第137話 新しい混乱
『景、元気?新しい生活にも慣れましたか?僕もやっと生活リズムを掴んできました。明日会えないかな。返信待ってます。司 瑞貴』
そんなメッセージがスマホを震わしたのは、玲との待ち合わせのために午後の空き授業の時間を、新しい友人達とカフェで潰していた時だった。私がメッセージを長々と見つめていたら、加藤がニヤニヤしながら言った。
「あれ?それって阿久津からじゃないな?男?」
加藤遼は同じ学部で、同じクライミングサークルの一年だ。他大学に交際3年目の彼女がいて、それもあって玲のチェックを潜り抜けた男子だ。隣に座っている渡辺美紗は社会学部の、同じサークルの一年生。何でも押し活に励んでいるせいで、3次元には興味がないらしい。
ミサは自分のスマホを覗き込んでニヤついていた顔を上げて、私に尋ねた。
「お?不貞の現場ですか。やばい。おもろ。」
美紗は言い方が変わってるが、さっぱりしていて私とは気が合う女の子だ。見かけは女子力高いのに、それも押しのためだって言うんだから、私にはよく分からない世界で生きている。
私は二人の興味をひいてしまったことに苦い気持ちになって言った。
「そーじゃないよ。高校の先輩?いや、同級生…だね。落ち着いたから会おうって。」
二人は更に盛り上がって、結局司先輩のことを根掘り葉掘り聞かれる羽目になってしまった。私って防御力無い…。加藤はニヤつきながら言った。
「へー、桜蔭の医学部なんだ。めっちゃエリートじゃん。で?阿久津はそいつの事知ってるの?阿久津と漆原って高校は違ったんだろ?いや、これ、彼氏の阿久津が聞いたらやばいんじないの?」
私は、玲が司先輩のことを知ってるかどうか考えたけれど、接点がないから知らない気がした。
「んー、玲は司先輩のこと知らないと思うな。同級生たちのことは知ってるけど。でもさ、言っとくけど玲は私の彼氏でも何でもないよ?幼馴染ってだけ。」
私のその発言に、加藤もミサもギョッとした顔で顔を見合わせた。そして加藤が恐る恐る私に尋ねた。
「あのさ…、いつも手繋いでるよね?それに、時々人前でもキスしてるよね?それなのに付き合ってないとか!よく分かんないんだけど!」
隣で美紗が腕を組んでうんうん頷いてる。あー、そうだよね。普通はね。
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