第4話 浮遊城 その二

 城内を簡単に説明しよう。



 一階。

 玄関であるホールと、門の管理室兼、受け付け。 左に応接室。 右に倉庫。


 二階。

 右側の階段を上がった先に食堂。 その奥に厨房と食料庫。

 左側の階段を上がった先に複数の客室。


 三階。

 エレベーターで階移動。 温度管理された快適な庭、プール、巨大な風呂場。


 四階。

 マスタールーム。 管理者のみ入室可。


 五階。

 沢山のメイド型オートマタ、執事型オートマタ、戦闘用オートマタ。 管理者のみ入室可。


 最上階。

 コントロールルーム。 管理者のみ入室可。




 この城の最も反則的なところは、水道と下水、食料庫と厨房、トイレだ。

 蛇口をひねれば水が出るし、風呂はお湯に切り替え可能。 

 各部屋にあるトイレも水洗。

 厨房は、薪ではなくソーラーパネルを使った、電気。

 食料庫には食材が多数。

 豊富な種類で食材は無限。 使ったそばから、元通り。

 どういう原理か、全くわからない。


 神様、家じゃなくて浮遊城で、しかもこの浮遊城、チート満載ですよ。







 ユウト・サトウが前世の様な、『自堕落な生活』を避ける為にまずおこなったのが、この世界の常識に慣れる事だった。


 この世界の知識については産まれたばかりの赤ん坊と、さして変わらないユウト。

 その為の、魔法・武術のお勉強タイムだ。 

 丸々一年を使い何とか生活に慣れていった。


『魔法』は、初期からあった『創造魔法』についての座学から始まった。

 魔物との戦闘で役立つ『属性魔法』の使用方法、生活に適した『生活魔法』の安定使用、無詠唱のマスター、新しい魔法の開発、など多岐に渡る。

 『武術』は、生物の身体の構造から始まる座学、殺す為・気絶させる為にはどこを狙えば確実か、身動きを取れなくするにはどの関節をおさえれば良いか、剣やこの世界にはない銃の扱い方も進めた。

 更に、スキルの確認とスキルを最大限いかす戦い方も模索した。


 冒険者として生活していく為に森での実践訓練を二ヶ月実施。

 罠の危険性、見張りの大切さ、暗い中での戦闘、お金の計算、マナーや暗黙のルールなどなど……。


 ユウトがお勉強タイムを始めた頃、浮遊城の近くの大陸ではーー




 ちょっとした混乱が起こっていた。





 ーー突如この世界、アリディーテアの海の上空、雲より更に上から巨大な柱の様な光がさした。

 

 時刻は九時頃、その巨大な光の柱の存在は、周囲の大陸からは一目瞭然であった。

 そして、雲を突き破って上空から逆三角形の形をした大地がゆっくりと現れ、全貌が見えぬまま停止した。

 その様子は多くの者が目にしていた。

 皆、神の島ではないかと考えた。

 ある聖職者は「あの島には神がおられる」と言い、ある冒険者は「まだ見ぬ財宝が眠ってる」と主張し、ある皇帝は「あの島を手に入れろ」と命令していた。



 世界の南にある、スーサルム山脈は三つの国を分断している。 一つは山脈から見て、南西にある小国のセルゲーノ。 二つ目が、南東にある小国のアヅール王国。


 そして、もう一つが北にある大国、ジャガード帝国。


 執事のゼダン曰く、現皇帝のドルバ・フィン・ジャガード皇帝が近隣の小国を攻めて、自国を大きくした事で大国になったそうだ。



 その皇帝、ドルバ・フィン・ジャガードは遠い海の上空に現れた巨大な島を見て、興味が湧いた。  

 自分が未だ見た事のないものがそこにある。


 「欲しい……欲しい! 我がものにしたいぞ!」


 誰に言うともなくそう叫んだ。


 「おい、飛行魔術が使える者を集めよ」


 「はっ」





 帝国の真反対、世界の北に位置する大陸に帝国に勝るとも劣らない規模の大国がある。

 

 ファジール王国。


 帝国よりも遥か以前から存在する始まりの大国。

 ガジャーノ・トルテ・ファジール国王陛下もまた、ドルバ皇帝と時を同じくして遥か海の上空に佇む巨大な島を見ていた。


 「神の島……果たしてあの場所に何があるのか……」










 そして、世界各地から神獣が忽然こつぜんと姿を消したーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る