第43話 王都の冒険者ギルド


ギルドの前に到着した俺は思わず驚嘆した。

王都のギルドはテッサリアのギルドに比べて倍ほどの大きさがあり、さらにスキル「気配感知」で中を調べると、なんと中には100人近い反応があった。


「よし。開けるぞ」


俺はギルドの扉を開けようと手を伸ばすが、途中で躊躇ってしまう。


「もしテッサリア見たいな変人のギルドだったらどうしよう……」


俺はテッサリアの街での前科があるので、冒険者ギルドに対して慎重になっていると


『どうしましたご主人様?』


「えっ?!」


隣にいるカーラが、心配そうな顔をしながら聞いてきたので、俺はカーラを不安にさせない様にする為に作り笑いを浮かべながら


「だ、大丈夫だよカーラ。ちょっと扉が重かっただけだから」


俺がそう言うと、カーラは右手を何度か回しながら


『それならカーラが開けるです!』


と言って、扉に向かって思いっきり殴ろうとするカーラに俺は


「ちょっと待っ!」


ドン!


俺が止めよとした瞬間、カーラは扉に思いっきりパンチをくり出してしまった。


ドゴン!


すると扉は勢いよく吹っ飛んでしまった。


「あちゃ〜」


俺が顔を押さえているとカーラが


『やったです!』


と言ってはしゃいでいたので俺はカーラに対して


「やったじゃ無いわ!扉を壊したらダメだろうが!」


と、軽くチョップをしながらそう言うとカーラは少し俯きながら


『ごめんなさいご主人様』


「次は気をつけろよカーラ。今回は許してやるけど今度は許さないからな」


『はいです』


「あのー、ちょっとよろしいですか?」


「?!!」


俺とカーラが話していると、ギルドの受付嬢の人が話しかけてきた。それも額に青筋を浮かべながら……


(あー、これ絶対に怒られるやつだこれ……)


怒られる事を悟った俺は必死に


「いや。実はこれから用事が……」


と、カーラを連れて逃げようとしたが


「すぐ済みますから」


そう言って、受付嬢の人は俺の肩を掴む。


「は、はい…」


諦めた俺は、カーラと一緒に受付嬢の人に先導されてギルドの奥にある部屋に連れて行かれた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



俺とカーラが待っていると、先程の受付嬢が銀髪に右目の傷が特徴的な老人を連れてきた。老人はイスに座り、両手を組むと俺を睨みながら


「お主らか?ギルドの扉を壊したって言うバカ者は?」


と、聞いてきたので俺は頭を下げながら


「はい、大変申し訳ございませんでした」


俺が謝罪をすると、隣に座っているカーラも俺と同じように頭を下げる。

すると老人は


「ふん、まぁよいわ!今回は見逃してやる。だが、次は無いぞ」


と許してくれた。俺は思わず


「えっ?!良いんですか?!」


「ギルドマスターである、わしが良いと言ったのだから問題あるまい!」


「あ、ありがとうございます」


感謝の言葉を老人に告げると、老人は俺を睨みながら


「それで、ここにきた目的は何だ?」


「えーと、カーラ……この子の冒険者登録をする為にきました」


老人からの質問に俺が素直を話すと、老人はカーラをじっくり見ながら


「ほーう、なかなか面白い娘だな。ふむ、良いだろ。わしの権限でその娘の冒険者登録を認めよう」


「えっ?!」


「聞こえんかったか?許可すると言っておるのだ!」


何故か、話がサクサクと進んでいくので不審に思った俺は、目の前の老人に質問をする。


「あのう、本当に宜しいんですか?」


すると老人は


「構わん!お前の事はマオより聞いておる!見た目よりも相当腕が立つようだし、それにマオからお前の事を頼まれておるからな。この程度なら別に問題は無いわ!」


「は、はぁー、そうですか」


どうやらギルマスが事前に俺の事を話していたようで、俺は助かったと思う反面、ギルマスに仮を作った事に少し恐怖を抱いたが、今回の事は本当にありがいたと思ったので、あとで何かご馳走をしようと決めた。



それからしばらくして、カーラの登録手続きを待っている間、俺はクエストボードをのぞいていた。


何気にテッサリアでは、ギルド登録はしたが

クエストを一度も受けていないので、なんだか新鮮な気持ちだ。


「うーん。一応俺もDランクの冒険者だから討伐系のクエストは受けられるけどさぁ〜……はぁ〜」


俺は思わず溜め息をついてしまった。

だってしょうがないじゃ無いか!

ここに貼ってある討伐モンスターの殆ど、俺が森や街道で倒したモンスターと同じなんだもの!!

一番簡単なゴブリンやウルフから始まって、オークやオーガなんかも倒したし、何よりBランク用のクエストにあるオークジェネラルなんて一体討伐するだけで金貨5枚だぜ!あり得なくね?


俺はガッカリしながらさらにクエストボードを見ていると、一番簡単なFランク向けのボードに俺が喉から手が出るほど欲しい物に関しての情報があった。


「こ、これは、まさか」


俺はクエストの書いてある紙を剥がす。


「【 求む コケッコッコーの卵 】

 場所 西の森  依頼主 卵屋

 報酬 一個につき銅貨5枚 

 但しカイザーコケッコッコーの卵は

一個につき金貨1枚  」


「おお!これこそ俺が探し求めていた情報だ!!よし、これからの予定が決まったぞ!ふふふ、卵を手に入れたら何を作ろうかなぁー、あれもいいなぁ、あっでもこれもいいかなぁ〜……」


異世界に来てようやく掴めた卵の手がかりに、俺はずっとぶつぶつと独り言を呟いていた。


そんな俺を見ていた周りの冒険者達からの視線に気づいた俺が、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしたのは数分後の事である。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

補足

この世界のお金事情

銭貨   1枚   日本円  1円

鉄貨   1枚   日本円 10円 

小銅貨  1枚   日本円 100円  

銅貨   1枚   日本円 千円

小銀貨  1枚   日本円 5千円

銀貨   1枚   日本円 1万円

大銀貨  1枚   日本円 10万円

小金貨  1枚   日本円 50万円

金貨   1枚   日本円 100万円

大金貨  1枚   日本円 500万円

白貨   1枚   日本円 1000万円

黒貨   1枚   日本円 1億円


この世界では基本的に野菜やリンゴ一個が鉄貨1枚で買えます。

さらに農民の月収がおよそ銅貨10枚ですので、危険でも冒険者になりたい人が多いのも納得です。

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