第48話 衝撃の事実です!


エドワードとの昼食会により、俺は様々な事を知る事ができた。

例えば、元々「剣聖」と言う称号は、エドワードの父親が30年前にヴェルダン帝国6騎将の一人「紅姫」との一騎打ちにより勝利した事で得たらしく、その後エドワードの父が死んだ時に当時5歳だったエドワードが受け継いだとの事だ。そしてエドワードは父親の仇であるとある魔族をずっと探しているらしい。


あと、ソラリア王国にはエドワードの様に二つ名持ちが他にも何人かいるらしく、テッサリアのギルマスである「拳聖」マオ・カーマの他に、宮廷魔導士団団長の「魔導王」や王都に防護結界を張っている「結界者」、それから「天下無双」と呼ばれている冒険者もいるそうで、今度「魔導王」と会わせてくれるらしい。


本当、持つべき者は「剣聖」ってね!!


そんな中、1番気になった情報と言うのが、5日後に開催される国王の誕生祭に関してだ。

なんでもその時、周辺諸国から来賓がやってくるそうで、エドワードもその警備が忙しいと言っていたが、俺はそんな事よりもその時、城で行われるパーティーに出される料理の方に興味が湧いた。


エドワードいわく、当日は国中から厳選された食材が集められて、宮廷料理人が腕によりをかけて料理を作るそうなので、俺としてはなんとかパーティーに潜り込まないかと考えている。ちなみにエドワードにお願いしてみたが、残念ながら晩餐会の来賓に関しては宰相なんかが担当しているらしく、騎士であるエドワードではどうする事も出来ないらしいので残念だ。


だが、ここで諦める俺では無い!!

せっかくの異世界料理を堪能するチャンスを不意にするわけにはいかない俺は、とある作戦をおもいついた。


「なぁエドワード。実は折り合ってお前に頼があるんだ」


俺が真剣な表情でそう言うと、エドワードは嬉しそうな表情で


「なんでも言ってくれケイタ!親友の頼みならなんだって聞いてやるさ!」


と言って胸に手を当てるエドワードに、俺は頼みごとの内容を伝える。


あっ!何故か友人がいつのまにか親友に変わっていたけど、この際大目に見てやることにした。なんたって、これから頼むことはかなり面倒な事だからだ。


それから、俺の頼み事を聞いたエドワードは何度か渋い表情をしながらも、最終的にはオッケーしてくれたので、俺はカーラを連れてエドワードと一緒に目的の場所である王城へと向かった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆


エドワードと一緒に王城の前まで馬車で来た俺たちは、あらためて王城の凄さを実感する事になった。


「うへぇー。やっぱり、遠くから見るよりもこうして近くから見たほうが何倍も迫力があって良いもんだな!」


俺が王城を見上げながらそう言うとカーラは目を輝かせながら


『そうですねご主人様!カーラもびっくり仰天です!』


と言って、はしゃぐカーラに俺は呆れながら


「びっくり仰天なんて古い言葉、よく知ってたなぁ?一体誰から聞いたんだ?」


『ん?お父さんからですよご主人様!』


俺の質問に平然と答えるカーラだが、俺としてはこの言葉を知っているカーラの父親に少しだけ興味が湧いた。びっくり仰天なんて言葉を知っているなら、もしかしたらカーラの父親は地球から来た人間の事を知っているかもしないと思ったからだ。


(でもまぁ、興味が湧いたって言っても少しだけだから別に自分から会いに行きたいとは思わないんだよねぇ〜)


俺はそんな事を考えながらエドワードと一緒に王城の中へと入っていく。


王城の中は、以前観光で訪れたベルサイユ宮殿やバッキンガム宮殿の様な造りをしていて、とても素晴らしかったが、それ以上に目を引いたのは入ってすぐ目の前にあった国王と思しき人物の肖像画だ。


「あれ?なんかこの肖像画の人がエドワードと似てる気がするんだけど?」


『本当ですね。何ででしょうか?』


そう、肖像画に描かれている人物も深い青い色ネイビーブルーの髪に深紅の瞳をしていたのだ!


俺たちが不思議がっていると、エドワードが少し気まずそうな表情をしながら


「えーと、実は僕の母は現国王の妹だから似ていても別に不思議じゃ無いよ。母も僕と同じ髪や瞳の色だし……黙っていてごめんね!別に隠すつもりは無かったんだよ」


申し訳無さそうにしているエドワードに


「別に気にして無いよエドワード。例えお前が王子だとしても、俺は今と変わらない態度で接しているだろうしね!」


これは俺の本心だ。

日本で生まれた俺には貴族だの王族だのと言った、身分制度なんて正直どうでも良かったりする。

そりゃあ、社会人として目上の人間に対してはそれ相応の態度で接するが、友人に対してそんなかたっ苦しい事をしないのが、俺のスタイルだ。


俺の話を聞いたエドワードは、何故か涙目になりながら


「ケイタ……ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ!」


と、まるで少年の様に微笑みながら言う。


(世の女性がこの笑顔を見たら、確実に落ちるな。うん、間違い無い!)


俺は内心そんな事を思いながら、疑問に思った事をエドワードに質問をする。


「でも、それだとエドワードは大変だなぁ。『剣聖』として色々と大変なのに、さらにドロドロの王位争いまでしなくちゃいけないんだろ?」


俺の質問に対してエドワードは笑いながら答える。


「あはは、そんな事ないよ。なんせ僕には王位継承権は無いから安心してね!」


「えっ?!どうしてなんだ?エドワードは王族なんだろ?」


「うーん……なんて言えば良いんだろうね。簡単に言うと、僕の母には父とは別に許嫁の様な人がいたらしいんだけど、父は母と結ばれる為に当時の国王祖父との約束でヴェルダン帝国の『紅姫』から『剣聖』の称号を奪ってきたんだよ!でも、その事を認めなかった許嫁相手にイラっとした父は、その許嫁相手を斬ったんだよ」


さらっと、とんでも無い事面白そうな事を話すエドワードに


「マジで?……それで、どうなったの?」


俺が続きを聞くと、エドワードは一息ついた後、続きを話始めた。


「父が斬った許嫁相手が実は隣国の王子で、そのまま隣国と即戦争。父は一時期、責任を取って自害されそうになったけど、当時の国王祖父が父にとある条件を出したんだよ」


「その条件って?」


「父一人で攻めて来た隣国の軍勢、約5万を退けられたら父の罪を帳消しにして母と結婚させてやるって言ったらしいよ。そしたら父は、約5万の軍勢をたった一人で全滅させただけじゃ無く、そのまま隣国に攻め入って滅ぼしちゃったんだってさ!」


「すげーな、エドワードの父親って!一人で国を滅亡させるとか、最早人間じゃなくて化け物じゃね?」


俺が冗談を言うとエドワードは笑いながら


「あはは、確かに人伝に聞くだけなら父は化け物だろうけど、僕の記憶では父はいつも母に叱られてたからね!まぁ、最初は僕も思っていたよ。でも……」


エドワードは笑いながらそう言うと、先程とは打って変わっていきなり真剣な表情に変化して


「……そんな父も、死んでしまった以上、結局は人だったんだと、僕は思うんだよ……」


と言うエドワードの言葉には、怒りや悲しみの他に、どこか寂しさがこもっている様に俺は思えた。



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補足

現在のエドワードの実力は、先代剣聖である父親とほぼ互角レベルとなっています。

なので、エドワードが本気になれば普通に国の一つや二つ、落とすことができると言う事です!


ちなみに、他の四星帝王もエドワードに近い実力がありますが、四星帝王は国家間の条約により、有事の際以外に自国を出る事が出来ないので、国同士のバランスが取れています。

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