第17話 勝負方法

翌日


起きた俺は、まず日課のステータスチェックをする。

何故かと言うと、基本女神は俺が寝ている間に新しいスキルなんかを寄越すので、こまめにチェックをしないといけないのだ!


*******


残念ながら今日は特に変化は無かったので俺は、肉の仕入れの為に朝早くクラークさんの家に向かう。


すると、すでに家の前で準備を済ませていたクラークさんがいたので、俺は駆け足で向かい


「おはようございますクラークさん!遅れてしまい申し訳ないです」 


と、挨拶をするとクラークさんも


「おはようケイタ!なーに、問題ねーよ!今日はケイタと一緒だから、いつもより少し早く起きちまったんだ、気にしないでくれ。それに、ミユのことでケイタには世話になったしな!」


「そうですか、なら良かったです。それじゃあ早速、肉を買いに行きますか!」


「おう了解だ!いつも世話になってる肉屋はこの先の通りにあるからついて来てくれ!」


「分かりました」


クラークさんの後に付いていくと、そこには大きな看板に「肉屋」と書かれた店があった。


クラークさんは店の前で立ち止まり、大きな声で


「おーいミーベン!俺だ、クラークだ!」


と言いながら扉を何度か叩くと、しばらくして少し小太りの男性が店から出て来た。


「おはようミーベン、いつも通り肉を買いに来たぞ!」


クラークさんがそう言うとミーベンさんは困った顔しながら


「悪いクラーク、もうウチに肉は……無いんだ……」


「「えっ?!!」」


その言葉を聞いて、俺とクラークさんは驚いた。

そんな俺たちを他所に、ミーベンさんは話を続ける


「済まんクラーク!実は昨日、マーラ商会の奴らが街中のありとあらゆる肉を買い込んで行きやがって、ウチの店を始め、テッサリア中の肉屋に肉が無いんだ」


ミーベンさんの話を聞いてクラークさんは


「なん、だと・・・そんな馬鹿な・・・いや、それなら今日卸された肉は無いのか?」


クラークさんの質問に対してミーベンさんは


「あるにはあるが・・・・・済まんクラーク、お前に肉を売れないんだ!本当に済まん!」


突然ミーベンさんは、クラークさんに向かって頭を下げながら謝る。


「な?!どう言う事だよミーベン?なんで俺に、肉を売れないんだよ!」


クラークさんはミーベンさんの肩を掴みながら聞くと、ミーベンさんは言いにくそうな顔をしながら


「マ、マーラ商会の奴らが圧力をかけて来やがったんだ!もしお前に肉を売ったら、ウチの店には二度と肉を卸させ無いようにするって!それに、たとえ役人に訴えても奴らは金の力で握り潰されるに決まってる!!だから、済まないクラーク」


ミーベンさんは泣きながらクラークさんの腕を引き離すと、店の中に入っていってしまった。


するとクラークさんは膝を地面について、呆然していたので、俺は肩に手を置いて話しかける


「取り敢えず、一旦クラークさんの家に戻りましょう!それで、今後の方針と対策を考えていきましょう!さあ、立ってください!」


俺はクラークさんの腕を引っ張りながら、さらに話を続ける


「それに、マーラ商会が妨害工作をしてくるのは分かりきってた事ですし、逆に言えばこれ以上の事を奴らはして来ないって事でしょ?それならば、どうとでもなりますよ!」


俺の話を聞いてクラークさんは


「ああ、そうだな。ケイタの言う通り、奴らが何かをしてくるのは分かってた事だもんな。よし、済まなかったなケイタ!俺とした事が、柄にも無く落ち込んじまってたわ!」


そう言いながら笑顔を見せてくれるクラークさんだが、その目はどこか寂しそうだった。


俺とクラークさんは、クラークさんの家に一度帰る事にした。


その道中、俺は


(そりゃあ、そうだよな。ずっと仲良くしてた業者肉屋がいきなり契約を切ってようなものだもんな。精神的にはかなりショックだろうなクラークさん。勝負の日までに立ち直ってれば良いけど……)


歩きながらそんな事を考えていると、目の前から見覚えのある二人組がやって来た。


「あれー?どちらさんかと思ったら、串焼き屋のクラークさんじゃあございませんか?どうしたんですか、そんなに落ち込んで?何か悪いことでもありましたか?」


話しかけて来たのは、昨日と同系統の服を着た優男が白々しく話しかけて来たので俺は


「よく、いけしゃあしゃあとそんな事が言えますね?あんな妨害までして、天下のマーラ商会はそんなに自信が無いんですか?それとも、妨害をしないと勝てない程マーラ商会さんは脆弱なんですかねぇ〜?」


と、煽りながら皮肉をたっぷり含んで言うと隣のスキンヘッドの大男が俺の袖を掴みながら


「テメー!黙って聞いてりゃ良い気になりやがって!その口、今すぐ黙らせてやろうか?」


大男の脅しに対して俺は心の中で


(なんてお決まりテンプレなセリフを言うんだこの馬鹿は!噛ませ犬みてーな奴だな本当。てか、こいつは昨日、俺がぶっ飛ばしたの忘れてるのか?)


俺がそんな疑問を持っていると、ある事に気づいた。

(あれ?よく見たらこいつ、昨日の奴じゃ無いぞ!昨日の奴は顔の左にホクロがあったけど、こいつは右にある!・・・なる程ね、双子ってことか!)


俺がようやく疑問を解決すると、袖を掴んでいる大男が


「なんだ、びびって声も出せねーのか?」


と言って来たので、いい加減鬱陶しくなった俺は


「うるせー!」


パチン!


俺は大男の額に、ゴブリンを粉砕するデコピンを喰らわせる。

ちなみにちゃんと手加減をしているので、死な事は無い!・・・死ぬ事は無いが、それでも喰らった大男はと言うと


バコーン!!


約、5メートル程吹き飛んだ後、壁に激突してそのまま失神した。


目が飛び出る程驚いているクラークさんを他所に、俺は優男に話しかける。


「で、何しに来たんだ?まさか茶化しに来ただけじゃ無いだろ?」


すると優男は笑みを浮かべながら


「ええ、その通りですよ!本日は当日の勝負方法などの詳しい説明をしに参った次第でございます。あっ!申し遅れましたわたくし、マーラ商会副会長のナイジェルと申します。どうぞお見知り置きを…」


ナイジェルは軽くお辞儀をしながら自己紹介をしてきたので俺は


「どうせ調べたんだろうけど、冒険者のケイタだ。宜しくするつもりも無いから、別に見知りおく必要は無いぞ!」


「そうですか。ではケイタ様、そしてクラークさん。勝負方法のご説明を致しますので、こちらへどうぞ」


そう言って、ナイジェルは歩き出す


「俺の言った事に否定しないんだな?」


俺がそう言うと、ナイジェルは足を止めて


「ふふふ、ええまぁ。それよりも、こちらですよ」


ナイジェルは不気味な笑みをこぼした後、再び歩き出す。


俺とクラークさんは一度お互いの顔を見合ってからナイジェルの後をついて行く、すると一軒の喫茶店に入った。


ナイジェルは店の一番奥のテーブルに座り俺とクラークさんはその反対側に座る。


ちなみに、俺がノックアウトした大男はそのまま放置だ!


しばらくして、頼んだコーヒーのような液体がやって来たので、話が始まった。


「まず、勝負のお題ですがこれに関してはそれぞれ自由という事で宜しいですか?」


「ああ、それで構わないがいいのか?」


「何がですか?」


「せっかく肉を大量に手に入れて、こっちに回さないように、根回しまでしたのにそれだと意味がないだろ?」


「そんな事はありませんよ。それに・・・いや、やめておきましょう」


「まぁ、そっちが良いならこっちは構わないがな!」


肉が使えない以上、こちらとしても願ったりだ!


「では次に勝負の判定ですが、実は勝負の事をテッサリアの領主である「ノールド・バスタード」様にお伝えしたところ、ぜひ審査員を務めたいとおっしゃいましてね」


「つまり売上ではなく、審査員による多数決で勝負を付けると言う訳だな」


まるで、料理の○人みたいだ!

あれって俺が生まれる前に終わってたから、一度やってみたかったんだよねぇ〜


「その通りで御座います。それとほかの審査員に関しましては、街の有力者などから数名を選抜いたしますが宜しいですか?」


ほほーん、さては奴らの息がかかった人物を選ぶ気だなあ!


つまり、食○のソー○の叡山先輩と同じって事ね!

そっちがその気なら、こちらはソー○みたいに真正面から潰す!!


俺はナイジェルに対して


「ああ構わない。いくらお前らが自分達に有利な人選をしたとしても、勝つのは俺だからな!」


「では、楽しみにしてありますねケイタ様」


そう言って、ナイジェルは店を出て行った。





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