第10話 依頼報告後

 Sランクパーティ疾風からの報告を聞き、頭を抱える者がいた。


 ファジール王国の国王陛下その人である。

 ガジャーノ陛下は自室に入るなり、イスにもたれ掛かり、宰相で侯爵のトルパーダ・フォン・マクザラムは陛下の机の前に立ち、話を切り出す。


 「私の推測ですが、悪意を持つ者を阻む結界かと思います。 フェンリル様が思念伝達をするのは善良なる心の持ち主のみと伝えられております。 その事から魔法使いのドーラ様以外は善良な心を持っていたからこそ、結界内に入ることが出来たと仮定すれば……」


 「結界を通れる者が善良な心を持つ者だけだとしよう、ではどうやって許可というのを取るのだ?」


 「許可なく結界内に入れば侵入者になるのだぞ。 これでは面会どころか『神の島』に入ることすら出来ぬ」


 「そもそもどうやって結界内の神獣様に許可を取るのだ? フェンリル様が許可を下す相手では無いとしたら……龍神様か?」


 「陛下、疾風のジャック様の言葉を思い出して見て下さい」



 『陛下、俺……いや私は『神の島』の奥に確かに城を見ました』



 「……という事はあれか? 『神の島』に住まう者が居るという事か? 神獣様の方々が人かエルフか何かはわからぬが、住まう事を許可した者が……」


 「『神の島』が上空より現われ神獣様が世界各地から消えた事を考えますと、既に何者かが住んでいてそこに神獣様の方々が許可を貰ったという方が、話は合うかと」


 「ぬううう」


神獣様より先に居ただと?! 確かに合う……では何だ? 神か?! 天使か?!





 一方、陛下が頭を抱えている頃、冒険者ギルドでは浮遊城の管理者であるユウトが依頼掲示板と、睨めっこしていた。



 通常依頼


 推奨ランク……C級~B級ランク


 内容

 ファジール王国が、管理するダンジョン十七階の調査


 報酬……金貨十五枚

 依頼主……ファジール国王陛下



 調査だけで金貨十五枚は多いんじゃないか? しかも依頼主が国王陛下って、巻き込まれる未来が見えるなあ。


 ユウトは調査依頼を受ける為、依頼表を剥がし受付嬢のミリアさんの所へ向かった。

 受付をしていると背後から声をかけられた。


 「ねえその依頼表、私に譲ってくれない? どうせC級かB級なんでしょ? A級ランク冒険者の言うことは素直に聞いた方が身のためよ」


 ユウトは無視しミリアさんも同じく無視する。


 「ちょっと! 何無視してんの? その依頼は私が受けるって言ってんのよ!」


 「何してるのかな、ケイリー」


 騒ぎを聞きつけ割って入って来たのは、ギルドマスターのギリックさんだ。


 「に、兄さんが…な、なんで」


 「なんでここに居るかって?」

 

 「ギルドマスターだからね」 

 

 「この依頼はユウトくんが受付に持ってきたんだろう? なら依頼を受けるのはユウトくんだ。 ケイリーは横入りしてきたただの迷惑者だ。 それでも不服と言うならユウトくんに同行させてもらうといい」


 「こんな乱暴な言動をする冒険者がA級ランクなんですね、ギリックさん。 僕は構いませんよ、足でまといにならなければ」

 

 「行きますよ、自称A級冒険者のケイリーさん」



 僕はダンジョンに向かって足を進めたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る