第28話 やっぱり中華は美味い!!


メリッサさんからの質問に対して俺はどう答えるべきなのか悩んだ結果、少しだけ真実を話す事にした。


具体的にはまず、俺のスキルである「鑑定」と【捌く者】の事を話した。

鑑定に関して、メリッサさんも知っていたので特に突っ込まれる事は無かったが、【捌く者】に関してはめちゃくちゃ聞かれた。


「ケイタさんの【捌く者】ってスキルに関して、100年以上生きている私ですら聞いて事がありませんので、おそらくケイタさんだけのユニークスキルになると思います。もしこのスキルの存在がバレれば間違いなく世界中の国がケイタさんの事を召し抱え用とするでしょうし、下手をしたらケイタさんを拉致する為に各国の二つ名持ちが刺客として襲ってくるかも知れませんので、くれぐれも誰にも話さないように注意して下さいね!分かりましたか?!」


メリッサさんはそう言って、再び凄い剣幕で顔を近づけて来たので、俺は思わず目を逸らしながらなるべくメリッサさんを見ないようにした。


何故ならば……


(さっきも思ったけど、顔が近すぎてめちゃくちゃ緊張するし、おまけにメリッサさんてすげーいい匂いがするんだよなぁ)


26年生きてきた中で、ずっと料理の腕を上げることしか考えて無かった俺は、実は女性に対して全然免疫が無いのだ。おまけに、今まで寄ってきた女性はみんな俺の料理人としてのステータスしか見てなかった為、軽く女性不信になっている所がある。


そんな俺が、地球で言えば国宝級の美女であるメリッサさんと数センチまで顔を近づけているなんて、考えただけでも恐ろしいのに実際にこうして近くにいる時点で心臓がはち切れそうになるくらいドクドクとしている。


そんな俺を他所に、メリッサさんはさらに話を続ける。


「本当にお願いしますよ!下手をしたら私にまで被害が出るかも知れないんですから!」


「………はい」


メリッサさんに対して俺は小さく頷くとメリッサさんは納得したような表情で


「よろしくお願いしますね!」


と言って、椅子に座り直してから淹れておいた紅茶を飲むと


「それで、貴方はこれからどうするの?」


と聞いて来たので、俺は少し考えてから


「取り敢えず明日の祭りが終わり次第、王都の方に行こうと思っています」


「理由を聞いても良いかしら?」


「俺の旅の目的はまだ見ぬ食材や料理を探す事ですし、王都に行けばここじゃあ手に入らない物もたくさんあると聞きましたから」


俺がそう言うと、メリッサさんは少し俯いた後


「それなら良いわ!もう夜も遅いし、私はここで帰らせてもらうわね」


そう言ってメリッサさんは立ち上がり帰ろうとしたので、俺はメリッサさんに向かって挨拶をする。


「おやすみなさいメリッサさん。帰り道には気をつけて下さいね」


するとメリッサさんは可愛らしい笑みを浮かべながら


「ありがとうケイタさん。今日は本当にごめんなさいね。私の勘違いでいきなり攻撃をしちゃって……」


段々と申し訳なさそうな表情をしていくメリッサさんに俺は


「気にしなくても大丈夫ですよ。それに、もとあと言えば俺が勝手に鑑定をした事が原因ですからお気になさらずに」


俺のナイスなフォローにメリッサさんの表情が晴れていく。


「貴方はやさしいのね。明日の勝負、楽しみにしているわね」


「はい、ご期待に添えるように最善を尽くしますので、楽しみにしていて下さい!!」


俺は右手の親指を立てながらグットポーズを取ると、メリッサさんは笑いながら帰って行った。


*******


メリッサさんが帰った後、いきなり腹が減った俺はその場に魔法でキッチンを作り料理を始める。


今日の夕飯は「アイテムボックス」の中で肥やしになっているオークの肉を使った青椒肉絲と肉団子の甘酢和えだ!


まずは時間のかかる肉団子の甘酢和えから作っていく!


オークの肉を挽肉にしていき、塩、胡椒、味の素、酒、醤油、すり下ろしたジーンジャーとニンニクのようなガーリーを加えて良くこねる。続いて一口大に丸めたら160度の油で揚げていく。

色がきつね色になっていったら油から取り出して、今度は180度の高温の油で2度揚げをする。こうする事で表面をカリッとさせる事ができる。

肉団子が完成したら鍋にケチャップと砂糖、酢、醤油、水を入れて火にかける。

最初は酸味が強いが、徐々に酸味が飛んでいったら水溶き片栗粉を加えてとろみをつけて、肉団子を加え纏わせると最後に胡麻油を少々加えて完成!!



続いて、青椒肉絲を作っていく!!


オーク肉の塊を細切りにして行き、塩、胡椒、醤油、酒、卵の代わりに水などで下味を付けたら片栗粉をまぶして油を絡めておく。この方法を漿チャンと言って、中国語で下味の意味。こうする事で火を通した時にジューシーになる。


その後は、ピーマンに似たパーピンとタケノコに似たコノタケを細切りにする。

この時、なるべく食材の大きさや細さを均一にしておくと見栄えが良くなり、火の通りも均等になる。


いよいよ炒めていくが、その前に調味料を合わせていく!

塩、砂糖、味の素、胡椒、醤油、酒、オイスターソース、胡麻油を合わせるのだが、俺は少し甘めが好きなので砂糖とオイスターソースを少し多めに加える。


準備ができたら、まずオーク肉の細切りをたっぷりの油で油通しをしてから続けて野菜も油通しをする。

油通しをする事で、食材に事前に火が通り短時間での調理が出来、さらには色鮮やかに仕上がるので、この工程は大切だ!!


全体的に火が通ったらザルにあげて油をよく切ると、みじん切りにしたジーンジャーとギーネを軽く炒めてから肉と野菜を入れて炒める。そしたら合わせた調味料を加えて、最後に水溶き片栗粉でとろみをつけて完成だ!!


完成した料理を皿に盛った俺は、別皿に盛った料理を女神へと送る為に祈る。

すると瞬く間に料理は消えて、突然女神の声が聞こえて来た。


『わおー!!これって中華料理って言うのよね?まさか貴方が作れるなんて思わなくてびっくりよ!さぁ、温かいうちに頂きまーす!!もぐもぐ……うーん、美味しーい!この肉団子、下味がしっかりしているから甘酢に絡んでいても食べてて飽きないし、逆に甘酢の酸味と甘みが相まって最高!!それに、青椒肉絲の方はシャキシャキの野菜とジューシーな肉が甘めのタレと絡まって食欲をそそるわねー!!もー最高よー!!』


毎度お馴染みの女神の食レポを聞きながら、俺はテーブルに料理を並べて遅めの夕食を食べ始めた。


「それじゃあ頂きます。あーん、もぐもぐ……うーん、美味い!やっぱり青椒肉絲は最高だな!野菜の食感もさることながら、色鮮やかな見た目が余計に食欲をそそらせてくれるぜ!それに肉団子の方も、甘酢の酸味と甘みに加えて、このとろみを加減が我ながら最高だな!!」


若干、女神と感想が被るのが悔しい所だが、それでも美味い料理を食べると感想を述べたくなるのは仕方ないと納得しながら食事を続けるのだった。


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