第130話 彩花の知り合い
彩花を彩花ちゃんと呼びかける男とは。私たちは思わず顔を見合わせて、ゆっくり後ろを振り向いた。そこには二人連れの男性が立っていて、そのうちの1人が彩花ちゃんと声をかけたみたいだ。
彩花はその人を見ると目を丸くして、満面の笑顔で言った。
「え~⁉︎五十嵐先生⁉︎本当に?何でここに居るんですか!景、私が高校の時に家庭教師に来てもらってた五十嵐優樹先生。地元の国立大の学生なのよ。こんなところで会うなんてほんとびっくりですっ!」
五十嵐先生と呼ばれたその人は、いつも彩花の側にいる肉食系男子とは違うインテリ系男子で、すごく柔らかい笑顔で言った。
「僕も可愛い教え子にこんな場所で会うなんて、ほんと驚いた。高校はまだ卒業じゃないでしょ?遊びに来たの?」
彩花は連休を利用して大学通学の練習だとか、適当なことを言ってたけれど、五十嵐先生は人が良いのかニコニコと聞いていた。そして、自分も春からこちらの大学で院生になるとの事だった。
「そうだ、僕の連れを紹介するよ。こっちの大学院の試験で知り合った司くん。僕と同い年だから、22歳。司隆也くん、こちらの関彩花ちゃんは、僕が大学時代の教え子で今年から慶成大学に推薦で入学予定だ。で、そっちの子は…?」
「あ、初めまして。彩花の幼馴染の漆原景です。私も春から桜蔭大学へ進学が決まってます。」
五十嵐先生と雰囲気の似ている司さんは、五十嵐先生と顔を見合わせると私を見て言った。
「僕たちも桜蔭大学の院なんだ。よろしくね。」
彩花は膨れっ面をすると、五十嵐先生に子供のように絡んで言った。
「私だけ仲間はずれ。残念だわ…。」
五十嵐先生は彩花の頭を撫でると優しい笑顔で言った。
「慶成大学だって隣の駅だろう?会おうと思えば直ぐに会えるさ。幼馴染と近くの大学で良かったね、彩花ちゃん。」
いつもは女豹の彩花は、五十嵐先生の前だと年齢相応の女子高生らしい、恥ずかし気な表情で言った。
「先生って、いつも私を子供扱いするんだから!」
五十嵐先生はクスクス笑うと、チラッとあやかの全身を見て、きらりと目を光らせて悪戯っぽく言った。
「彩花ちゃんは背伸びし過ぎかな?…どーしてだろうね。」
彩花は私の前で見せたことのない赤い顔で口をぱくぱくさせると、黙り込んでしまった。私は何だか彩花の意外な一面に驚くやら面白いやらで、まじまじと彩花を見つめていた。すると先生の隣に居た司さんが私に話しかけてきた。
「僕も桜蔭大学で、内部生なんだ。君の選んだ学部はどこなの?」
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