第六話

 俺は説明した。やはり豊島屋の近くにいた二人も、犯人の可能性は捨てきれない。そして実際、誰が右近さんを殺したのかと言うと、これは呉服屋の主人が殺された事件と同じように考えればいいと思うと。


 すると竹次郎が、口を出した。

「おいおい、呉服屋の主人の事件って、あれは……」


 だがそれに右の手のひらを向け、俺は竹次郎を制して言った。

「言いたいことは分かる。でも実際あの事件は良くできていた。参考にしてもいいと思う」

「うーむ」

「それじゃ、続けるぜ。つまり今回、右近さんのような大男を絞め殺すなんてことは、抵抗されるから、かなり力がなければできないってことだ」

「なるほど」

「つまり、女の子の奈緒ちゃんには無理、年寄りのご隠居、小柄な宗一にも無理だろう」


「するとまさか!」と誰かが叫んだ。


 俺は竹次郎を、指差した。

「結局、消去法で考えると、今の時点で犯人と考えられるのは……、竹次郎、お前だ」


 すると竹次郎は叫んだ。

「え? 俺? 違う、俺じゃない! 俺は殺していない!」

「さらに付け加えよう。お前、豊島屋の引き戸を、右手だけで開けただろ?」


 竹次郎は、怪訝けげんそうな表情で聞いてきた。

「ああ、それがどうした?」

「あの引き戸は固かった。それを右手だけで開けるなんてお前も力が強い。右近さんも右手だけで開けていたが。実際、俺と宗一は両手で開けたからな」

「確かにそうだったが違う、俺じゃない!」


 それを聞いて皆が少しざわめいた時、宗一がを連れてきた。

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