第11話 冒険者ギルド(変)


ギルドの扉を開けて中に入ると、そこはよく漫画やアニメで見た光景と殆ど変わらなかったので、正直期待はずれ感は否めなかったものの、やはり冒険者ギルドとあって男心をくすぐってくる雰囲気をかもしだしている。


俺が受付を探していると、カウンターで酒らしき物を飲んでいた僧侶の様な格好をした男がいきなり叫びだした。


「うおー!!拙僧に破壊させろー!」


と、見た目に反してかなり物騒な事を叫んでいる僧侶がいたので俺はゆっくり目線を逸らすと、今度は何故かゴスロリ衣装を着て手に鞭を持つ女性と四つん這いになりながら踏まれている男を発見した。


「オホホホ!ほらもっと良い声を上げなさい!」


「はいいいい!襄王様!!!卑しいこの豚めに、もっと下さいませー!!」


と鞭を打ちながら恍悦した表情高笑いをしている襄王と叩かれて顔を赤らめている豚野郎が叫んでいた。


「え?」


俺は急いで外に出て看板を確認しようとした。


もしかしたら冒険者ギルドでは無く、変人ギルドに来たのかも知れないと思ったからだ。


と言うよりも、そうであってくれ!と願っていたのだが、俺のそんな願いは儚くも打ち砕かれた。


「あら?見ない顔ね、新人さんかしら?!どうしたのそんなに慌てて」


どこからか、オネェ口調の野太い声が聞こえてくると、一度外に出ようとする俺にいきなり肩を誰かが掴んで来た。俺はゆっくり顔を向けると、そこには上半身が裸なのにも関わらずメイクをしているスキンヘッドのボディービルダーのような男がいた。


「ギャァアアアアア!!!!!」


その瞬間、ギルド中に汚い高音が響く。


この日、俺は生まれて初めて心の底から現実逃避したいと思った・・・


いや、マジでやばいからね!エースが腹を貫かれた時よりも衝撃的だったからね!マミるなんてレベルじゃ表せないくらいやばいから!


だって、オカマだよ!オカマ!それも、筋肉がやばいからね!ルネサンス彫刻並みにガッチガチだよ!しかも何故か化粧してるし、もう化け物とかそうゆうレベルを超えてるからね!


するとマッチョのオカマが口を開く


「あら驚かせてしまったみたいでごめんなさいね。ワタシはここのギルドマスターをしている「マオ・カーマ」よ!」


と自己紹介をしてくるので、失礼がない様に俺も挨拶をする。


「は、初めまして、自分は圭太と言います。冒険者登録をしたくて来ました」


俺は苗字を伏せて名前を名乗った。この世界がどうかは分からないが、よく苗字があると貴族なんかに間違わられる可能性があると思ったからだ。てか、ギルドマスターの名前がマオ・カーマって繋げて読んだらオカマじゃねーか!


(ヤベー、このギルド全体的にやばいだろ!大丈夫なのかこの街は?)


俺が考え事をしていると、綺麗な金髪を靡かせた女性がやってきた。


「ようこそ冒険者ギルドテッサリア支部へ!わたしは受付嬢をしています「メリッサ」と申します。本日は冒険者登録ですよね?こちらのカウンターにどうぞ」


とメリッサさんは受付の方に手を伸ばしながら俺に話しかけるが、俺はと言うと


「・・・・」


ずっとメリッサさんに見惚れていた。

俺が黙ってメリッサさんの事を見つめているとメリッサさんが


「あの〜、大丈夫ですか?気分でも悪くしましたか?」


と、心配そうに俺の顔に自分の顔を近づけてくるので、俺は慌てて


「だっ!大丈夫です!すみません。メリッサさんの耳が気になりまして、もしかしてメリッサさんってエルフですか?」


そう、俺がメリッサさんを見つめていた理由はと言うと、メリッサさんの耳が尖っていたからなのだ!


(この耳っていわゆるエルフの耳だよね?マジで異世界に行ったら会ってみたい種族第2位のエルフだよね?!よっしゃあー!!)


俺が内心、テンション爆上げで喜んでいると、メリッサさんが


「残念ながらわたしはエルフでは無く、ハーフエルフなんですよ。ですから純粋なエルフとはまた別の種族になりますね!」


と笑顔で行ってきた。


「あっ!そうなんですね、すみません勘違いしちゃいました」


「気にしないでください。よく言われる事ですし、わたしも特に気にしていませんから」


「ありがとうございますメリッサさん」


「うふふ、貴方は素直な人ですね。それではこちらの用紙に必要事項を書いて下さい。代筆は必要ですか?」


「大丈夫です。自分で書けますよ」


「分かりました。それではお願いします」


俺は渡された紙に書き込んでいく。


(えーと、名前はケイタで、スキルはどうするか?流石に【捌く者】とかは書けないし、とりあえず魔法ってことにしとくか。後は・・・よし、これで大丈夫っと!)


俺はスキル欄に魔法と書き、他の欄も全て埋めていくと、メリッサさんへと渡す。


「はい。大丈夫ですね!それではこちらのカードに血を一滴垂らして下さい」


とメリッサさんは白いカードを取り出すと俺の目の前に置く。

俺は言われた通り、近くにあった針で血を一滴、カードに垂らすとカードの色が変わっていき、白から緑になった。


するとメリッサさんが


「はい、これで登録完了です!冒険者についての説明はいりますか?」


と言ってきたので俺はお言葉に甘える事にした。


「それじゃあお願いします。メリッサさん」


「かしこまりました。ではまず冒険者について・・・」


無事に冒険者登録が出来た俺は、メリッサさんから冒険者についての説明を受ける事にしたのだった。




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