第133話 久しぶりに会う顔
少し伸びた癖のある髪を撫でながら、私は待ち合わせ場所へと急いだ。結局お互いのよく知る場所で会うのは良い考えとは思えなくて、若者に人気のある有名な街で会う事にした。
私も和也も1、2度来た事がある位だったから、お互い慣れない街だけど。シンボルマークの近くで佇んで居る和也は、離れた場所からでも人目を引いていた。
学校にいた時はあんまり気にしてなかったけれど、そう言えば和也はイケメンだった。背も高いし、サラリとした長めの髪はアンニュイだ。ちょっと悪そうな雰囲気も女の子たちの心をくすぐるんだろう。
和也をチラチラ見ながら、話しかけようかと騒めく女の子たちがあちこちに見える。私はこんな注目されてる和也に話しかける事がはばかられて、どうしようかと戸惑っていた。
ふとこちらを見た和也が、顔を綻ばせて手を上げながらこっちに急いでやって来た。周囲の女の子たちのがっかりした様な表情と、私を品定めする視線が怖い。
私はすっかり男たちの生活に慣れてしまって、女の世界に恐怖さえ感じる…。
「うーちゃん!」
満面の笑みで私を抱き寄せる和也に、私もすっかり嬉しくなって抱きついた。私は周囲の騒めきに、ここは日本だと我に返って和也の顔を見上げた。
和也は私を見下ろして、急に真面目な顔で呟いた。
「うーちゃん、会いたかった…。俺、なんか二度と会えないんじゃないかって思って怖かったんだ。」
私は少しばかり心が痛くて、和也から目を逸らして頭を和也の胸につけて言った。
「…ごめんね。僕がはっきりしないのが悪いんだ。」
耳元で感じる和也の鼓動はドキドキと早くて、私はこんなにくっついてるのも良くないのかもとゆっくり離れた。少し困った顔で和也はため息をつくと、私の手を繋いで行こうかと歩き始めた。
「今日はさ、とりあえず話は後でいいからデートしよう。一緒に映画行ったきりで、デートらしい事うーちゃんとした事なかったから。ダメかな?」
私は首を振って、懐かしく和也と出掛けたお試しデートを思い出した。
「そう言えば、映画行ったよね。和也は僕の事男だと思ってたくせにキスしてきてさ。和也って、ほんとどっちもいけるんだね。」
和也は急に罰が悪くなったのか、焦った様に言った。
「あ、あれはうーちゃんが可愛すぎたのが悪い。…実際俺はうーちゃんが男だろうが、女の子だろうが関係ないんだ。もしうーちゃんが男だったとしても、きっと今と同じ気持ちだよ。」
そう言って私を見つめた和也の眼差しは熱くて、私は急に心臓がドキドキと煩くなって、顔が熱くなるのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます