第53話 『雷光』
王都の中央区に着いた俺たちは、歩きながら出店巡りを楽しんでいた。
「それにしても凄い人だな?」
俺が人の多さに感心していると、エドワードは
「そうかな?誕生祭も始まったばかりだし、まだまだこれから増えると思うよ」
「マジか?やっぱり凄いな」
「まぁその分、色々と事件やら事故があって面倒くさいけどね」
と、エドワードは笑いながら話す。
するといきなり、腰まである長い金髪を纏め、刀を持った優男が話しかけてきた。
「おやおや!そちらにいるのはもしや『剣聖』殿ではありませんでしょうかねぇ〜?」
「誰?」
俺はエドワードにそう聞くと、エドワードは真面目な顔をしながら一歩前へ出て
「おっしゃる通り、僕は『剣聖』エドワード・アル・エディアスですが、貴方のその腰に差してある刀はたしか、44聖魔武具の一つである、魔剣『麒麟』ですね!その刀をお持ちという事は、貴方はヴェルダン帝国6騎将の一人である『雷光』のムサシ・カゲミツ殿で間違い無いでしょうか?」
エドワードの問いに、金髪を纏めた優男はニヤッとしながら
「お察しの通り、自分はヴェルダン帝国6騎将の一人、『雷光』ムサシ・カゲミツですよ。いや〜、まさかこんな所で『剣聖』殿とお会い出来るとは、自分も運がいいねぇ〜」
飄々と喋る「雷光」にエドワードは真面目な顔で
「なぜ、6騎将である『雷光』殿がこのような所にいるのか、ご説明して頂いても宜しいでしょうか?」
すると「雷光」は頭の後ろに手を当てながら
「いや〜お恥ずかしい話、自分はうちの太子殿の護衛で来ているのですが、途中ではぐれてしまいましてねぇ〜」
「そうですか。もしよろしければ、近くの兵に事情を説明して送らせますが?」
エドワードからの提案に対して「雷光」は
「ああ、大丈夫ですよ。自分はもう少し見て回りたいですからねぇ〜」
と言って断る。だが、エドワードはその後も
「雷光」に対して話を続けていたので、俺はこっそりと毎度お馴染みの「鑑定」をかける。
名前 ムサシ・カゲミツ
種族 人間
年齢 27
レベル 74
職業 武士
役職 ヴェルダン帝国 第一師団団長
装備
武器
魔剣 麒麟
ステータス
攻撃 10500
防御 7000
魔力 8940
魔防 6900
速さ 10500
スキル
剣術 居合い 魔法剣 縮地 高速移動
身体強化 雷耐性など
称号
雷光 6騎将 第一師団団長 魔物の殺戮者
龍殺し など
エドワード程では無いがかなりヤバめのステータスを誇るムサシだが、それより俺は武器の欄に興味が湧いた。
(あれ?これってもしかしてギルマスと同じじゃね?)
気になった俺は、武器の欄を更に詳しく鑑定してみる。
名前 魔剣
レア度
能力
雷属性付与 破壊不可 身体強化
切断 再生 など
説明
この世界に44個存在する聖魔武具の1つ。
魔力をこめると、刀身に雷を付与する事が出来る。さらに所有者には身体強化もされる。
ただし、所有者には継続的に電撃による激痛を受ける。
(ああやっぱりそうだったか。つーか、どう見ても刀だよな?しかも麒麟って、めっちゃカッコいいネーミングじゃねーかよ!うーわ、俺もこんな武器が欲しい……とは思わないが、それにしてもギルマスのよりも能力が良くね?)
俺が鑑定結果を見ながら考え事をしていると、いきなり声をかけてきた。
「ねぇ、そこでずっと考え事をしている君。『剣聖』殿と一緒にいるけど、君は一体誰なのかねぇ〜?」
ムサシからの質問に対して、俺は笑みを作りながら答える。
「これは失礼いたしました。私はDランク冒険者のケイタと申します。どうぞお見知り置きを」
するとムサシは不満そうな表情をしながら
「へぇー、Dランクの冒険者がなんで『剣聖』殿と一緒にいたのかねぇ〜?」
「なにぶん王都には初めて来ましたので、友人であるエディアス剣爵殿に誕生祭の案内の方をお願いした次第でございますが、それが何か?」
俺が逆に質問し返すとムサシは顎に手を置きながら
「つまり君は『剣聖』と友人になれるほどの実力があるって事なのかねぇ〜」
俺はムサシの言葉を否定する。
「いえ、私には大した実力はございませんよ。今でも噂に名高い『雷光』殿が目の前にいるだけで、足元が震えているくらいですから」
と言って俺はわざと足を震わせる。
するとムサシは一度、俺の事を品定めするような視線で見た後、口元をニヤけさせながら
「ふふふ、君は中々面白いねぇ〜。まぁ、君はやる気が無いみたいだし、残念だけど無しだねぇ〜」
と、残念そうな表情をした。
「はあ?」
俺が首を傾けていると、ムサシはエドワードの方へ向き
「それでは『剣聖』殿、また近いうちにお会い致しましょう。出来ればその時にでも、一手ご指南をお願いしたい所ですねぇ〜」
「ええ、その時は是非」
軽くお辞儀をしてからムサシは人並みの中に紛れた消えてしまった。
ムサシが見えなくなったのを確認した俺はエドワードに
「なあエドワード、なんで6騎将がいるんだよ?」
「そう言えばケイタには言って無かったね。今年の誕生祭は国王陛下の60歳の誕生日だから、他国の要人たちが招待されているんだよ。確か帝国からは、『竜騎士』と言われる第三皇子のライナー殿下だったかな?」
「へぇー、帝国には龍に乗って戦う騎士がいるんだな?」
俺が関心しているとエドワードは笑いながら
「違うよケイタ。龍じゃなくて竜だよ」
「ん?何が違うんだ?」
「全然違うよ!帝国の竜騎士が騎乗するのはワイバーンとかレッドドラゴンやグリーンドラゴンなんかのBランク程度のドラゴンだけど、ケイタが言った龍だとAランク以上のドラゴンの事になっちゃうよ!」
「いや、意味が分からん。もっと簡単に教えてくれ!」
さも、当然のように言ってくるエドワードだが、俺からしたら全然意味が分からなかったのは言うまでも無い……
地球だと、竜は西洋系のドラゴンの事で魔物的な感じのイメージだし、逆に龍は東洋系のドラゴンの事で、神様的なイメージがある。
俺の言葉を聞いて、エドワードは少し考えてから
「えーと簡単に言うと、竜は雑魚で龍は強敵って事だよ」
「随分と分かりやすくなったな?そんなんで大丈夫なのか?」
俺の質問にエドワードは笑いながら
「大丈夫だよケイタ。竜はともかく、龍と遭遇するなんな事なんて、本当に稀だからね!」
エドワードはそう言って右手の親指を立てながら笑うが、そんなエドワードを見て俺は心中で呆れながら
(いや、その希少な龍が君の目の前でジュースを飲んでいるけどね!)
と、カーラを見ながら思った。
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