第128話 スマホが震える時

スマホがさっきから震えっぱなしだ。私はこわごわとスマホを眺めた。


「ねぇ、連絡返さないの?」


彩花が私とスマホを交互に見つめて聞いた。私は顔を覆って言った。


「何て返すの⁉︎ 健斗がなんて言ったのかも分かんないし、大体私酷い女過ぎるでしょ⁉︎ 怖くて見れないよ…。」


彩花は私の腕を掴んで顔から手を引き剥がすと言った。



「私もこんなひどい修羅場は経験ないけど、似たような状況は経験済みよ。アドバイス出来るとしたら、早く対応したほうがいいわ。時間が経つと余計気持ちってのは拗れるだけだから。ほら、ちゃんと見て。」


彩花の勢いがちょっと怖くて、私はスマホを見た。そこには彼らからのSNSがポップアップされていた。私は彩花に促されて、画面を開いた。そこには、私を責める言葉は無くって今度いつ会えるのかとか、そっちに遊びに行くとか、そんな言葉だけが画面を埋めていた。



私が呆然とそれを見詰めていたら、彩花がスッと私の手の中からスマホを抜き取るとスクロールしてサクサクと読んだ。


「ふーん、景って愛されてるね。誰も責める様な事書いてなくて、会いたいって。まぁ、彼らにしてみれば、この一学年の差ってのは大きいかもしれないわね。良かったじゃない?しかもそのうち会いに来ちゃうんじゃないの?ちょっと楽しみだな~。」


私は安堵と、罪悪感に苛まされていっそのことどこか遠くへ修行の旅にでも出たい気分だった。私はハッとして彩花に言った。


「ね、旅に出よう!いっそ、寺に籠るとかどうだろう⁉︎」


彩花は私を埴輪の眼差しで見つめると肩をすくめて言った。



「どうしてそう発想が極端なのかな。まぁ、旅に出るのは良いかも。卒業旅行気分で。私は推薦で受験もないし。玲はまだ試験前だから無理か…。ね、景、玲の事はどうするつもりなの?玲もはっきりさせないからいけないんだけど。あいつは景を逃すつもりはないと思うわよ?いっそ、身体の相性の良い相手と付き合ったらどう?ふふふ、それ良いわ。」


彩花の人ごとだと思って、面白がるのは相変わらずだ。しかも発想がぶっ飛んでる。私はこの一件で自分の流され体質を大いに自覚した。どう考えても彩花じゃあるまいし、そんな大技は繰り出せない。



「そんなの無理。結局関係した相手全員と付き合う羽目になりそうだもん…。」


彩花は私を目を見開いて見つめると、肩を震わせて笑いながら言った。


「やだ、想像しちゃった!マジでそうなりそう。面白すぎ。」


その時の私たちは冗談だったけど、それからのゴタゴタを考えると言霊ってあるのかなって思ったのは本当。




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