第27話 二つ名って憧れるよね!

諍いはあったが、無事に話し合いまで持っていく事ができた俺は、取り敢えずメリッサさんが何故俺を呼び出したのかを聞く前に、メリッサさんの誤解を解く事を優先する事にした。


「まず、最初に言っておきますが、俺は決してメリッサさんの敵ではありませんし、ましては、帝国の使者なんかでも無いですからね」


「ええ、その事に関しては私の早合点だったようだし素直に謝るわ。でも、もとあと言えば貴方が私の事を鑑定した事が原因なのですからね!」


「その件に関しては本当に申し訳無いと思っています。まさかメリッサさんが帝国の皇女様だなんて知らなかったんですよ。と言うよりも、その事を知ってる人っているんですか?それに、なんでヴェルダン帝国の皇女であるメリッサさんがソラリア王国の冒険者ギルドで受付嬢をしているんですか?」


ダメもとで聞いた俺の質問に対して、メリッサさんは一度ため息をついた後答えてくれた。


「はぁ、まぁケイタさんにはバレている事ですしお話しますが、これからお話しする事は他言無用でお願いしますね。……まず初めに私がハーフエルフである事はお話しましたよね」


「はい、聞きましたがそれが?」


「鑑定で確認したのならば、ご存知かと思いますが私の年齢は125歳です。元々エルフは長命種であり、寿命は約600年から1000年と言われています。そして、ハーフエルフである私の寿命も約300年程はあります」


「そ、それは凄い長生きですね……」


淡々と話すメリッサに対して、俺は返答に困りながらも答えていく。


「ヴェルダン帝国は元々、2000年程前にエルフの一族が建国した国の為、皇族は代々長生きなんですよ。まぁ、そのせいで全然世代交代が行われず、3世代に一回は暗殺やらクーデターやらで皇帝が変わっていますが、それでも現在の皇帝で確か19代目だったかしら?」


「そ、そうなんですか。なんだがドロドロしてますね」


「帝位争いなんてそんなものですよ。それにヴェルダン帝国のもっとうは弱肉強食ですからね!実際、私がこのソラリア王国に来たのは今からおよそ60年程前になりますがその頃のヴェルダン帝国では現皇帝である私の父が先代皇帝である祖父に対してクーデターを起こして、そのせいで私も命を狙われたのでこの国に逃げて来たんですから」


メリッサさんは軽く話しているが内容はかなり重要な事だった。


「えっ!?メリッサさんて亡命して来たんですか?」


「あれ?言ってませんでしたっけ?まぁその事は置いておくとして、その後私はこの国で冒険者として活動していく事になるのですが、何度か帝国から追ってやら刺客やらがやって来て、その度に撃退するのが大変でした」


メリッサさんは昔の事を思い出したのか、何度か首を縦に振りながら話を続ける。


「それからおよそ50年程冒険者を続けた後、当時一緒のパーティーを組んでいたギルマスが冒険者を引退してこの街のギルドマスターになるって事で、私も一緒に引退して受付嬢になったんですよ」


「……ん?……それじゃあメリッサさんは、あのギルマスと昔からの知り合いって事ですよね?」


「ええ、そうですが何か?」


「つまり、メリッサさんはギルマスのあの姿に対して何も言わなかったんですか?」


俺の質問に対してメリッサさんは少し呆れながら


「その事に関しては私も何度か頑張って見たんですが、50回を越えた辺りで残念ながら諦めましたよ。それに慣れれば気にはなりませんしね」


「そうですか。……まぁ、考え方は人それぞれですから仕方ないですよね。うん、仕方無い、仕方無い!」


「納得してくれたようでしたら良かったですが、他には聞きたい事はありますか?」


メリッサさんが聞いて来たので、俺は一番気になっていた事を聞いた。


「それでは、さっき言っていた『死神』とか『天道』とか6騎将ってなんですか?」


「えっ?!6騎将をご存知ないのですか?………はぁ。良いですか、6騎将とはヴェルダン帝国最強の6人の事で、現在では『死神』、『天道』、『夢道』、『紅姫』、『雷光』、『葬槍』の事です」


メリッサさんの説明を聞いて俺は心の中で


(凄い!めちゃくちゃ厨二心をくすぐってくる単語が出て来た!!)


と、ワクワクしていた。

やっぱり、男なら一度は思っちゃうよね!


俺が心の中でテンションを上げているとメリッサさんが


「その中でも『葬槍』は世界最強と言われるの一人ですので、もし出会った場合はすぐに逃げる事をオススメします」


「メリッサさんがそこまで言うなんて、その四星帝王ってのはそんなに強いんですか?」


「ええ、四星帝王はソラリア王国を含めた4大国の中でも最強の人物につけられる二つ名の事で、それぞれソラリア王国の『剣聖』、ヴェルダン帝国の『葬槍』、海王国家シーリアの『厄災姫』、それから小国ではありますが、獣人達の国である獣王国ネアンの『獣神』を含めた4人と、星帝王と言われる、聖ディアノ神国の『平定者』を併せて四星帝王と呼ばれています。中でも、獣王国ネアンの『獣神』とヴェルダン帝国の『葬槍』はライバル関係にあるらしく、以前戦った時に山を3つ程更地にしたと聞いた事があります」


「メリッサさんがそこまで言うのでしたら、会わないように気をつけますね」


「懸命な判断かと思います。他にご質問はありますか?」


「大丈夫です。質問に答えて下さりありがとうございました」


俺が感謝をしながら頭を下げるとメリッサさんが俺に質問をしてきた。


「それでは今度は私から質問しますが、貴方は何者なんですか?」


「えっ?!」


「本来、レベル10以下の人間がどう考えても大精霊である[シルフ]の攻撃を防ぐ事なんて不可能なんですよ。それなのにケイタさんは防ぐどころか、攻撃を切り裂くなんて有り得ないんです。さぁ、答えて下さい!!」


メリッサさんは俺の方に顔を近づけながら、めちゃくちゃ怖い顔をして聞いてきた。


(やべーよ!これ嘘ついたら殺されるんじゃないかと思うレベルだよ!うわー、まじでどうしようかなぁー)


俺は本当の事を話すべきか、それとも嘘を吐くべきか、答えを出せぬまま沈黙していた。

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