第13話 出店と乗りかかった船


冒険者ギルドを後にした俺は、とりあえず当面の寝床を確保するために大通りを進む。


何故大通りを進んでいるかと言うと、安全で綺麗で、お風呂がある宿がないか、ダメ元でメリッサさんに聞くと、なんと大通りを奥に進んだ貴族街のそばにあると教えてくれた。


ただ、メリッサさんが言うには一泊で金貨1枚もかかるらしく、安宿なら銅貨5枚で泊まれる事を考えるとかなり法外な金額だが、日本人としてやっぱりお風呂に入りたい!

なので、メリッサさんに頼んでギルドで紹介状を書いてもらった。


大通りは凄く活気があり、まるでお祭りのように出店や屋台などが並んでいて、所々でいい匂いが漂ってくる。


「うーん、どれもこれも美味そうな匂いだ!それに、見たことのない食材がいくつも売っているし、どうせなら買っていくか!」


俺は気になった屋台を片っ端から回りながら、今日の夕飯の食材を買う。

ちなみに今日の献立は、脂の乗った魚が売っていたので、アクアパッツァを作る事にした。ただ、オリーブオイルが無いので代用として、油の実と言う植物の種を潰して出来た食用油を使う事にした。


大通りの半分ほどを進むと、大きな噴水のある広場に出たので、休憩がてら俺はウルフの串焼きを買って食べる事にした。


「すみません!串焼きを2つください!」


俺が注文をすると、肉を焼いている店主が


「はいよー!ちょっと待っててくれよ!」


と言って、手際良く串焼きを焼いていく。


次第に美味そうな匂いがしてきて、もうすぐ出来上がりそうな時、後ろからいきなり大声が聞こえてきた。


「おいおい!!何勝手にここで商売なんてしてんだよこらー!!」


驚いた俺は反射的に後ろを振り向くと、そこにはガラの悪いスキンヘッドの男と、上等な服を着た優男がいた。


俺がガン見していると、スキンヘッドの男が俺に向かって


「何見たんだテメー!見せもんじゃねーぞこら!」


と言いながら俺の事を睨む


関わると面倒くさそうなので俺はすぐに目線を逸らす。

すると二人組は俺を押し退けて店主の元へと行き、優男が話始める。


「なぁクラークさんよ。この前言いましたよねぇ、この場所は我々マーラ商会が買い取ったのですぐに場所を空けろと」


すると店主は


「何言ってやがる!ここは爺さんの代から守ってきた場所だ!誰にもわたさねぇ!それに買い取ったと言っているが、あんな理不尽な要求なんて知った事か!」


と言うと、優男は笑いながら


「そうですか。それじゃあ仕方ないですねぇ。おい、やれ!」


「うす!」


優男がスキンヘッドに命令をすると、スキンヘッドが屋台を破壊し始める。


ドカン!バコーン!


「何すんだやめろ!」


と、店主がスキンヘッドを止めようとするが


「邪魔だ!」


「うわ!」


店主は殴られて倒れてしまう。


「ふん!邪魔をするから痛い目に見るんだよ!」


「や、やめてくれ!この店が無くなると、娘の治療費が・・・」


店主がスキンヘッドの足にすがりつきながら

止めるよう頼むが


「そんな事知るか!こんな串焼きなんてこうだ!」


トン!


スキンヘッドが串焼きを踏みつける。


その瞬間、面倒だからと言う理由で傍観していた俺だが、串焼きを踏みつける光景を見て切れた。


「おい」


俺がスキンヘッドの肩を掴みながら声をかけると、スキンヘッドがこちらを向いて


「なんだテメー?正義の味方気取りか?」


と聞いてきたので、俺は


「その足をどけろ!」


少し小声で言うと


「はぁ?なんだってぇ?」


と聞き返してきたので俺は


「その足を退けろって言ったんだよクソ野郎が!!」


ドン!


「ぐは!」


俺がスキンヘッドに思いっきりぶん殴ると、スキンヘッドは5メートルほど吹っ飛んで気絶した。


「いいか!どんな理由があろうとも、食べ物を粗末にするんじゃねぇー!」


俺は気絶しているスキンヘッドに向かって言うと、優男が俺に


「はぁ、こりゃ面倒な事になりましたねぇ〜

落としまえはどうするつもりですか?」


「なんだ?お前も俺とやるか?」


俺は少し殺気を放ちながら聞くと優男が両手を前に出して


「いえいえ、私は争い事が苦手なのでここは別の方法で方をつけませんか?」


「別の方法?」


「ええ、3日後にこの街で開かれる祭りで其方と、我がマーラ商会のどっちが多く売り上げるかの勝負ですよ!其方が勝てば此方は二度と手は出しませんが、負ければ大人しく場所を譲っていただきます」


俺は少し考えてから


「いいだろう。俺もその勝負に参加出来るのならその勝負乗った!」


「構いませんよ。どっちが勝つかなんて分かりきっている事ですから。おい帰るぞグズ!」


と言って優男はスキンヘッドを蹴り起こしてどこかへ行ってしまった。



二人の姿が見えなくなると俺は倒れている店主に手を差し伸べる。


「大丈夫ですか?」


すると店主は俺の手を掴んで


「ああ、すまないな。お前さんまで巻き込んじまって!それに奴らに目をつけられちまった以上もうこの街では・・・」


と申し訳なさそうに言ってくるので


「気にしないで下さい。俺としても、職業柄目の前で食べ物が踏みつけられるのが耐えられ無かったので」


「なんだい、お前さん料理人か何かか?」


俺は胸を張ってドヤ顔で


「ええそうですよ!だから3日後の勝負は任せて下さい!」



そお言うと、店主が嬉しそうに


「本当か!それなら助かる。ありがとうな!えーと」


店主は手を前に出してくる。


「ああ、これは失礼しました。俺は圭太と言います。どうぞよろしく」


俺は握手をする。


「俺はクラークって言うんだ!よろしく頼むぞケイタ!」


「ええ、よろしくお願いしますクラークさん。それじゃあ早速ですが、勝負の作戦を考えましょう」


「ああ、頼む」


「それで、どこで考えますか?」


「それならば、うちで良いだろう。店がこんなんじゃ営業できないからな」


「了解だ」


作戦を考える為に、俺とクラークさんは屋台の残骸を片付けてからクラークさんの家に向かう。











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