第10話 誰が誰だかわからない件

ベッドで枕に埋もれながらジタバタしてる。うん。現実逃避だ。

もうホント家に帰りたい。

我ながら勢いで思いもしない事言っちゃう癖どうにかしたい…。


ボクは握りしめたリストを眺めた。眺めたって、誰が誰だかわからないけれど。

キスレクチャー希望者って30人以上いるの?2年だけじゃ無いし、あぁ、こんなのどうやって選ぶのよ。

明日までに決めないと佐藤とトモが凄い煩そうだし。


考えても解決しない難問に唸っていると、同室の和也が帰ってきた。


「おかえり。」


ボクはコーナーの壁からピョコっと顔を出すと和也は一瞬固まったが、眉を顰めてボクを見た。


「何…。お前から話しかけるの珍しいじゃん。」


「ちょっとお願いがあって…。」


和也はため息をつくと部屋のミニ冷蔵庫から水を出して飲んだ。

あらあら、何気ない動作も絵になる男だなぁとちょっと見惚れてると、話を促す様に見てきたので、僕はリストを手渡した。


「この中で、大人しい生徒って誰?あんまり色事に詳しくないやつ。」


和也はリストを眺めるともう一度僕を見つめた。


「もしかして、これ、噂のリスト?アレってホントだったんだ。俺ジョークだと思ってたんだけど。」


「僕だってジョークならどんなにいいか。でも佐藤はともかくトモがしつこそうだから、絡まれるくらいなら自分から選んでさっさと終わらせた方が楽なんじゃないかと思って。」


普段から人に関心無さそうな、干渉してこない和也をある意味買ってたので、僕は思わず心情を暴露してしまった。

和也は普段から無表情なので、今も何考えてるかは分からない。

が、もう一度リストを見るとデスクからペンを取っていくつか丸をつけた。


「俺の知ってる範疇でコイツらなら後腐れないし、強引でもないし楽なタイプじゃない?下手に大人しいやつだと漆原みたいな綺麗系は変に執着とかされて鬱陶しいと思うよ。」


ボクは和也が案外親切でアドバイスもくれた事に感激した。


「ありがと~。いや、助かったよ。」


僕が思わず嬉しくなってニコニコしてると、和也は少し考え込んだ後、僕の腰を引き寄せ言った。


「お礼はキスレクチャーでいいよ。」



そう言うと、僕が抵抗する間もなく腰と顎をぐいっと掴んで触れるだけのキスをした。そして色っぽい声で言った。


「ほら…レクチャーしてよ。」

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