第132話 遠く離れて
その日の夜私に届いたのは、司先輩からのメッセージだった。すっかり先輩のお兄さんとバッタリ会ったことがバレていた。これはすなわち、彩花の提案した皆で集まる企画が実行されると…?
私は司先輩とまた大学になっても会えることが嬉しい一方で、どんどん泥沼にハマっていくような一抹の不安を感じていた。
寮を出て以来、和也たちからのメッセージも定期的に届いていた。私は入学準備と称して誤魔化していたけれど、それもいい加減限界を感じていた。
電車で1時間のこの距離感は会えないわけでもないし、会いたいかと言われたらみんなの顔を見たい気もするし。でもこんがらがったこの関係は私にもどう対処していいのか分からない。自分の気持ちが一番分からないから、複雑になってるのは自覚がある。
彩花に相談しても、みんなと楽しく過ごせばいいでしょうと呆れられるのがオチだ。玲にも勿論相談できるはずもなく…。私はまたひとつため息をついた。取り敢えず、私は目の前の難問を解決する事にした。
呼び出し音を緊張でドキドキしながら聞いていた私は、留守番電話に切り替わった事にどこか安心していた。私はスマホに浮かぶ名前を見つめながら、どうしても一度二人で会って話さないといけない思った。私たちのあの日の事についてはっきりさせる必要があった。そうしないと、私も和也もきっと前に一歩も進めない。
私がぼんやりと見つめるスマホが震えて、今まさに和也からの電話が掛かってきた。私は意を決して受信をタップすると、懐かしささえ感じる聴き慣れた声が聞こえた。
「もしもし、うーちゃん?電話くれたよね?今どこ?」
私はスマホを耳に押し当てながら、相変わらず優しく響く和也の声を懐かしんだ。
「…久しぶり。今は家だよ。元気だった?…ごめんなさい。弟がなんて言ったか分からないけど、あんな形で逃げるようにこっちに戻ってきちゃって、ずっと気になっていたんだけど。和也になんて言っていいか分からなくて。」
スマホの向こうで少しの間の後、再び和也の声が聞こえてきた。
「…取り敢えず、一度会いたい。電話じゃ何ていうか、うーちゃんの気持ちが見えないから…。ダメかな?」
私は首を振ったけれど、和也に見えるはずも無く慌てて返事をすると今週末に会う事になった。電話を切った後に、私はスマホを握り締めながら、会ったら私の気持ちもはっきりするのだろうかと、ふわふわした気持ちでベッドに寝転がった。
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