第11話 同室の和也へのキスレクチャー
和也からのキスレクチャのーおねだりに、ボクはまたこの佐藤パターンかとため息をついた。
この学園は隙を見せると食いかかってくるんだ。
一方で、普段感情を表さない和也の動揺した顔を見たいという好奇心も手伝って、身体が動いてしまった。
ボクは背の高い和也の短髪に左手の指を差し入れて首筋に向かってゆっくり撫で下ろし掴むと、耳の下に親指を残した。
微かに親指でそこをくすぐりながら和也の目を見てニヤリと笑うと、文字通り和也の唇に噛み付いた。
ゆっくり上下の唇を甘噛みしてお互いの唇の柔らかさを堪能すると、舌で焦らすように唇を何度か舐めた。
和也が少しビクついたので、気を良くしたボクは少し開いた隙間から舌を押し込むと、和也の分厚い舌に絡ませた。
ワザと大袈裟に喘ぎながら、噛んだり吸ったりしてると腰を掴む力が強くなってきたのでぐいっと離れた。
「はい、レクチャー終了。アドバイスありがと。僕夕食に行くから。」
ボクは極めて冷静な態度でリストをポケットに突っ込むと、部屋を出ていった。
そして廊下で閉めたドアに寄りかかりながら息を吐き出すと、何とか心を鎮めた。
そして和也の目元を赤くして、ちょっと呆気に取られた顔を思い浮かべながら勝ち誇った気分で食堂へ入っていった。
僕が食堂に姿を見せると、騒つきがふと鎮まったのを感じた。
あれか。リストの件がここまで知られてるのか。僕は少々ヤケになっていた。
何となくみんながコソコソ話をしながらこちらを伺っているのが見える。
僕はため息をつくと夕食のトレーを受け取ってなるべく早く食べ終えた。
ポケットからリストを取り出し、和也がつけた1番上の丸の名前を確認して近くにいた寮生にニッコリ笑って尋ねた。
「ねぇ、2年の田中翔太ってどこに居るかわかる?」
突然話しかけられた寮生は慌てたのか、しどろもどろになりながら田中翔太を指差した。
僕はこちらを赤くなりながら見つめている田中翔太らしき人物の前の席に立ち止まった。
「田中翔太?僕、漆原健斗だけど。明日放課後教室に来て。じゃあ。」
僕は真っ赤になった田中のみならず、食堂にいる生徒が僕の一挙手一投足を見ているのを感じながら俺様態度で食堂を出て行った。
出口で和也とすれ違ったが、目を合わせただけで反応はお互いあえてしなかった。
また干渉しない関係に戻れる事を願いながらだったけど…。
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