第25話 会議は終わり、彼女は笑う

俺が黙っていると、メリッサさんが口を開いき話し出す。


「その件に関しまして私の方から説明させて頂きます。ケイタさんがビレフ・ゴーンを知っていた事については、昨日に彼から聞いた人相などをもとに私が判断致しました」


「成程………だが、メリッサ殿は本当にそれだけで判断したのかね?」


メリッサさんの説明に対して、バスタード伯爵は鋭く目を光らせながら、さらに質問をする。


呆然とする俺を他所にバスタード伯爵の質問にメリッサさんは淡々と説明していく。


「ご存知の通り、私もギルマスよりビレフ・ゴーンとマーラ商会の繋がりに関しては聞いておりましたのですぐに分かりました」


メリッサさんは話し終わると俺の方を見ながら軽く笑みを浮かべた。


(!!怖!やばい、やばい、やばい、落ち着け俺!ここで変な態度を取ると怪しまれるぞ!こう言う時は素数を数えるって神父も言ってただろう。えーと、1.2.3.4.5.6.……)

メリッサさんの笑みに底しれない恐怖を感じた俺は拳を握りながら心の中で素数を数える。


するとバスタード伯爵が


「ふむふむ、・・・・そう言う事ならこちらとしても信用しようじゃないか!それでマオよ、まだ話す事があるのだろう?」


バスタード伯爵はそう言いながらギルマスの方を見る。


「あら!流石はノールちゃんね!実はそうなのよねぇ〜」


「そんな事だと思ったよ全く、マオがウキウキとしてる時は大体何かを隠してる時だからな!」


「私そんなにウキウキしてたかしら?」


ギルマスが質問すると


「ああ、もの凄くウキウキしてたぞ!それはもうゴブリンみたいにな!」


「ぶっ!!」

俺は思わず吹いてしまった。


だってしょうがないでしょ!正直言って的確な例えだもん!!!


するとギルマスが


「ちょっと!誰がゴブリンよ!!」


と、鬼の形相になってバスタード伯爵に聞く。部屋中がピリピリした緊張感に包まれていく中、バスタード伯爵が


「ふふふ、冗談だ」


どこか馬鹿にしたような口調でそう言いながらギルマスの事を睨む。

しばらくしてギルマスが


「……あっそ!ならいいわ!」


そう言ってギルマスはいつもの顔に戻った。

そして、二人は互いの顔を見合わせながら


「「ふふふ」」


と笑ってから、ギルマスが話しだす。


内容は、明日の祭りの時にマーラ商会が毒の入った料理で領主一家を暗殺しようとしている事と、ビレフが魔法具を使ってモンスターによるスタンピードを起こして街を混乱に貶めようとしていると言う内容だ。


その話を聞いたバスタード伯爵はひどく動揺していたが、それでもなんとか平静を装っているのが俺にも分かった。


(そりゃそうだよな。従兄弟が自分を殺そうと考えてるなんて知ったらそりゃ動揺もするわな。ちょっと伯爵には同情するよ)


俺はそう考えていたのだが、次の伯爵の言葉で自分のその考えが、どれだけアマちゃんだったのかを知らしめられた。


「くふふふふふ、ようやくだ。ようやく、あのクズを大々的に消し去る事ができるぞ!!ふふふ、はははは、はっはっはっはっ!!」


「ええ父上、これであの男の悪逆もここまでですね!父上、ぜひ私めにビレフ討伐をお命じ下さいませ!」


バスタード伯爵とトーマスは、めちゃくちゃ機嫌良く、もの凄く物騒な事を言いながら笑う。この時俺は、その姿を見てこう思った。


異世界の貴族、怖ーーー!!!!!



*******


その後、落ち着いた2人にギルマスが今後の事を相談し、会議は終了した。


会議の結果、祭りの警備として冒険者たちを雇い、俺とマーラ商会の勝負の時には審査員の中にギルマスを加える事で、万が一のために備えるとのことだ。ちなみに俺には特に指示は無く、普通に料理勝負を楽しんでくれと言われただけだった。


時間にして1時間程度だったのにも関わらず、俺のHPはすでに半分にまで削られている。

その理由はと言うと・・・


「それではケイタさん。私は一度、ギルドの方で仕事を片付けてから、お約束の場所にむかいますのでよろしくお願いしますね」


そう言って、俺に向かってウインクしてくる皇女様ことメリッサさんと2人っきりで会う事になったからだ!


普通に考えれば、美人で綺麗なメリッサさんと2人っきりで会あるなんて、どんなご褒美だよ!とみんなは思うだろうが俺は違う。


だって明らかに怪しいじゃん!

まず初めにあった時と昨日の俺への態度が違うし、今朝はいきなり俺を誘って来た上極め付けはさっきの会議だ!

伯爵の質問に対して黙っていた俺にメリッサさんは何故か助け舟を出してくれたのだ。

こんなの、どう考えても裏があるとしか思えないでしょ。


まぁ、メリッサさんの態度が変わった理由に関しては、大体想像はついているけど、なんでメリッサさんが俺の事を擁護してくれたのかが不明なままだ。


考え果てた俺は、メリッサさんとの約束の時間までとりあえず大通りの屋台巡りをする事にした。


*******


大通りに到着すると、この街に来た時と同じように人が多くて活気があった。

至る所で食料品を叩き売りしていたり、珍しい物を売っている店があったりと飽きる事が無い。日本ではこう言った市場なんかが、昔はたくさんあったらしいけど、今ではどんどん減って来ていると良く聞く。


俺は歩きながら目を引いた物や食い物を買いながら時間を潰す。


そして、約束の時間に近づいてきたので俺は指定した場所へと向かう。


ちなみに俺が泊まっている宿屋は無しにした。流石に、女性と2人っきりで一緒の部屋にいるのは無理だと俺の直感が危険ベルを鳴らした為だ!


少しして目的の場所に到着した。そこは、昔は立派な屋敷があったらしいが火事で焼け落ちたので、現在は何も無い草原になっている。俺は土魔法で椅子とテーブルを作ってから[食器召喚]を使ってティーカップとポットと召喚して紅茶を淹れて一口飲む。


「うーん、やっぱり貴族が使ってる茶葉だから美味いな!」


俺が紅茶を飲んでいると、「気配感知」のスキルに反応がでた。俺は反応した場所を「天の目」を使って確認すると、そこには普段の受付嬢の服では無く、まるで魔法使いのような格好をしたメリッサさんがやってくるのが見えた。

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