異世界転移した先は人類滅亡寸前でした~帝国陸軍108大隊付き特別作戦小隊『通称:亜人小隊』~

@vami001400

プロローグ

第一話:13種目の亜人(前編)

その日の夜は、いつも通りだった。


4月中旬、高校に入学して早数日。俺、昭人あきとは未だにクラスには馴染めずにいた。


まあ、そこは自分自身に問題がある訳ではなく、環境的な問題だと思う。


新学期のクラス替えしてからの数週間なんて皆んなどこか余所余所しいものだよな。うん。


その日の夜も友達からのメッセージに返信し、眠気が来るまでケータイを触りながら床に就いた。






目が覚めたら、見知らぬ天井が広がっていた。


暗く淀んだ空気が漂っており、どこからか差している光によって埃が舞っているのがわかる。


背中が痛い…自分が今横たわっていた場所は、意識がなくなる直前まで寝転がっていたふかふかの自室のベットとは打って変わり、石造りの堅い寝台になっていた。


堅くなった体を起こし辺りを見渡すとどこかの廃墟の一室のようだった。


部屋の壁のあちこちに魔法陣のような模様が描かれていた。


肝試しで廃墟にやって来たDQNな大学生達がふざけてスプレーを振って描いたような、そんな模様が至る所にあった。


寝台から降りて立ち上がろうとして下を見た時、床には部屋の中で一番大きい魔法陣のような模様が描かれていた。


立ち上がり床に足をつけると、そのまま呆然と立ち尽くしてしまった。


「どうなってるんだ…」


つい声が漏れてしまった。あまりにも唐突な状況にパニックになることさえ忘れてしまった。


逆に冷静になった頭で今現在自分が置かれている状況について考えてみた。


「誘拐?」


また考えていることを声に出してしまった。


目が覚めたら見知らぬ部屋にいた。しかも廃墟ぽい。誰かに連れ去られたかもと、まず最初に思い浮かんだ。


ただ眠りにつくまで家の自室のベットにいたのにわざわざ家に侵入して俺だけ誘拐するなんて有り得るのだろうか。


もしかして、危ない薬か何か飲まされて記憶が混濁してるとか?


そう思い自分の恰好を見てみたが、寝る前に着ていた寝巻のままだった。


まだ4月で四季がズレた影響か肌寒いはずなのに上は半袖という少々時期が早い服装で寝ていた。


この服で絶対に外は出歩かない。つまり、記憶があってる可能性は高いと…


「ますますわからない…」


普段独り言なんて言わないが、今この場所で1人だからか、それともこのような状況で可笑しなテンションだからだろうか、思った事が口から零れる。


とりあえず外に出てみようと光の差す方を見てみると、部屋の奥の天井に戸がついていた。


その隙間から光が漏れていた。その下には階段もあった。


そこでようやくこの場所が地下室ということがわかった。


もし誘拐なら地下室の戸には鍵を掛けているなり上に重りが乗せているなりして俺は監禁状態にあるのだろうか。


どちらにしろ確認してみないことには始まらない。


とりあえず歩き始めた。


広い部屋ではないのですぐに階段の前に到着したのだが、地面にはガラスの破片などが散らばっており、裸足のまま進むには危ないので下を見ながら慎重に進んだ。


階段を上り、戸に手をかけ、開けた。


開かないことを想定していたので、簡単に開いたことに驚いたが、その直後開けた先の光の中から腕が落ちてきた。


「うわぁ!!」


いきなり腕が落ちてきたことに驚き、階段から落ちて尻もちをついてしまった。頭から行かなくてよかった…


落ちてきた腕をよく見てみると、それは腕ではなく籠手だった。


いや、初めて見るものだったので籠手としか言いようがなかった。


例えるなら、戦隊モノやバイクに乗るライダーのアクタースーツが右腕の部分のみあるような感じだ。


まあ、最近のライダーは道路交通法の改正で撮影場所がなかったり、小さい子がバイクに乗れないから親近感が湧かないとかで全く劇中でバイクに乗ってないのだとか…ライダーという名前は何処に…


なんとなく興味が湧き、その物体に近づき地面に落ちたそれを拾い上げ間近で見てみた。


かなり年季が入っており、表面のアーマー部分は錆びていて、布部分もボロボロだった。


ただ造形はカッコよくて男の子心がくすぐられた。何かの特撮か映画のスーツが廃棄されて放置された物だろうか?


内側を見てみると何かのコードやICチップみたいなものが無数に張り付いてた。


よくよく考えてみると表面が錆びているのはおかしい。


アーマー部分は金属を使っているとか?


こういった特撮のスーツは動きやすさ的にもプラスチックだと思っていたが…または、マネキンのパーツの一部なのだろうか?


そんな事を考えている場合ではないのだが、何分特殊な状況に身を置いているのでテンションがおかしい。


何を思ったか、その籠手を右腕に通してみた。


意外と重くて疲れる…そりゃ持った瞬間から少し重いなとは思ったし金属が使われているのなら重いのは当たり前なのだが…


「うおッ!!」


籠手を右腕に着けてすぐのこと、いきなり籠手が発光しだした。内側からはパソコンを立ち上げた際に出るモーター音のようなものが鳴っていた。


しばらく呆然と眺めていると籠手から出る光は止まった。


電池がまだ残っていたのだろうか?腕に着けた拍子に電源かなにかに触れてしまったか。


なぜ光ったのかわからないが、正直な感想を言うとかっこよかった…


変身アイテムで遊んでいた幼少期の頃の感覚を思い出した。もう高校生だが未だに中二病的なセンスは抜けきっていない。


気を取り直して改めて階段を登り、外に顔を出した。


もちろん籠手は右腕に付けたままで。だってカッコいいし。


地下室から顔だけ出す形で外を見渡すが想像以上に外は荒れていた。


本来あったであろう建物は半壊し、雨露をしのぐ屋根がないため照り付ける太陽の日差しが眩しい。


周囲は瓦礫の山となっており、元がどういった建物だったのか見当がつかない。


ただし、なぜか地下室への扉がある場所の周りだけは綺麗だった。


奇跡的に瓦礫の下敷きから免れたのか?…いや、俺が地下室の中で目覚めてる時点で始めから誰か使えるように周りの瓦礫を退けてただけか。


階段を登りきり、地面に足をつけた。


未だに誘拐されているという想定を頭に残しつつ、建物から出てみる事にした。


既に出口らしい出口があるのか疑わしいので建物から出るという表現が正しいかはわからないが…


瓦礫の山を登るような感覚で前に進んでいく。


慎重に進んで行くが、上半身半袖と裸足という恰好のため腕や足の底に切り傷が増えていく。


瓦礫の山のてっぺん辺りまで来た。あとは、これ以上怪我をしないように降りるだけだが…


と、目の前には奇妙な光景があった。


ロボットだ。2体のロボットのような人型の物体がこちらに銃を構えて立っていた。


数秒の沈黙。現実離れした光景に思考が完全に停止していた。


はい?どういう状況なんだ…?ここは映画の撮影現場か何かで今は撮影…


「動くな!!両手を挙げろ!!」


怒声により思考が遮られた。声の方向はロボットのような物体の片方から聞こえてきた。渋い男性の声だった。


え?手を挙げろ?何?俺のこと?


「何をしている!!!!」


再び男性の怒声が響き、銃を再度自分に向けられてパニックになりながらも条件反射で手を上げた。


「腕に付けているものを外して前に投げろ!!」


腕に付けているものとはさっき拾った籠手のことだろう。2体がいる方へ投げた。


「よし、手は上げたままにしておけ。」


状況が理解できないままだが、理解不明な状況に恐怖しながら言うとおりにした。


「そのまま下まで降りてこい」


「は、はい…」


おずおずと瓦礫の山を下った。


下りきり、俯いたまま彼らの方を見た。


「彼ら」というのは、最初はロボットだと思っていた2体の物体をまじまじと見てみると、その人間らしい動きから中には人間が入っているように見えた。


顔から足まで全身鋼の鎧で身を包んでいるが、体の関節部分から全身タイツのようなものを中に着ている。


俺に銃口を向け手を上げるように言ってきた男性であろう人物は、紅褐色こうかっしょくの鎧を身に付け、もう一方の人物の鎧のカラーは白色だった。


「少佐、見るからに彼は民間人ではないでしょうか?」


もう一方の白い機体の人物から女性の声がした。


「馬鹿を言うな。こんな場所にいる民間人などいるか。大体、この少年から魔力反応が発せられているのだぞ。正確には彼が持っていた魔装の右腕部分からだが…」


それに対し、渋い声の男性が答える。


「この機体は10年前のテロ鎮圧の際に導入されていた機体のものだ。右腕部分のみで魔力が残っているはずもない。彼が何かしたのは確かだ」


「容姿を見たところ、典型的な東華人とうかじんのように見えます」


「ただの人民戦線のスパイならわかりやすくていいのだがな…」


何やら2人で訳のわからない会話をしている。さっきから聞き慣れない単語が連発している。一体何者なんだ彼らは。


「お前、いったいどこから来た?」


いつの間にか会話は中断され、鎧姿の男性から俺に対して質問が投げ掛けられてきた。


どこから来たなんてこっちが知りたい話だが…どこなんだここは…


「じ…自分でもわかりません…気づいたらここにいて…」


「冗談は言わない方が良いぞ?」


返答を冗談と捉えられ、今度は俺の額の上に銃口が突きつけられた。


「ほ、本当なんですぅ!!信じてください!!本当にわからなくて!」


死の危険を感じて涙目になりながらも大声で捲し立てた。


男性も俺の表情を見て不満げながらも額につけた銃口を降ろしてくれた。


「なら、所属と名前は?」


名前はともかく所属って何を答えればいいのだろうか?通っている高校の名前だろうか…


昭人あきとといいます…所属というのはよくわかりませんが…学修院高校の一年生です。」


「「?」」


2人から意味がわからないという反応をされた。


「で、名前はわかったが苗字は?」


苗字か…答えにくい質問をしてきたな…


「あ…アキシノミヤ…です…」


あまり苗字に関しては答えたくないんだよなあ…こんな銃を向けられている状況で渋っていられないのだが…


「ここら辺では聞かない名前です。東華人とうかじんのものとも違いますし…どちらかと言うと旧皇家の名前に近いですね」


白い機体の女性が不思議そうに話し出した。


「デタラメを言っているだけかも知れん。聞いたこともない名前や場所だ」


赤茶色の機体の男性は、話し方的に余計俺に対する不信感を強めた、という印象だ。


「とりあえずこの少年のの身柄を拘束、基地に連行し尋問を行う。ルナマリア、拘束具の造形魔法と催眠魔法を頼む」


「了解しました」


聞き捨てならない怖い単語が耳に飛んできた。その後の魔法だかなんだかという言葉を聞き飛ばすぐらいに。


え?拘束…?尋問…?


頭の中がパニックになる中で白い機体の女性が近づいて来た。


「失礼。両手を前に突き出して下さい」


「あ…はい…」


言われるがまま上げていた両手を前に出した。


「【拘束バインド】」


彼女そう言葉を発すると、いきなり両手がコンクリートのようなもので固められてくっついてしまった。


「え!?」


あまりにも奇天烈な出来事に声を出して驚いていると


「【催眠スリープ】」


そう彼女が言った瞬間、猛烈な眠気に襲われ視界が段々狭まっていく。


必死に何かを考えようとしていたが、驚きの出来事の連続で考えが纏まらず、そのまま俺は意識を失った。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る