出会い04
私はすっかり遅刻を覚悟して、黄金色に近づいてきた大麦畑に囲まれた農道の端に座り込んでいた。
もういっそサボってしまおうか。どうせ学校へ行ったところで話す友だちがいるわけでもないのだし、とか。
目を凝らして見たことはなかったけれど、道端ってちっちゃい虫が沢山いるんだなー、とか。
そんなことを考えていたところ、カラカラと自転車の鳴る音が近づいてくるのに気が付き、目を向けて見ると、学ラン姿の男子がそこにいた。
今どき逆に珍しいだろう学ランを着ているのは私が通う高校の男子くらいのものだ。
距離にして数メートル。
上級生らしい、ということはわかる。
つい二ヶ月前まで中学生だった私の同級生とは明らかに異質だ。
大人びたとまでは言わないが子供っぽくもない。青年と呼ぶに相応しい、そういう雰囲気が伝わってくる。
なぜだろうか、彼は徐々に自転車のスピードを落として近づいてくる。
同じ学校の女子がこんなところに座り込んでいるものだから、声をかけようと立ち止まるつもりなのかもしれない。
これはありがたい話だ。
学校へ行くのは、もう私の足では無理だった。
家に帰るという手もあるが、今帰ると間違いなく御石さんから怒られてしまう。怖い。いや、怖すぎる。
疲れた。というか、整備されていない田舎道を歩いたせいで靴擦れして踵が痛いのだ。
これ以上歩きたくない。恥を忍んで自転車の荷台に乗せてもらおう。
先輩おはようございますぅ〜!
もしよかったら自転車乗せてくれませんか〜?
そう。心の中では女子力全開の黄色い声で話しかけたつもりだった。
「……あっ」
目が合った瞬間、思い出した。
やべえ。同い年くらいの人との話し方忘れたし!
なんてこった。ぼっちの弊害がこんなこところにまで……!
いや、しかし。
振り絞って出てきた小さな声が彼にも聞こえたはずた。
しっかり目が合っていて、女子から男子に声をかけたのだ。
今度は相手側から何かしらのアクションを起こすはず!
カラカラカラ……。
自転車の音が虚しく響き、先輩らしき男子生徒は無言で遠ざかっていく。
なんでだよ!
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