出会い03

*私*

 冷たい風も懐かしくなったきた頃。

 中学まで過ごしてきた近隣県から、父の実家があるこの田舎町へ引っ越し、この田舎の中ではそこそこ有名な進学校を受験した。


 校風や通う生徒もいたって普通で、合格発表を迎える頃には新しい地での新生活に胸を膨らませていた。


 そして、入学式の日。

 付き人の御石みいしさんに連れられて初登校した日。

 私の高校生活は意外な形でスタートした。


「月夜見さん、実家がヤ◯ザらしいぜ」


「中学の時すごいヤンキーだったんだって」


「怒ると超怖いってよ」


「すでに三年の先輩もシメてるって本当?」


 ちょっと待って!? なにそれ!? 違うからね!?

 聞きたくなくても勝手に耳に入る噂話。

 中学が他県だから庇ってくれる知り合いなんているわけもない。

 噂が噂を呼び、話の内容はどんどんエスカレートしていっている。


 同じクラスに配属された人たちは冷ややかな目で私を見ているし、一度ひとたび廊下に出れば私を見て怯える人もいる。

 えー。ぼっち確定かよー。まだ初日だっていうのにさー。


 噂話によると、どうやら御石さんが原因らしいということに気が付いた。

 私の付き人、まあ、お世話役のような御石さんはは、確かに一見アブナイ香りがする。

 金髪だし真っ黒スーツだしスカート超ミニだしピンヒールめっちゃ高いし。女マフィアかよ。

 いや、それにしても私がヤ◯ザの娘というのは飛躍しすぎだ。


 案の定というか、誰とも会話することなく高校生活が始まり一ヶ月が過ぎた頃、ちょうどゴールデンウィーク明けのことだった。


 学校までの車に御石さんもついてくるというのがいけないのだと考え、ついてこないでと伝えたら軽い口論になった。

 つい口が滑って、歩いていくと吐き捨てた手前、引っ込みがつかなくなった私は、どう考えても徒歩では遅刻するだろう時間に家を飛び出した。


 そして、運動音痴かつ運動不足だった私の両足はすぐに限界を迎え、ひと休みしようと座り込んでいた時、小竹朔太郎おたけさくたろうと出会うことになるのだった。

 忘れもしない。最悪の出会いだ。


 高校一年、五月。

 私の春がゆっくりと動き出した。

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