第二話:salvage

 ・ネノカタス帝国軍軍事データベース

『クマノ地方環境調査団護衛任務における報告書:ルナマリア・サイオウ訓練兵の供述(既に削除済み)』証言一部抜粋


「私は、先日ワーウォルフ・ヴェーダ少佐のご厚意で特別に支給された魔装の動作確認と起動訓練も兼ねてということで、今回の護衛任務に参加していました」


「本来、訓練兵である私が正式な作戦行動に同行することなどありえないのですが…」


「少佐が直々に上層部へ掛け合ってくださり、任務内容の危険性も低いということで特別に参加を許されました」


「あの日は作戦指揮を執っていた少佐の傍に常にいました」


「少佐の傍を離れないのは任務同行への最低限の条件でしたので」


「周囲の警戒にあたるため、少佐と共に都市部跡付近を飛行していた時です」


「前方20mの方向から正体不明の魔力反応を検知しました」


「クマノ地方は、一か月前の奪還作戦で奪取したばかりの土地で、生き残りの【甲虫種インゼクター】の掃討も完了したため、亜人と対峙する危険性はないとブリーフィングで聞いていたので…」


「はい。ですが少佐が側に居てくれたおかげで激しく動揺することはありませんでした」


「すぐに少佐の命令通り応援を呼びました」


「その時、少佐は謎の魔力反応の照会を行っていました」


「ええ。味方ならまず反応しませんし、亜人ならばその地点に来ていきなり反応が現れるはずはありません」


「今になって思えば、軍以外の外部の人間が魔法を発動したと簡単にわかることでした」


「はい。私の画面には『Unknown』と表示されていました」


「ですが少佐はずっと照会を続けていました」


「何か訝しんでる様子でした」


「少佐が言うには、『10年前の作戦に投入された魔装機体の魔力反応がする』と…」


「いえ…私にはよくわかりません…」


「その後、少佐が応援を待たずに反応地点まで確認に行くと言う事でしたので、同行しました」


「反応のあった地点に到着した時は、特に異変もないただの廃墟でした」


「到着時も魔力反応自体はずっとありました」


「少佐と共に周囲を捜索しようとした時、瓦礫の中から物音がしました」


「少佐が先行してその物音の方向へ近づいて行きました」


「私も少佐の後ろについて行きました」


「そこから1人の少年が出てきた時は、驚きました」


「いえ、瓦礫の山の上から人が出てきた事ではなく…」


「それよりも、こんな場所で少年が1人で、しかも、魔力反応が少年から発せられていたので…」



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