第三章 王都編

第14話 商業ギルド

 いくつかの討伐依頼と二回の護衛依頼をこなした事で、C級ランクからA級ランクに上がり、頃合だろうと王城へ足を運んだ。


 遠目からでも緊張した門兵の姿があり、その隣に白く長い顎髭を綺麗に生やし揃えている男性がいた。


 「初めまして。 私は宰相をしております、侯爵のトルパーダ・フォン・マクザラムと申します。 本日はよろしくお願いします」


 「いえ、こちらこそよろしくお願いします。 ユウト・サトウです。 ユウトと気軽に呼んで下さい」


 「ではユウト様、馬車を用意していますので。 こちらです」


 用意されていた馬車に乗り、街の中心部へ向かう。



 やがてたどり着いた商業ギルドは飾り気のないシンプルな雰囲気の建物で、午前だというのに中からはガヤガヤと賑やかな声が聞こえる。

 トルパーダさんと受付に向かって歩いていくと、受付嬢が僕たちをすぐに奥の応接室に通してくれた。


 絶対トルパーダさん効果だよ……だってほら、僕のこと見ないで話してるもん……。


 目の前に座る商業ギルドのギルド職員は、今更気付いたかのように白々しく声をかけてきた。


 「おや、宰相殿こちらの少年は?」


 「こちらのユウト様が本日、店を構える為の登録とそこで商品の販売をする為の登録。 更に、販売予定の商品価格を決めに来たのですよ。 私は商品の価格などが適切かどうかの確認の為、来させてもらっただけです」


 「ふむ。 商売をするのに年齢はあまり関係ないとは言っても、少年の内から商売を始める程、家計が切羽詰まっているのか、裕福なのかはわかりませんが、宰相殿の期待に添える働きをして頂きたいものですな。 ギルドマスターをしているゲラルディーと言う」


 「白々しい対応と不愉快な挨拶をありがとうございます。 冒険者をしています、ユウトと言います。 よろしくお願いします」


 挨拶から既にバチバチだ。


 「トルパーダさんが言ってくれたように、商業ギルドへの登録、土地の契約、商品の販売価格の取り決めをしに来ました」





 トルパーダさん効果か、トントン拍子に話が進み商品の販売価格の取り決めに、話が移った。


 「その喫茶店という場所で、何を商品として販売する予定なのだ?」


 〈スキル アイテムボックス〉


 アイテムボックスから例の茶葉を入れた木筒を取り出し、机に置いた。


 「アイテムボックス持ちか。 羨ましい。 中を見ても?」


 「ええ、どうぞ。 外からでは適切な判断が出来ないでしょうから」


 筒を開け、中の茶葉を見るゲラルディーさん。


 「……どれほどの代物かと思えば、単なる茶葉ですか。 大銅貨5枚程で良いのではないですかな」


 「本当にそう思いますかな? 私もこの茶葉で入れた紅茶を飲ませて頂きましたが、決して大銅貨5枚という価値ではないと思います」


 「トルパーダさん、王都本部の職員は茶葉すら、見る目がないのですか?」


 「どうやらそのようですな」


 と、話しているとゲラルディーさんは顔が真っ赤になり、こめかみはピクピクしていた。


 そして、一瞬の静寂を破り扉が開かれた。

 入って来たのは、エルフの少女だった。


 「ん、来客中か。 失礼したな。 おや、トルパーダではないか。 少年は初めましてじゃな」


 「冒険者をしているユウトと言います。 よろしくお願いします」


 「わしは、アイリス。 これでも商業ギルドのマスターをしておる。 してゲラルディー、何故顔を真っ赤にしておる何か恥でもかいたか?」


 「ギルマス、ギルマスはこの茶葉を販売するのであればどの程度の価格をつけますか?」


 「どれどれ……む、この茶葉は……ほほう!」

 「ゲラルディー、副ギルドマスターとしてどの程度の価格にするのじゃ?」


 「私なら、大銅貨5枚で販売します」


 「うんうん」


 「ギルマスも頷いている事だから、大銅貨5枚程度の価値しかない茶葉なんだ。 次はもっと良い物を持って来てくれたまえ、少年」


 「そうじゃな、そうじゃな……よし!ゲラルディーくん」


 「お主、もう帰って良いぞ。 明日からはもう来なくとも良い」



 「…………………は?」



 ゲラルディーさんの口から間の抜けた声が聞こえる。





 あれ、こういうの前にもあった気が……。

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