第14話 病の少女と料理人
屋台のある噴水広場から歩いて10分ほど経つとクラークさんの家に到着した。
「ここが我が家だ!俺は茶を用意してくるから適当に上がってくれ」
「それではお邪魔します」
クラークさんの家は、木造の平家で結構年季が入っていたが、中は手入れが行き届いていて綺麗だった。
俺が家の中を見回していると、奥の扉が開き見た目が高校生くらいの金髪碧眼の女の子が出てきた。
「お帰りお父さん。!!えーと、お客さんですか?」
女の子は俺を見て慌てて、少し乱れていた髪や服装を正しながら聞いてきたので、俺は優しい口調で
「うん、そうだよ。君はクラークさんの娘さんかな?」
俺がそう聞くと女の子は
「はい。娘のミユです。お父さんがお世話になっています」
と緊張した趣で話してきたので俺は
「あはは、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ!それに、クラークさんとは今日会ったばかりだがら気にしないでね」
「そうなんですか?ごめんなさい、私勘違いしていたようで!ゴホッ!ゴホッ!」
「だ、大丈夫?!」
話していると、突然ミユちゃんが咳き込んだので、俺は背中をさすってあげていると、クラークさんがやってきてミユちゃんに駆け寄る。
「大丈夫かミユ?薬は飲んだのか?」
「う、うん。ちゃんと飲んでるよお父さん」
「そ、そうか、ほら部屋に戻って休んでいなさい」
「うん。分かった」
「悪いケイタ。リビングで待っててくれ」
「分かった」
クラークさんに促されて、ミユちゃんは自分の部屋に戻っていた。
そのあと俺はリビングへと通されてから椅子に座る。
「待たせて悪かったなケイタ。こんなのしか無いが、飲んでくれ」
クラークさんが出したのは、日本で言うところのほうじ茶に似たお茶だった。
俺はお茶を一口飲んでから
「聞きたいんですが、娘さんはもしかして病気か何かですか?」
俺の問いに対してクラークさんは顔を曇らせながら
「ああ、娘は生まれた時から体が弱くてな。
それなのに、魔力が高いせいでまともに魔力のコントロールが出来なくて、
「治すことはできないんですか?」
「残念だが、魔力錯乱病には薬は無いんだ。唯一秘薬だけが治せるらしいが、今まで一度として秘薬を見つけたなんて話を聞いた事がない」
「そうですか……」
クラークさんが悲しそうな顔をしている時、俺はなんとか助けてあげられないかと考えていた。
(どうにか治せる魔法とか・・・あっ!もしかしてスキルで治せなるんじゃあ・・・でも、俺のスキルが知られるのは困るしなぁ)
俺がどうするべきが悩んでいると、心の奥底で封印していた記憶が蘇って来た。
あれは俺が20歳の時、2つ年下の妹が不治の病の為、病院のベットの上で衰弱して動けない中、必死に俺の手を握りながら、弱々しくか細い声で
「お兄、ちゃんの、作ったごはん。もっと食べたかったなぁ・・・」
「ダメだ!行くな桜!もっと美味いご飯を食べるんだろ!頼む、目を開けてくれ、お願いだ、さくらー!!」
まるで眠るように静かに息を引き取った時の事を思い出した。
(ごめん桜、俺が間違ってた。お前のように病気に苦しむこの子を助けられる可能性があるのに、俺は今、見捨てようとしたんだ・・くそ!本当にごめん桜!この子をお前のように死なせたりなんかさせない!絶対にこの子を助けるから、だから見ててくれ)
俺は覚悟を決め、クラークさんに提案してみる。
「あのクラークさん。誰にも言わないって約束できるのであれば、もしかしたら娘さんを治す事が出来るかもしれません」
俺の話を聞いたクラークさんは勢いよくテーブルに手を置いて
「本当か?!頼むケイタ!!俺が出来る事ならなんだってする!だから頼む、娘を助けてくれ!」
と頭を下げる。
その姿を見た俺は慌てて
「分かりましたから、顔を上げてくださいクラークさん!それに、もしかしたら治ると言うだけで、絶対に治るわけでは無いのであまり期待しないで下さい」
「それでも頼む!娘には時間が無いんだ!どんな小さな可能性でも頼む」
クラークさんは泣きながら俺の肩を掴んでくる。
「分かりました。それじゃあ娘さんのところに行きましょう」
「頼む」
俺とクラークさんはミユちゃんの部屋へ行き、ミユちゃんに事の経緯を話す。
そして、『鑑定』を使ってミユちゃんを鑑定してみる。
名前 ミユ
年齢 16
レベル 1
ジョブ 魔法師
ステータス
攻撃 3
防御 10
魔力 50
魔防 40
速さ 15
スキル
火魔法 水魔法 風魔法 土魔法
空間魔法 魔力回復 並列魔法
状態
魔力錯乱病
(病気の為、多すぎる魔力を体内で上手くコントロールが出来ずに起こる病気。放っておくと二十歳を前に死ぬ)
(本当に、魔力錯乱病なんだな。それなら俺の考えた方法で治る筈だ!てか、魔力が高いな!レベル1でこれならレベルを上げたらどうなるんだ?)
俺は心の中で考えながらミユちゃんの目を見て
「それじゃあミユちゃん。これから治療を始めるけど、準備は良いかな?」
俺が聞くと、ミユちゃんは首を縦に振りながら
「よろしくお願いしますケイタさん」
と言って目を瞑る。
「それじゃあ行くよ。スキル『状態異常無効』!それからスキル『回復』!」
俺はまず、『状態異常無効』で魔力錯乱病を治してから、『回復』を使ってミユちゃんの体を健康体にする事で再発を防止させる。
俺がミユちゃんの体に手を当てながらスキルを使うと、ミユちゃんの体が光りだした。
「う、うう」
時々ミユちゃんが苦しそうにしながら呻き声をあげるが、だんだんと顔色が良くなって行く。
しばらくして、光が収まるとミユちゃんが目を開きながら起き上がる。
「嘘?体が全然苦しく無い!!それになんだか、今ならどんな事でも出来る気がするわ」
ミユちゃんは、部屋の中を歩きながらそんな事を言う。
俺はもう一度『鑑定』をかける。
名前 ミユ
年齢 16
レベル 1
ジョブ 魔法師
ステータス
攻撃 3
防御 10
魔力 50
魔防 40
速さ 15
スキル
火魔法 水魔法 風魔法 土魔法
空間魔法 魔力回復 並列魔法
状態
無し
鑑定結果を見た俺は「ほっ!」とため息をついたあと
「良かったー。どうやら成功したようだね!」
とミユちゃんに伝えると、ミユちゃんが俺に抱きついてきた。
「ありがとうございますケイタさん!本当にありがとうございます!この御恩は一生忘れません!」
「う、うん。分かったから、とりあえず離れようかミユちゃん!ほらクラークさんも見てるから」
俺はクラークさんの方を見ると、クラークさんは涙を流しながら俺に抱きついてきた。
「うおおー!!ありがとうケイタ!」
「ちょっ!やめて下さいクラークさん!大の男に抱きつかれて喜ぶ趣味なんて俺には無いんですから!」
俺は全力でクラークさんを引き剥がすと二人に
「くれぐれもこの事は誰にも言わないで下さいね!」
と念を押す。
「分かりましたケイタさん。絶対に誰にも言いません!」
「俺も誰にも言わないし、言うつもりも無いが、本当に良いのか?あれだけの魔法が使えるなら幾らでも稼げるだろ?」
「良いんですよ!俺は料理人ですから!」
「そうだったな!ケイタは料理人だったな!」
「はい、なのでクラークさん。とりあえず、3日後の勝負の話をしましょうか」
「そうだった!ミユの事で頭がいっぱいだった!!」
「はぁ、大丈夫ですか?」
「もちろんだぞケイタ!はっはっはっ!!」
「本当に大丈夫かなぁ・・・」
笑っているクラークさんを見て、心配になる俺だった。
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