第35話 褒美と手紙
街へと戻った時、既に時刻は深夜の2時頃にも関わらず正門は開いていて、冒険者達がモンスターの死骸から素材を剥ぎ取っていた。
俺は門の側で剥ぎ取りをしていた冒険者に街の状況とギルドの事を聞くと、住民に関しては安全の為に明日まで避難所で過すようで、街は閑散としているらしい。
ギルドの方も、警戒の為に高ランクの冒険者がローテーションを組んで待機しているそうだ。肝心のギルマスに関しての情報は得られなかったが、メリッサさんはギルドの方に待機しているそうなので、俺はギルドへと向かった。
ギルドに到着すると、やはりと言うべきか中は物苦しい雰囲気を漂わせている。
あっちこっちに、完全武装した冒険者たちが待機していて、中には仮眠をとっている者や怪我を治療している者もいた。
そんな中、受付の方を見ると忙しなく書類整理をしているメリッサさんを発見した俺は受付の方へと向かい、メリッサさんに声をかける。
「こんばんはメリッサさん。今大丈夫ですか?」
俺の問いかけに対してメリッサさんは少し不機嫌そうに
「大丈夫そうに見えますか?もし見えるのでしたらケイタさんは一度、目を治療してもらった方がいいと思いますよ」
と、悪態をついてきた。
俺はメリッサさんを怒らせてしまったと思い、その場を後にしようと
「あはは、ですよねー……」
と、おちゃらけた感じで話しながら帰ろうとした瞬間、メリッサさんが笑みを浮かべながら
「冗談ですよケイタさん。ギルマスから貴方がいらしたら部屋に案内する様にと仰せ使ってますからご案内しますね」
と言って立ち上がる。
俺はようやく、自分が揶揄われていた事に気づくとメリッサに
「ああ、そうなんですか。それならそうと早く言って下さいよー!メリッサさんを怒らせちゃって、どーしょうかと思ったじゃないですか!」
俺がそう言うと、メリッサさんは軽く笑いながら
「ふうう、さっきの焦っていたケイタさんは可愛いかったですよ!もしかしてケイタさんは……いえ、なんでもありません」
メリッサさんは何かを言いかけたが、何かを察した様に口を閉じる。
(ちょっと!今何を察したんですかメリッサさん?!!……まさか、俺がどう……うぐふゴホッゴホッ!!)
俺はメリッサさんが何を察したのか推理しようとしたが辞めた。
触らぬ神に祟りなし、ならぬ触らぬメリッサさんに祟りなしだ!
メリッサに連れられた俺は、2階の奥にある部屋へと到着した。
コンコン!!
「ギルマス、ケイタさんをお連れしました」
メリッサがドアをノックしながらそう言うと、部屋の中から
「はーい!入ってちょうだい!」
と、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
メリッサさんはドアを開けて俺に
「どうぞ」
と言って来たので、俺は言われるがまま中に入る。すると部屋にはギルマスがその服装に似合わず書類整理をしていた。
「お疲れ様ですギルマス」
俺が挨拶をするとギルマスは笑みを浮かべながら
「お疲れ様ケイタちゃん!貴方のお陰で被害を最小限に抑える事が出来たわ!本当にありがとうね!」
「いえ、被害を抑えられたのも、スタンピードを防げたのもギルマスが俺の事を信用してくれたお陰ですから、お礼なんて言わないでくださいよ!」
「うふふ、ケイタちゃんは謙虚なのね!でもねケイタちゃん!私やメリッサちゃん、それにノールちゃんも含めて、貴方の事を評価しているんだから、そこはちゃんと理解して頂戴ね!」
「はい。ギルマスやバスタード伯爵からの評価、大変嬉しく思います」
俺はそう言ってお辞儀をすると、ギルマスが何か袋の様な物を取り出して、テーブルに置いた。
「あのう、これはなんですか?」
俺は恐る恐るギルマスに質問する。
まぁ、こう言う場合中身が何なのかに関してはお約束なので聞かないことにした。
「これはノールちゃんから貴方への今回の謝礼と、それからこっちはギルドから貴方への謝礼ね!後、今回の成果としてケイタちゃんのギルドランクが2ランクアップして、Dランクになるから後でメリッサちゃんにギルドカードの更新をしてもらってね!」
「えっ?!あっはい!」
俺は流されるまま返事をしてしまった。
するとギルマスがさらに話を続ける。
「それでケイタちゃんはこれからどうするの?」
「えーと、これからと言うのは?」
「これからはこれからよ!」
「つまり、冒険をするのか、この街に残るのかって事ですか?」
「そうよ!」
ギルマスの質問に対して俺は素直に答える。
「そうですね。できれば今日のうちには次の街へ旅に出たい所ですがまだ警戒中ですし、流石に無理、ですよね?」
俺はギルマスに質問すると、ギルマスは机の引き出しからカードを取り出して机の上に置いた。
「そう言うと思って、特別に作った通行カードよ!これがあればすんなり街の外に出られるわ!あと、もし王都に行くならこの手紙をある男に見せなさい!きっと良くしてくれるわ!」
俺はギルマスから通行カードと手紙を渡された。その後俺は、その手紙を誰に渡したらいいのかを聞いた。
「ちなみにこの手紙は誰に渡せば良いんですか?」
「ああ、そうだったわね!その手紙を王都にいるエドワードと言う男に渡しなさい!」
ギルマスがエドワードと言う名前を出すと、
後ろにいるメリッサさんがいきなり
「ちょっ!ギルマス!!宜しいんですか?」
と、ギルマス質問する。
「大丈夫よメリッサちゃん!あの坊やならきっとケイタちゃんと上手くやれるわよ!」
「ですが・・・」
のほほんとしながら笑っているギルマスに対して、不安そうな表情をしているメリッサさん。対照的な両人をみて、俺はエドワードと言う男の事をギルマスに聞いた。
「あのーギルマス。そのエドワードって人はどんな人なんですか?」
俺の質問に対してギルマスは笑見を浮かべながら
「エドワードの本名はエドワード・アル・エディアス。ソラリア王国最強の騎士にして、『剣聖』の二つ名を持つ、四星帝王の一人に数えられる男よ!」
ギルマスから衝撃的な事を聞いた俺は一瞬の混乱の後、心の中で叫んだ。
(絶対に面倒な事になるだろーがー!!)
と………
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