第89話 出発とサンドイッチ

お久しぶりです。


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国王からの指名依頼を受けてから2日が経ち、旅支度の準備を終えた俺は待ち合わせ場所である王都正門前へと来ている。


本当はエドワードと一緒に一度王城の方へ顔をだす予定だったのだが、どうしても仕入れて置きたい食材があったので、市場へ朝一で買い付けに行っていた為、俺だけ直接正門に向かう事にしたのだ。




正門に到着すると、すでにエドワードやメリッサさん達が馬車の側に居たので俺は声をかけながら近づく。


「おはよう御座いますメリッサさん、それとエドワードも」


「おはようケイタ。どうしても外せない用事は良いのかい?」


「ああエドワード、バッチリだ!」

 

俺はドヤ顔で右手をサムズアップしてエドワードに向ける。

すると今度はメリッサさんが


「おはよう御座いますケイタさん。遅かったので心配しましたけど何事もなくて良かったです。ところで、一体なんの御用だったのですか?」


「ご心配をかけてすいませんメリッサさん。その話は移動中にでもお話しますよ」


「そう、楽しみにしてますね」


メリッサさんは可愛らいし笑みを浮かべる。


「ええ、期待しててください」


「うふふ、それでは出発しましょうか」


「そうですね。それでエドワード、俺はどの馬車に乗ればいいんだ?」


「ああ、ケイタはメリッサさんと同じ中央の馬車だよ」


「了解だよ。それでは行きましょうかメリッサさん」


「はい。よろしくお願いしますねケイタさん」


俺はメリッサさんと共にエドワードに言われた馬車へと乗り込む。

それから少しして、手続きや確認作業が終わり、いよいよ帝国へ向けて馬車が出発した。



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馬車が出発してから3時間程が経過した。


現在時刻はお昼の12時になろうかと言う時間、今のところ特にモンスターや盗賊などの襲撃もなく予定通りのペースで進んでいる。今回、俺達が使っている馬車は魔石を使った魔道具を取り付けた最新の馬車なので、従来の馬車に比べて移動速度はおよそ3倍と言う優れもなのだ。その上、乗り心地もバスと同じくらいなので割と快適な旅である。




「ねぇメリッサさん。帝国との国境まではあとどれくらいなんですか?」


俺がそう質問すると、メリッサんは少し考えたあと、


「そうですねぇ……大体、国境までは半分ほどでしょうか?」


と、答える。


「そうですか、それじゃあ今日中には着きそうですね」


「ええ、流石は王国が誇る魔導馬車と言った所ですね。それに、エドが『剣聖の圧』を使いながら先頭を走ってくれていますから、モンスターも怖がって寄って来ませんし、楽で助かります」


「ああ、そう言えばそんな事をエドワードが言ってましたね。すっかり忘れてましたよ、あはは……」


「うふふ、ケイタさんはやっぱり面白い人ですね」


「それって褒めてます?」


「もちろんですよ」


「そうですか………あっ、それはそうとメリッサさん。そろそろお昼になりますけどお腹すきませんか?」


「そうですね。では、馬車の積荷に何か食べ物が無いか探してみますか?」


そう言って馬車に積んである積荷の方へ向かおうとするメリッサさんに圭太が声をかける。


「ちょっと待ってメリッサさん!実は簡単な軽食なんですけど、今朝作って来たので一緒に食べませんか?」


「えっ?!良いんですか?」


「もちろんですよ。それに、ちょうど良い具材も手に入ったので味には期待して下さいね」


俺はそう言って【アイテムボックス】からバスケット取り出すと、蓋を開けて中に入っている3種類のサンドイッチのうち、自信のあるひとつをメリッサさんに渡す。


「わぁ〜凄く綺麗ですねケイタさん!これって、サンドイッチですよね?見た目が凄く綺麗ですけど、中身はなんでしょうか?」


「えーと、今メリッサさんが持っているのがハムと野菜とチーズを挟んだサンドイッチで、あとは卵とタルタルソースを合わせた特製タマゴサンドと、それからこの一番大きいのがビックマ……じゃなかった、ハンバーグサンドです」


「えっ?!チーズってあの黄色いやつですか?あの臭くて硬い?」


「ええ、この前、王都の市場でチーズを売ってる人を発見しましてね。沢山欲しいと店主に頼んだら、一度村に戻ってチーズを持って来てくれたんで、ある分全部買い込んだんですよ」


「ああ。それで今朝、遅れたんですね。それにしても冒険者の方が偶に話しているのを聞きますが、チーズってそんなに美味しいんですか?」


俺も店主から聞いた話だが、この世界ではチーズやヨーグルトと言った発酵食品を敬遠する傾向があると言う。全くもって勿体ない事だ。


不安そうな目つきでサンドイッチを見つめるメリッサさんに俺は、


「まぁまぁ、騙された思ってひと口食べてみてくださいよ。きっとメリッサさんも気にいると思いますよ」


「……そうですか。ではひと口だけ……いただきます」


メリッサさんはゆっくりとサンドイッチをひと口食べる。


すると……


「な、な、なんですかこのサンドイッチ?!凄く美味しいではありませんか!!」


そう言ってメリッサさんは可愛らしい笑みを浮かべながら目を輝かせる。どうやら気に入ってくれたようだ。


サンドイッチをパクパクと食べるメリッサさんを見ながら俺は、


「ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。なんせ素材はもちろんソースにもこだわりましたからね! ささ、どんどん食べてください!」


「ありがとうございます!」


そう言ってメリッサさんは2個目のサンドイッチに手を伸ばした。



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テッテテーー!!

ここで、誰でも作れるサンドイッチの作り方を紹介しまーす!


まずは食パンを2枚用意しまーす。(少し薄めの方が作りやすい)

具材は、ハム、チーズ、レタス、ソースにはバターとマヨネーズとマスタード(なければカラシ)を合わせた特性ソースを用意します。


あとは簡単! まず最初に、パンの片面にバターを薄く塗った後、特性ソースを適量塗って、ハムとチーズ、レタスを綺麗に置いたらパンを挟んで上から軽く押してあげる。最後に耳を切って、三角形か四角形の好きな形に切れば完成!!


ちょー簡単である!!


ちなみにサンドイッチは元々、トランプなどのカードゲームを楽しむ人の為に作られた料理なのだそうだ。


■■■■■


結果、

ハムチーズサンドイッチを気に入ったメリッサさんは、他の種類も含めてなんとサンドイッチを3人分ぺろっと平らげてしまった。


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メリッサさんは腹ペコキャラだった。

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