第16話 妨害


なんとかクラークさんを説得した俺は、早速クラークさんにタレ作りを伝授している。


クラークさんは、伊達に屋台で生計を立てていないようで、俺のアドバイスを元にテキパキとこなしていた上、包丁捌きも様になっていた。


「ケイタ!こんなもんでどうだ?」


と言いながら出来たタレを見せてくるクラークさんに俺は


「うん!良い出来ですね!これなら問題無いでしょう!」


と言って親指を立ててグットポーズを取ると、クラークさんが俺に抱きついてきた。


「ありがとうケイタ!これであのにっくきマーラ商会に勝てるぞ!」


「そ、そうですか、それは良かったです。それよりも肝心の肉の方は大丈夫ですか?漬ける関係で明日には用意しないと不味いですけど?」


と、俺がクラークさんに聞くとクラークさんは胸を張りながら


「もちろんだケイタ!肉は昔から世話になってる肉屋に頼むから安心してくれ!」


と言って俺の背中を叩いてくるが、俺は何故か嫌な予感がしていた。


その後、俺は近くの宿屋で宿泊の手続きをしてから夕食の準備を始める。


今日の夕食は本来なら、アクアパッツァを作る予定だったのだが、昼間使ったウルフの肉を使ったハンバーガーを作る事にした!

ちなみに使わない魚は【アイテムボックス】に鮮度を保ったまま保存して置けるので、次回に回す事にした。


本当、時間停止機能付きの【アイテムボックス】って便利だよね!


一家に一台欲しいわ!


まずウルフの肉を叩いてミンチにしてひき肉を作った後、オニーオンをみじん切りにしてフライパンで炒める。飴色になって来たらフライパンから取り出して冷やす。

その間に、トマトに似たポマートをスライスして、葉物野菜と果物から作った中東でよく食べられているチャツネを用意しておく。


おっと!肝心のソースにはケチャップとマスタードに、マヨネーズを用意しておく。


冷えたオニーオンをウルフのひき肉に加えてさらに塩、胡椒、ナツメグ、隠し味に味噌を加えて形を整えたら、【管理人】スキルの温度管理を使って冷やしてから焼く。


「うーん!良い匂いだ!あとはオーブンに入れて!」


俺は焼いたハンバーグをオーブンに入れて中まで火を通す。


5分程してオーブンから取り出したハンバーグはヂュウヂュウと音を立てながら香ばしい香りを立たせている。


「よし!あとは軽く焼いたバンズに具材を挟んで・・・・完成!!」


俺は完成したハンバーガーを皿に盛ると、別に作っていたフライドポテトを乗せる。


「おお!まさにアメリカンスタイルのハンバーガー!!これにコーラがあったら完璧なんだけど流石にしょうがないか。それじゃあ、あとは女神に送るだけだな!」


俺は完成したハンバーガープレートに向かって祈りを捧げる。すると、いつも通り光輝きながらハンバーガーが消えていった。


しばらくして、頭の中に響く女性の声が聞こえる。


「美味しい!!味噌が入った事によりより濃くがあるジューシーなウルフ肉!それにこのハンバーグには、ロースの部位とバラの部位を混ぜてあるから程よい食感と堪らない肉汁が最高ね!そして一緒に入っている野菜が、彩りはもちろんシャキシャキとした食感で楽しいわ!でもなんと言っても、甘味と酸味のあるジャム?みたいな物とソースが混ざり合って幾ら食べても飽きないわ!!もう最高としか言えないわね!!!」


女神は『どこの食レポだよ!』と思わせるマシンガントークをしながら、ハンバーガーの感想を伝えて来た。


と言うか、女神の奴だんだん食レポの腕が上がって来てる気がするんだけど?


しばらくして、ようやく女神の声が聞こえなくなったので、俺もようやくハンバーガーを食べ始める事が出来た。


自分で作ったので分かりきっている事だが、女神の食レポの通りハンバーガーはかなりの完成度と味で大満足する出来だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〜sideマーラ商会〜


マーラ商会本部


テッサリアの中心街に本部を構えるマーラ商会、その最上階にある会長室に現在、上等なスーツを着ている優男がテーブルで書類の整理をしている初老の男に昼間の事を話す。


すると初老の男がゆっくりと話し始める


「ふふふ、成程成程。流石は我が息子であるぞナイジェルよ!」


「ありがとうございますお父様」


そう、昼間の優男はマーラ商会を一代にして繁栄させ、現在会長を務めるノマーラの一人息子であるナイジェルだったのだ!


ノマーラは喜んでいるナイジェルを見てから


「それで、我々はどのような戦略を持ってして勝利するかな?」


ノマーラは少し圧を込めてナイジェルに質問をする。

その圧に押されて、ナイジェルは全身を震わせながら答える


「はい!我が商会としては、コストや品質管理などを考えて、やはり酒類や乾物などでしょう・・?!!」


バシン!!


ナイジェルが話し出すと、ノマーラはテーブルを思いっきり叩いてから怒鳴る。


「何を甘い事を言ってるんだ!資本力ならばこっちが圧倒的に勝っているのだ!ならば我々の取るべき手段はまず、相手を戦えなくさせる事だろう!何故そんな事が分からんのだ!この馬鹿が!」


と言って、ナイジェルに向かって書類をぶち撒けると、立ち上がって窓の方を見ながら


「よいか!街中のウルフの肉を買い尽くせ!それと、肉屋に圧力をかけて奴らに売らせないように手を回せ!それで奴らは何も出来ずお終いた!ハッハッハッ!!!」


「か、かしこまりましたお父様。直ちに手を回して参りますので、失礼致します」


そう言ってナイジェルは部屋をでる。


一人になったノマーラはワイングラスを持ちながら


「ふふふ、これで我が商会がこのテッサリアの街の全ての商店を掌握する日も近いな。そして、の計画が完遂した暁には……ふふふ、ハッハッハッ!!!」


と窓から外の景色を見ながら高笑いをしている。


だがこの時ノマーラは知らない。

クラークに手を貸しているのが、一流の料理人であり、女神からチートスキルを与えられた最強の存在である事を・・・

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