第127話 和也side取り残された男たち
申し訳なさそうに頭を下げて走り去るうーちゃんを俺たちは呆然と見つめた。
目の前にはうーちゃんによく似てるけど、根本的に全く似ていない、ましてや取り付く島もない、本物の漆原健斗が立っていた。うーちゃんより10cmほど背が高くて、骨張っているけれどスタイルの良さはやっぱりうーちゃんによく似ていた。
うーちゃんの偽物の様なこの男は、俺たちを見回すとクスッと笑って言った。あ、今の凄い似てる。俺は目の前で間違い探しをする様に、呆然と慌ただしい展開に呆然としていた。さっきまで腕の中にいたはずのうーちゃんはもう、門下の車道の車中だろう。
そして俺の前に立ち塞がる壁、うーちゃんの弟。
「あのさ、ケイを好きになるのは勝手だけど、我が姉ながら超天然だからね。この様子だと、みんなに気のある行動したんだろうけど、ケイのいる所は昔から修羅場だから。もう、酷いもんだよ。俺がこんなに誰にでも塩対応なのほとんどケイのせいだから。ケイの引き起こす修羅場のせいで、俺がいつもとばっちり受けてるわけ。
和也だっけ?ケイと付き合ってるって思ってるみたいだけど、そう思ってる男、地元に何人もいるから。それにさっきも俺のいない間に三年の男とイチャイチャしてたよ。進学する大学も近いみたいだし、あんた達よりもリードしてるんじゃない?ケイは側にいる人間に直ぐ懐くから、ね?同室の人。
まぁ、悪いこと言わないから、きっぱりケイのことは忘れたほうがいいよ。そうじゃないと、ずっと振り回される事になるから。ケイの幼馴染なんか、未だに振り回されてるのに絶対側を離れないんだから。じゃ、まぁ、俺の身代わりと仲良くしてくれてありがとう。」
そう、言いたいことだけ言うと、うーちゃんによく似た本物の漆原健斗は俺たちの前から悠々と歩き去って行った。俺たちはお互いに顔を見合わせることも出来ずに、ただ後ろ姿を見送っていた。
「あーあ、もう会えないのかな、ケンケン。僕、結構気に入ってたんだけどな。会えないとなると会いたいよね。まぁ、タクミたちとは会いたい種類がちがうけどさ。でも一個上はキツイよね。
ケンケンは、こんな修羅場になる程、みんなと色々仲良くってさ、大学行ったらきっとハーレムとか作っちゃいそうじゃんね?しかも絶対あの、玲だっけ?あいつがいるのは間違いないし。あいつの事でしょ?側を離れない幼馴染って。あ、司先輩もいるのか。ははは、そう考えると、ケンケンて只者じゃないね。やば。俺も桜蔭行って側でケンケンの修羅場眺めたくなってきた。ハハハハ。」
俺たちは一言も無く、黙りこくってトモの楽しそに言う、未来予想を聞いていたんだ。
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