出会い06
二つ年上、三年生だった。高一の春、上級生がいやに大人びて見えるのが憎かった。
先輩は罪滅ぼしに食べ物を奢ってくれると言うが、なにせここは田舎だ。
近くで何か食べるにしても、少し離れたところに寂れたコンビニがある程度。
正直なところ、靴擦れした足で歩くのは気が引ける。
「おたけ先輩。お腹は空いてるんですけど、近くに何かあります?」
「自転車だったらコンビニまであっという間だ。後ろに乗ってくれよ」
「うわー。高校生ってそんな感じで異性不純交友が始まるんですね。どうせついこの間まで中学生だったガキなんてちょろいと思っているんでしょ」
「嫌なら走って着いて来い」
「先輩待って! 乗ります、乗るから行かないで!」
「置いてくぞ〜」
そう言いながらもしっかりと、いや、ちゃっかりと止まって待ってくれている姿が憎らしかった。
「おたけ先輩。私、二人乗りとかしたことたいんですけど」
「バランス感覚ないと落ちるからな」
「え。冗談ですよね?」
「さあてね」
「無理ですって! 私すごーく運動音痴ですよ!? バランス感覚とかないですよ!?」
「試してみないとわからないだろ? 怖かったら僕の腰でも掴んでいればいいさ。ほら、早く乗れよ月夜見」
「それセクハラじゃないです!?」
そう言えば、年の近い人とこんなに話をしたのは久しぶりだと気が付いた。それも、異性の相手と。
なんだろう。話しやすいというか気を遣わなくていいというか、先輩はそんな雰囲気を纏っていた。
いざこざやら小競り合いやら言い合いやらがあり、なんだかんだで先輩の自転車の後ろに乗っていた。
思っていたよりもバランス感覚は必要なかった。
黄金色に近づく大麦畑の中、私たちは夕風を浴びながらゆっくりと走っていた。
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