」


 「シャーノアくんはもう、朝食食べた?」


 「食べてません!」



 王城で朝食を食べずに来る事はないな、と苦笑しつつ向き直る。



 「じゃ、せっかくだし四人分にしよう」

 

 「材料言うよ。 魔牛四百グラム、魔豚百グラム、玉ねぎ六十グラム、石パンか食パンある? 「昨日のパンの残りなら」じゃそれで、八等分の一枚を使おう。 卵一個、魔牛乳二十グラム、塩四グラム、コショウ一グラム、氷水五十シーシー、バター十グラム、油 大さじ二。 以上」



 「まず、リオルクさんは魔牛と魔豚の肉を全部ミンチに」


 「ガリムさんは、玉ねぎをみじん切りにし終えたら、飴色になるまでバター五グラムで炒めて下さい」


 「シャーノアくんはこの食パンを粉にして欲しい」


 それぞれに指示を出し、待つこと十五分後……。



 「「出来ました」」


 「じゃ次に、つなぎを作ります」


 「「「つなぎ?」」」


 「つなぎっていうのは、材料を練ったり混ぜ合わせる時に、まとまりやすくするための物……です」


 「パン粉の入ってる容器に、炒めた玉ねぎ、溶いた卵、魔牛乳を入れてしっかりと混ぜます」


 「出来たら、氷水五十シーシーを入れたボールの上に、ミンチにした肉を入れたボールを重ねて載せ、塩四グラムを加えこれも、しっかりと混ぜます。 目安は粘りが出て肉が少し、白っぽくなるくらいまで」


 「あー、手がネチャネチャするー」

 「確かにこの作業は好き嫌いがわかれますね」


 「混ぜ合わせれたら、コショウとつなぎを押し込む感じで混ぜ入れます。 更にしっかりと肉を潰し、ボールに押し付けるように練ります。 この作業中は、ひき肉の温度が上がりやすいです。なので途中で、氷水を加えながら混ぜていきます。 今回は四人だけなので、焼く時の事も考えて、好きな大きさにしましょう」


 「僕は手の平サイズで」


 「焼くんですか?」


 「焼く前にもうひと行程あります」


 「ハンバーグの空気を抜きます。 理由としては、焼いてる時に中の空気が膨張して、破裂する原因になります。 なので三~四回程叩いて空気を抜いて下さい」


 「最後の工程の焼く作業です」


 「フライパンにバター五グラムを入れて熱します。 溶けたら油大さじ一を入れて全体に広げます。 火は中火くらいにして、ハンバーグを油がはねないように入れます」


 「焼き色がついたらひっくり返して、弱火に。 二回繰り返して四人分のハンバーグが出来るので、肉汁が出てきたら完成です!」


 肉とコショウの焼ける匂いが厨房に充満する。


 「五~六回程、工程があるんだな。 作り方もさほど難しくはないが……」


 「問題は開店中に出す量ですね。 保存は出来るんですか? 肉の旨みが逃げそうですが」


 「出来なくはないです。 ただ面倒なので、ある程度の量を事前に作っておいて注文が入ってから、成形して焼くのが良いと思います」



 「焼けたよー」

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