第15話 商業ギルド その二

 ゲラルディーさんの間の抜けた声の後、またしても一瞬の静寂。


 最初に口を開いたのはやはり、解雇を言い渡されたゲラルディーさんだ。


 「何故です! ギルマス! 何故私が!」


 「お主、今まで同じ様なことを繰り返しておったじゃろ」


 「知らぬと思うたか? 報告はちゃんと入っておる。 適切な価格ではなく、ギルドに都合のいい様にした上、自分の懐に金を入れておったじゃろ」


 「反省もせず、宰相殿の前でも不適切な価格を口にするとは……お主の信用はとっくに地に落ちておる。 さ、職員証明カードを置いて去るがよい」


 どこがで見た事のある光景を再現しているかの様なやり取り。


 素直に職員証明カードをアイリスさんに渡し、退出するゲラルディーさん。


 何事も無かったかのようにアイリスさんは木筒を手にしたまま、ソファーに座り話を続けた。



 「この茶葉は随分特別じゃな、この世界にはない代物じゃ。 どこで手に入れたかは聞かぬが、販売するのであれば価格はいくらを考えておる?」


 真剣な表情で問いかけてくるアイリスさんに、僕は……。


 「そうですね、銀貨一枚と大銅貨四枚で良いかと」


 「上質な茶葉じゃからの。 貴族にしか買えんじゃろう。 トルパーダがおるということは、陛下も含むかの」


 おっ、察しが良いなアイリスさん。


 「ええ、気にいっておられます。 城の茶葉と総取替するつもりの様です」


 は? いやいやいや! 総取替?!


 「なので、王家御用達を下げて頂きたく」


 どこの商会か知らないけど、すいません!


 「アズモール商会か…あそこの会頭は出し渋るやもしれんが…」


 うわぁ、パンの御用達も取り下げてくれるかな。 石噛んでるのかってくらい硬いもんな、あのパン


 「トルパーダよ、ユウトはずっと無表情じゃが、何を考えておるのかお主わかるか?」


 無表情が張り付いててすいませんね!


 「……あのー、もしかしてパンの王家御用達ってどこかにありますか?」


 バァン!!!!


 痛そうにするアイリスさん。


 いや、叩くなよ。


 「パン!! あるぞい! もしや石パンに革命ありか!」


 「は、はい。 店で軽食も出そうと思っていてパンや米を主食にするので、持ち帰りしたい人が殺到するかもしれません」


 こっっわ。 顔近いよアイリスさん。 そんなに嫌だったんだな石パン。


 「して作り方は広めるのかの?」


 「いえ、当分の間は広めず、厨房でも作らずに城から取り寄せようかと」


 「城? 王城かの?」


 「アイリス様、王城ではなく浮遊城……『神の島』です」


 「ユウト様は、『神の島』の主です」


「な」


 あ、これ叫ぶやつだ。


 「なんじゃとーーーー!!!」


 まるで真横から叫ばれたかの様な声量……。


耳がキーンって鳴ってるよ……。


 「よし! パンの御用達はすぐにでも回収しよう」



 その後いくつかの取り決めを行い、解散した。



 そして僕はそのまま、土地の契約書をアイテムボックスに収納し契約した土地に向かい、建築作業を開始した。

 普通なら、大工に頼むところだが設計通りに建ててくれるか不安だったので、自分で建てる事にした。



 まず地下を作る為、土地の三分の一程穴を作り土を固める。 木目の綺麗な木の板を壁にし、貼り付ける。

 ここまでで、日が沈みかけていた為、続きは明日に……と浮遊城へ転移した。

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