第129話 大いなる旅立ち

「わー、最高!あたたかいって最高!」


彩花の高いテンションとは裏腹に、私はジト目で彩花を見つめる。


「ねぇ、南国へ行きたいとは言ったけどさ、ここは南国もどきだよね。」


私たちは先日の修行の旅にかこつけて、連休を使った2泊3日でプチ旅行に来ている。健斗の代わりを務めた身代わり代として、親からガッツリもらった私は近場の海外でも行こうと思ったんだけど…。


「しょうがないでしょ。景のパスポートが切れてたんだから。未成年は期限が短いんだからね!ちゃんと再更新しておきなさいよ。」



彩花の文句に私は肩をすくめて言った。


「ごめん。まさか切れてたなんて思わなくて。でもだからって都心のホテルステイってあり?」


彩花は息を荒げて言った。


「だって、高校も家だって隣接県じゃない!大学は都心なんだから、ひと足先に都会に慣れておきたいじゃない?わざわざ遠くに行かなくても、都心のホテルでのんびりするのも良いと思わない?レディースプランもあるし!」



確かにこのホテルのレディースプランは魅力的だ。このプールも年中温水で、しかも今は南国風でお洒落な雰囲気だ。ジャグジーもあるし。私たちはトロピカルジュースを飲み終わると、ジャグジーへ入ろうと歩き出した。


プール用のパーカーは着ているけど、相変わらず彩花のナイスバディは黒いセクシーなビキニで女豹のようだ。でも私も、ここのところ成長著しい胸を見せつけるために、彩花の持っている水着を借りた。サイズ的に昔着ていたものにはなったけれども…。真っ白なビキニで適度なフリルもあって、谷間が深くなくても何とかなるタイプだ。そのかわりビキニパンツは紐タイプで攻めている。



案外ホテルステイは人気があるみたいで、連休ということもあってか、思ったよりも人が多かった。私は女の子生活の開放感で長めのショートボブになっていた髪を、色っぽいベリーショートにした。襟足や耳の周りを長めに残して色気を出してみた。


「景って長い髪だと清純そうだけど、それぐらい短いと小悪魔な感じでとってもキュートよ?この方が景らしくて良いかもしれないわね?顔も小さいし、子猫ちゃんって感じ。」



まぁ女豹に言われても褒められた気はしないけれど、私は女子的生活を取り戻すんだ!と意識高い系モードなのだ。そんな事を思いながら彩花とジャグジーへ向かっていると後ろから声をかけられた。


「彩花ちゃん?彩花ちゃんじゃないか?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る