第5話 公爵家との出会い

 神獣ーー

 それは、神に使える獣。

 魔物とは違い、善なる意思を持ち善良な心の持ち主のみと言葉を交わす大いなる存在。


 竜人族の崇める龍族も、獣人族の崇める神狼フェンリル家族も、額に宝石を持つカーバンクルも、炎熱地帯の洞窟に住むと言われる炎の化身フェニックスも姿が消えた。


 突如として現れた空に浮かび光さす謎の島。

 世界各地の消えた神獣。

 魔物の活発化。

 冒険者間で情報が行き交い世界中の国々に広がる事で、人々はひとつの可能性に辿り着いた。



 「謎の島……神の島に神獣が集っているのではないかーー」





 「オハヨウゴザイマス。 マスター」


 「……あ、おはようゼダン」

 「昨日思ったんだけど機械的じゃなく、人間味のある話し方って出来る? 何か……寂しくて……さ」


 「かしこまりました」

 「早速ですが、ご報告がございます」


 「もしかして報告って……あの門の所にいる……」


 「はい。 神獣たちがこの土地の主に会いたいと面会に来ておられます」


 「神獣?!」


 「ですので身なりを整え向かった方が宜しいかと」


 「だよね! すぐ行くよ!」




 十分後……


 ユウトは神獣たちと面会を行った。

 神獣たちの言い分は、「我らをこの島で住まわせて欲しい」 「俺たちは静かに暮らしたい」 「人族に捕らえられたくない」といった感じ。


 二言で許可した。

 スローライフ万歳! 縛られたくないよね!


 面会後、神獣たちはそれぞれ過ごしやすい場所へ散っていった。



 さて、僕も動きますか!








 初めてこの世界に、浮遊城の森で目を覚ましてから一年が過ぎた。


 神様が事前に用意してくれたのか、マスタールームのタンスの中に、冒険者用の服とコート、装備があった。



 名称、天の羽衣上下

 レア度、A

 効果、耐寒・耐熱。 疲労軽減・回復。 鑑定無効。

 使用者固定、ユウト・サトウ。



 名称、天のコート 真紅

 レア度、S

 効果、自己修復。 気温調節。 防刃。 防水・防火。 防魔。 鑑定無効。

 使用者固定、ユウト・サトウ。



 名称、天の万能具

 レア度、EX

 効果、形状変化。 魔力影響で射程UP。 鑑定無効。

 説明、イメージする事で様々な武器や道具に変化する。

 使用者固定、ユウト・サトウ。



 「明らかにチート…」

 「疲れ知らずの服にイメージ次第で剣にも弓にもなるって…あ! イメージだから銃も?」




 「ーーよし。 上下服着た、コート、万能具、お金……」

 「……大事に使わないとな」



 マスタールームから門まで空間魔法の〈転移〉で移動すると、ゼダンとマリナが待っていた。


 「2人とも留守をよろしくね」


 「「行ってらっしゃいませ。 マスター」」



 浮遊フライ



 空を飛び、目指すは世界の北に位置するファジール王国。





 風を切って王国目指して飛ぶユウト。

 減速し周囲に誰もいないことを確認して、そっと王国へ続く道へ降り立つ。

 王国へはあと三十分程歩けば着く距離だ。


 「よし、じゃあ向かうとしますか」




 しばらく歩いていると、なにやら後ろから音がしてきた。


あれは……馬車か。 馬車なんて初めて見た。


 一頭の馬が馬車をひいて物凄い速度で走っている。

 巻き込まれると思い道の横へ避けた。

 ついでに誰が乗っているのかと鑑定をしたら、なんと馬車の中には怪我人と女の子が乗っているのがわかった。


 怪我人は裂傷だった。 魔物か盗賊にやられたのだろうか……。


 〈回復魔法 ハイヒール〉


 声に出さず無詠唱で唱えた光は馬車を追い、怪我人の傷を癒した。


 すぐさま、馬車の方から叫び声が聞こえる。

 悲しみの叫び声でなく驚愕の叫び声だと思う。


 まあ、急に傷が治ったら驚くよね


 〈望遠〉


 馬車が急停止し、御者が馬車に駆け寄り、安堵した様子が見られた。

 御者がキョロキョロと辺りを見回し、何故かこちらを見て物凄い形相で走ってくる。

 速さの表現として、走った後に土埃が舞ってるかの様だ。


 明るい金色の髪、がっしりとした強そうな身体。 顔は柔和な感じで、優しさを感じる。


 「き、君が……回復して……くれた……のか?」


 「ええ、ハイヒールですけど」


 「感謝するぞ! お陰で長年仕えてくれていた友が死なずにすんだ!」


おっと、本来の御者さんが怪我人だったか。


 「さあ! 馬車の中で話そうではないか!」


 「……あ、はい」


 馬車に向かって歩いて行き、男性の後に続いて馬車内に入り腰掛けた。

 傷が治った御者さんが手綱を握り、僕の目の前に男性、その隣に娘であろうか女の子が座っている。


 「ご挨拶が遅れました。 僕は、ユウト・サトウ、十三歳です。 よろしくお願いします」


 「私はファジール王国公爵家、オルストン・フォン・ファジールだ」


 「ファジール王国公爵家で……ファジール……」

 「もしかしてガジャーノ陛下のご家族ですか?」


 「うむ、王弟になる」

 「娘の紹介もしておこう、私の娘のマリー・フォン・ファジールだ」


 「お初にお目にかかります。 マリー・フォン・ファジールです。 アルガスを助けて頂きありがとうございます」


〈鑑定〉……この子の左目……魔眼か……真偽を見抜く魔眼……凄っ!


 「いえ、当たり前のことをしただけですので」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る