第29話 危うく逮捕?

食事が終わった俺は宿屋に戻り、軽くシャワーを浴びる。

正直、女神からまたメールが来ると予想しているが、今回は取り敢えず気にしない事にして、俺は早々に布団に入る。


*******


翌朝


気持ちよく起きた俺は、恐る恐るメール欄を見ると、やっぱり女神からメールが来ていたが、それをシカトしてクラークさんの元に向かう。

実は事前にクラークさんとミユちゃんの二人には手伝いをして貰う約束をしていたので、勝負の前にクラークさんの家で軽いミーティングをする事にしていたからだ。


宿屋を出ると、まだ朝の10時前だと言うのに既に街中がお祭り状態となっていて、まるで隅田川花火大会のように人がごった返していた。


「この時間にこんなに人が多いんだと、夕方の勝負の時はどれだけ増えるんだよ……」


俺はそんな事を思いながら人混みをかき分けてクラークさんの家に向かう。

片道15分程で着く道がなんと40分も掛かってしまったが、どうにか無事に家の前に到着した俺はドアをノックする。


コンコン!!


「はーい!」


すると家の中から可愛らしい女の子の声が聞こえて来て、鍵が開き中からミユちゃんが出てきたので俺は挨拶をする。


「こんにちはミユちゃん。今日はよろしくね!」


「あっ!ケイタさんだ!こんにちはです!お父さんなら今、着替えているのでどうぞお入り下さい!」


「ありがとうミユちゃん。それじゃあお言葉に甘えさせて貰うね」


俺が家に入るとミユちゃんは急いでクラークさんの元に向かって行った。


その間に俺は客間へと向かい、クラークさんが来るまでまっていると、少ししてクラークさんが急いでやって来た。


「すまんケイタ!待たせて悪かったな!」


「いえいえ、大した待って無いですから気にしないで下さい!それよりも早速ミーティングを始めましょう」


「おお!そうだったな、よしそれじゃあ頼む!」


こうして俺とクラークさんとミユちゃんの3人によるミーティングが始まった。

と言っても、話の内容は調理手順の確認と、配膳の仕方や説明などと言った事で、食材の調達やメインの調理は俺が担当する為、それほど時間はかからなかった。


その後、クラークさんが会場の下見を買って出てくれたので、俺はミユちゃんを連れて祭りを回ることにした。


「うわーあ!人がいっぱいで凄いね!お祭りってこんな感じなんだ!!」


はしゃぎながら笑顔でいるミユちゃんを見ながら俺は失言をしてしまった。


「ミユちゃんはお祭り始めてなの?聞いた話だと毎年やってるらしいけど?」


俺の質問に対してミユちゃんは少し暗い表情になりながら答える。


「うん、病気になってからずっと家から出ることなかったし、お父さんさんはいつもお仕事でいなかったから……」


俯いでいるミユちゃんに俺は慌ててフォローする。


「そ、それじゃあ今日は今まで分も楽しもうか!ほら、なにか欲しいものは無いかい?俺がなんでも買ってあげるよ!」


俺がそう言うとミユちゃんは目を輝かせて


「やったー!ケイタさん大好き!!」


と言って、俺の腕に抱きついて来た。


(うおー!ちょっと待ってミユちゃん!そんなにくっ付いたら胸が当たっちゃうから辞めて!しかもこんなに人がいるのは拙いから!お願い辞めて!!)


そんな俺の願いも虚しく、至るところで俺の事を見る熱い視線もとい、汚物を見る視線が突き刺さって来る。その上、なにやら小声で俺に対してロリコンやら誘拐?やら、なにやら危険な話し声が聞こえて来た。


みなさーん!誤解ですからねー!!



俺は心の中でそう叫びながらも、ミユちゃんと一緒に出店や屋台を回る。


途中、何度か見回りの冒険者や兵士に声をかけられたが、その度にミユちゃんが説明してくれたのでどうにか捕まらずに済んだ。 


てか、なんで俺だけこんな間に合うんだよ!こんなの理不尽すぎだろー!!


*******


日が沈んでいき、勝負の時間に近づくと俺とミユちゃんはクラークさんのいる勝負会場の広場へと向かう。


広場にはすでに審査員を始めとした来賓やギルドで見た高ランクの冒険者にギルマスまでもが待機していて、いつでも始められるようになっていた。


俺はクラークのいるテントに向かうと、途中でマーラ商会側の料理人とナイジェルが絡んできた。


「これはこれは、逃げずによくきましたね。その勇気だけは認めてますよ」


「ふん!貴様のような青二才が儂と勝負するとはなんとも哀れなやつじゃわい。ガハッハッハッ!!」


上から目線で発言して来る二人に対して俺は盛大に煽る。


「まぁ、せいぜい今のうちにたっぷりと余裕をかいておくことですね。勝負が終わった時には、其方さんがどんな顔をするか楽しみですよ。それに、其方の料理人が作る料理なんてたかが知れてるでしょうしね。ふふふふ」


すると俺の煽りを聞いた料理人が途端に顔を赤くくして


「貴様!こちらが下手に出ていればつけ上がりおって!その言葉、忘れるで無いぞ!」


と言い残して去って行った。


俺はその姿を見送る事なくテントへと向かいクラークさんと合流すると、何故かギルマスがいたので理由を聞いた。


「あれ?なんでギルマスがいるんですか?」


「どうもケイタちゃん!ちょっと話があるんだけど少し良いかしら?」


「ええ、これから最終ミーティングがありますから5分程でしたら」


「オッケーよ!それじゃあこっちにきてちょうだい!」


俺は促されるまま、テントの奥にある資材置き場に行く。


「それで、お話というのはもしかして例の件ですか?」


「その通りよ。予定通り準備は完了したわ!もし、スタンピードが起こってもすぐに対処が出来る様になってるわよ」


「流石ですね!それから、メリッサさんはどうしたんですか?失礼ながらいつもギルマスと一緒にいるイメージがあるんですが?」


「メリッサちゃんなら、正門前にあるギルド本部の方で待機してるわよ!あっ!もしかしてメリッサちゃんがいなくて寂しいのかしら?」


と、揶揄ってきたギルマスに対して俺は真顔で


「そう言う訳ではないですが……まぁ、昨日約束したんで」


「ヘェ〜。メリッサちゃんがケイタちゃんと約束をねぇ〜。ふーん」


「なんでそんなに怪しむんですか?」


「うふふ、ちょっとした好奇心よ!好奇心!気にしないで頂戴!」


「あっ、そうですか。分かりました。それじゃあ時間なんでいきますね」


俺はそう言ってテントの方へと戻っていくと、ギルマスは手を振りながら


「楽しみにしてるわよー!」


と、応援をしてくれたので俺は


「頑張ります」


と一言だけ言って、俺はテントへと戻った。




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