第140話 玲の決意

「玲、買い物行くんじゃなかったの?」


私が玲を見上げて恐る恐る尋ねると、玲はチラッと私を見て言った。


「今日は一緒に俺の部屋に置くための景の好きなマグカップを買いに行こうと思ったんだけど、それよりはっきりさせなきゃないけない事があるみたいだから予定変更だ。俺んちで話するぞ。」


うーむ、これは雲行きが怪しくなって来たなぁ。司先輩の件が逆鱗に触れたっぽい。



私は不機嫌でも優しく繋ぐ、玲の大きな手を引っ張って言った。


「分かったから。ね、ケーキ買って行こう?さっき食べ損ねちゃったから。」


玲は黙って私を見つめると、呆れたようにため息をついて言った。


「了解。全く景には敵わないな。オッケー。駅前のあの店でいいか?」



数日ぶりの玲の部屋はスッキリと片付いていた。ローテーブルでスペシャルイチゴケーキを歓喜に呻きながら食べてると、そんな私をじっと玲が見つめていた。


「玲、食べないの?」


ハッとした玲は、黙ってケーキを食べ終えると、やっぱり黙りこくって食器を下げて、ベッドに座った私の隣に腰を下ろした。うーむ、話するって言ってたけど、もしかしてやっぱりそっちの話かなぁ。


そう思いつつ、チラリと玲の顔を見上げると、玲もまた私を見つめていた。やばい、ドキドキが…。



「俺たち、ちゃんとしよう。俺は景が自覚するまでと思ってたんだけど、ずっとこのままな気がして来た。それは俺たちにとっても良くないだろ?景が他の男に会うのは、友達なら全然良いんだ。でも、それは俺とはっきりさせてからの話だけどな。


なぁ、聞きたいんだけど、景は俺が他の女の子とデートしたり、キスしたり、それ以上しても何とも思わないのか?」


私は玲の顔をぼんやり見つめた。私は玲が他の女の子とイチャイチャするのを一度も考えたことが無かった。玲はいつだって私の側にいて、私の事が好きで…。それが玲なんじゃないの?



「…玲は、他の子とそうしたいの…?」


玲は私の顔を探るような眼差しで見つめながら尋ねた。


「もし、そうしたいって言ったら?」


そうしたい?玲が他の子に私にするみたいに優しくするの?私にするみたいに、あんなキスするの?私に向けるあの熱い視線を他の子に向けるの?私は思わず立ち上がっていた。


ここには居られない。そう思った。


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