第31話 変態の実力
勝負が終わった後、俺はクラークさん達と別れて、ギルマスたちに合流した。
「どうもギルマス。其方の首尾はどうですか?」
俺の質問に対してギルマスは
「マーラ商会の方は問題なく進んでいるわ!すでにノマーラとナイジェル、そしてボーンを確保し、本部の方にも兵を向かわせているから時間の問題ね!あとはビレフだけど、こっちの方は今、トーマスちゃんが兵を率いて向かっているわよ!」
「そうですか。ですが、まだ安心は出来ませんね」
「そうね。もしスタンピードが起こるのだとしたらまだまだ油断はできないわね!」
「ええ、その通りです。それにビレフの?!」
俺が話していると、地震と共に突然の轟音が響き渡った。
*******
数分前
伯爵暗殺を失敗したビレフ・ゴーンは、マーラ商会の面々が確保されているうちに、すぐに退散して自分の屋敷にて籠城を決め込んでいた。
すでに屋敷の前には領主の息子であるトーストが兵を率いて、今にも屋敷へと攻め込もうとしている為、ビレフは鏡を使って自分の主人に助けを求めていた。
「お助け下さいませ主人様!このままでは私は捕まり、首を刎ねられてしまいます。どうか主人様のお力で私めをお救いくださいませ」
鏡の前で土下座をしながら必死に懇願するビレフに対して、鏡の向こう側で見ている魔族はほくそ笑みながら告げる。
『貴様は今まで良くやったが、肝心な所で爪を誤るとはやはり人間とは使えん種族だな。
ちょうど良い機会だ、我の生贄として貴様の肉体を依代に使ってやろうではないか!』
「何を言っておられるのですか主人様?生贄?私の肉体を依代?そ、そんなまさか…」
恐れ慄くビレフを他所に、魔族は呪文を唱え始める。
『ヴェーダ、アスカロス、ジグマ……』
するとビレフの足元に魔法陣が現れていき、次第にビレフの体が黒く変色して行く。
「や、やめて、お助けくださー!!………」
そして、体が全て黒く塗り潰されると次第に形が変わっていき、最終的に人型の形へと変貌した。
ついに魔族が現世に顕現した瞬間だった。
現れた魔族は身長180センチ程で、金髪に浅黒い肌と紅く光る鋭い眼、そして禍々しい魔力を纏っていた。
『ふむ、悪くない肉体だ。やはり受肉は良い。この体ならば我の力を存分に使えよう!まずは手始めに、我の邪魔をするこの街を絶望の淵に叩き落としてくれようか!』
魔族はそう言うと、屋敷を破壊して外へと出てから魔法を放つ。
『誘惑魔法「ハーメルン」』
魔族の魔法により人間には聞こえず、モンスターのみを誘惑する音色が響き渡り、数千のモンスターたちがテッサリアの街へと押し寄せてきた。
『フハハハハ!!さぁ、愚かな人間たちよ!絶望を抱きながら泣き喚き、そして死ね!』
こうして、ついに現れた魔族によりモンスターたちの
*******
ドドドドドドドド!!!
俺とギルマスは急いで轟音のする方を確認すると、街に向かって全方位からモンスターたちが襲ってきていた。
「やばいでしょあの数?!千や二千じゃ済まないですよこれ!」
俺が慌てていると、落ち着いているギルマスが口を開く
「安心して頂戴ケイタちゃん!うちのギルドの子たちはこの程度のモンスターたちには負けないわ!それに、私も戦場に出るんだから心配しないの!」
「……分かりました。ギルマスを信じます!」
「そのいきよ!冒険者は度胸が肝心ってね!さぁ、私たちも行くわよ!」
「はい!」
俺とギルマスは急いでモンスターたちが集中している正門前に向かう。
移動中俺はスキル「天の目」を使い、避難状況を確認すると、事前の準備もあり住民の避難はほとんど完了していたので安心した。
ようやく正門前に到着し、俺は臨戦態勢を整えてから外に出ると、思わず唖然としてしまった。
「………はぁ?」
正門前でモンスターと戦っていたのはわずが10人程であったが、すでにそこにはモンスターの死体で出来た山が幾つも積み上がっていたのだ。
俺が辺りを見回すと、まず目に入ったのは巨大な棍棒を振り回してモンスターども潰している「破壊僧」ディボアだ!
「オラオラオラオラ!!破壊、破壊、破壊、破壊ー!!!」
どこぞのジョジョのような掛け声を叫びながらモンスターどもを殺戮しまくるディボアに俺は鑑定をかけてみる。
名前 ディボア
種族 人間
年齢 35
レベル 69
職業 僧侶
役職 Sランク冒険者
ステータス
攻撃 8200
防御 7050
魔力 2500
魔防 8000
速さ 4500
スキル
身体強化 防御強化 自然治癒
縮地 闘気法 など
称号
Sランク冒険者 モンスターの天災
元枢機卿 破壊僧 竜殺し など
(わおー!こいつは凄いや!めちゃくちゃ強いじゃないか!)
俺が肝心していると、今度は別の場所で複数の爆破が起こった。
俺はそちらの方に視線を変えると、そこにはギルドでSMプレイをしていたあの二人組が暴れ回っていた。
確か『襄王』と呼ばれていた女性が鞭を振り回すたびに、モンスターどもが細切れになっていき、血煙が辺り一面に立ち込めていく。
「あははは!!!ほら、もっと泣き喚きなさい豚どもが!!」
すると今度は、『襄王』が鞭を振るすぐそばでモンスターどもが目にも止まらない速さで切り裂かれていくのを俺は確認した。
「は?どうゆう事だ?」
俺はよく目を凝らして見ると、もの凄い速さで戦場を駆ける『豚野郎』がいた。
しかも両手に剣を持っていて、それを使ってモンスターを的確に切り裂いて行っていた。
「この二人もやべーな。確か二人ともAランクって言ってたし、マジでバケモンだな」
そう思いながら俺は二人にも鑑定をかけて見る。
名前 エリザベート
種族 人間
年齢 27
レベル 55
職業 鞭使い
役職 Aランク冒険者
ステータス
攻撃 5200
防御 4520
魔力 4500
魔防 3500
速さ 4200
スキル
鞭技 魔力操作 魔法付与
快楽 など
称号
Aランク冒険者 襄王
元王女 SM女王 など
名前 フォーク
種族 人間
年齢 34
レベル 60
職業 双剣師
役職 Aランク冒険者
ステータス
攻撃 6000
防御 4270
魔力 3600
魔防 3600
速さ 7520
スキル
双剣術 魔法付与 身体強化 痛覚態勢
治癒魔法 韋駄天 など
称号
Aランク冒険者 双剣師 M
元近衛騎士団長 など
(あれ?なんかまた王女がいるんだけど、これってやばいよね?しかも豚野郎が近衛騎士団長って大丈夫なのか?)
俺が鑑定した事に後悔をしていると、奥の方から体長10メートルを越えるSランクモンスターの巨大なゴリラ[マウントゴリラ]が現れた。マウントゴリラは、他のモンスターを踏み潰しながらこちら向かって来たので、俺が迎撃をしようと包丁を召喚した時、目の前にギルマスが現れて俺に向かって
「こいつは私が貰うわね!」
と言ってゴリラの方へと走って行ってしまった。
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