第49話 王様からお願いされたよ!
エドワードは一瞬だけ複雑な表情をした後、すぐに表情を和らげながら続きを話す。
「まぁそんな訳で、見事敵国を滅亡させた父はその後、『剣聖』として
「へぇー、それじゃあエドワードはその剣爵家の当主って事なのか?」
俺の質問に対してエドワードは
「そうだよ。でもさ、父が死んだ時、僕はまだ5歳だったからしばらく母が当主代理として家の事を頑張ってくれてたんだよ。お陰で僕が18の時になんの問題もなく、すんなりと当主になる事が出来て本当に母には感謝しているんだ。だから……」
「………」
先程と同じように言いよどむエドワードに、俺は何も言わずただエドワードを見つめていた。すると、エドワードはさっきよりも強い口調で
「だから僕は、母の為にも父を殺した魔族を例え刺し違いになったとしても必ずこの手で殺すと決めたんだ!」
「……そうか。昼の時にも聞いたが、俺はお前の復讐を止めるつもりも無いし、辞めさせるつもりも無い。何より止める道理も無いからな!……だから、お前が俺に復讐を手伝ってくれと言われても俺は手伝うつもりも無いぞ!」
父親の復讐を誓うエドワードに俺はそう告げる。冷たいと思われるかも知れないが、これはエドワード個人の問題だ。部外者である俺が、おいそれと踏み込んで良い領分では無い。それに、ここで俺が手を貸すと言うことは、エドワードの覚悟を踏み躙る行為になってしまう。
俺がそう言うと、エドワードは優しい笑みを浮かべながら
「うん、ありがとうケイタ。君は本当に優しいんだね。お陰で僕はようやく覚悟を決める事が出来そうだよ」
「覚悟?」
「うん。実は前から騎士を辞めようと考えていたんだよ」
「はっ?!」
エドワードからの予想外の言葉に俺は驚きのあまり大声を出してしまった。
「ちょっとー!耳元で大声を出さないでくれよ」
「悪いエドワード。だけど騎士を辞めるってお前、それ大丈夫なのか?」
俺が尋ねるとエドワードは笑いながら
「もちろん大丈夫じゃ無いよ!これでも僕は師団長だし、剣爵家の当主だからね!当然、あらゆる方面で迷惑がかかるだろうし、下手をしたら家が潰れるかもね」
小さく舌を出しながら笑うエドワードに俺は
「分かっているのに何で辞めるんだよ!復讐には関与しないと言ったが、流石にこの問題に関しては言わせて貰うぞ!お前は間違ってる!」
俺がはっきりと告げるとエドワードは真剣な表情で俺の事を見つめながら
「なら僕も言わせて貰うけど、ケイタって結構隠している事が多いでしょ!」
「なっ?!な、なんの事かなぁ〜?」
俺は全力で誤魔化そうとしたのだが、エドワードはしまってあった手紙を持ちながら
「しらばっくれても無駄だよ!『拳聖』の手紙にも書いてあったんだからね!それにケイタ、魔族と戦った事があるでしょ!」
「なっ!?何で俺が魔族と戦った事があると知って……あっ!しまった!」
俺は口元が緩んだエドワードを見て、ようやく嘘だと気づく事ができたのだが
「やっぱりね!」
時すでに遅しだった………
「くっ!まさかお前に鎌をかけられるとは思っても見なかったわ!」
悔しがる俺にエドワードは勝ち誇った笑みを浮かべながら
「僕としては半信半疑だったんだけどね。なんせ手紙には、テッサリアの街で魔族の反応があったとだけしか書いてなかったし、ケイタが関係しているとも書いてなかったからね!でも、僕の直感が言っているんだよ。ケイタは何かを知っているって!だから鎌をかけて見たんだよ」
誤魔化すのを諦めた俺は溜め息をついた後
「おっかねーな『剣聖』の直感って!○インハ○トかよ!はぁ、たしかにエドワードの言った通り、以前俺は魔族とやりあったことがあるし討伐もしたが、だからと言ってお前に話すとは無いぞ」
俺がそう言うと、エドワードは俺の肩を掴みながら
「頼むケイタ!!僕には、時間が無いんだ!」
「はぁ?時間が無いって、どう言う意味だよ!お前、まだ俺に隠している事があるだろ?!」
「………」
俺が問い詰めるとエドワードは俺の肩を掴んでいる手を離した後、辛そうな表情をしながら黙り込んでしまった。
俺はそんなエドワードに腹が立ち、強めの口調で
「なんだよ黙りかよ!そんなに
と言って俺は、入り口の方へと歩きだす。
『あっ!待ってくださいご主人様!!』
ずっと遊んでいたカーラが、帰ろうとする俺に気づき走ってくる。
俺はカーラの手を繋がながら
「行くぞカーラ」
促すと、カーラは心配そうな表情をしながら
『良いんですかご主人様?』
と聞いてきた。
「ああ、いいんだカーラ」
俺はエドワードを見ながらそう言うと、そのまま扉に手をかけ開けようとした瞬間
「待て!!!」
「「?!」」
城内に大声がこだました。
俺は声の主の方へ視線を向ける。
するとそこには、壁にかけてある絵と同じ顔をしている見るからに国王と思しき人物が、数人の護衛と一緒に階段から降りて来た。
「陛下の御前であるぞ!跪き表を下げよ!」
護衛の一人が俺に向かっていきなり意味のわからない事を言ってきたので俺は
「えっ!嫌ですけど」
と返した。
「なんだと貴様!!無礼な!」
すると護衛の一人が剣に手をかけたので俺は
「その剣を抜くなら覚悟を決めろよ」
「覚悟だと?」
「ああ、剣を抜いた瞬間、俺はお前の腕を落とす」
「おのれ!」
「止めよ!!」
俺に激昂した護衛が剣を抜きかけた瞬間、国王がその護衛を手で制した。
「陛下、しかし」
「聞こえんかったのか?わしは止めよと言ったのだぞ!」
食い下がろうとする護衛に向かって国王は鋭い眼力で睨む。すると護衛は悔しそうに剣から手を離し、後ろに下がった。
「兵の非礼を詫びよう。すまなかった。どうか許して欲しい」
「いえ、別に気にしてませんから気になさらずに……ほら、カーラも落ち着きなさい!」
俺は国王に一礼した後、臨戦体制のカーラを落ち着かせると国王に対して
「それで、国王陛下ともあろうお方がなぜ私を呼び止めたのでしょうか?」
俺が質問する(護衛のせいで少しムカついたので敬語とかは無しで!)と国王は
「回りくどい話は無視して単刀直入に言おう、どうかエドワードに力を貸してやってはくれぬか!」
「「「「「えっ?!!」」」」」
その場にいた全員が驚愕した。
何故なら……
国王は一眼を憚らず俺に向かって頭を下げて来たからだ!
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