出会い02
だんだんと蒸し暑さが増してきた。
朝、登校中。
僕と農家さん以外ほとんど誰も通らないだろう田舎町の農道を自転車で進んでいると、僕が通う高校の、女子用の制服を着た生徒が座り込んでいた。
距離にして数メートル。近づいていくにつれて、ペダルを踏む足が重くなる。
カラカラとなる自転車の音に気付いたのか、農道の端に座り込んで遠い目をしていた女子生徒は僕の方に細目を向けた。
目が合った。
「……あっ」
目が合うと同時に、女子生徒が小さく息を漏らした。
艶やかな髪が風になびき、細く真っ白な顔と首が露わになる。非常に大人びな顔付きだった。
と、同時に僕の知らない顔だということに気が付いた。
「……」
「……」
目は合っているものの、僕も彼女も口を開かずにいた。
カラカラと、車輪が回る音だけが響いていた。
しかし、見ず知らずの女子生徒を前に、僕はどうすればよいのか。
自転車から降りて話しかければわかったのか?
結論から言えば、僕はそのまま彼女の横を通り過ぎ、一日学校生活を送ったのだった。
ここから学校までは自転車で10分もかからない。
遅刻にはなるだろうが、女子の足でも学校まで辿り着けるだろう。そう思っていた。
その日の帰り。
同じ農道を自転車で走っていると、なんと、朝とまったく同じ場所に同じ女子生徒が座り込んでいた。
反射的に、この女子生徒と関わってはいけないと、身体中の細胞に
「……あっ」
デジャブ?
自転車の音に気付いた彼女は僕の方に細目を向け、小さく息を漏らす。
そして、僕が横を通し過ぎようとした時、ついに声を発した。
「私は困っていますよ?」
そりゃそうだろうな、と思った。
声をかけられ、僕は彼女の前でぴたりと止まった。
その様子だと朝から約8時間、ずっとそこにいたわけか。夏前とはいえ暑かっただろうに。
農家のおじさんやおばさん、それにこの農道を通る軽トラックの運転手が彼女に声をかけても微動だにしなかった今日一日が目に浮かぶ。
「あなたが帰りもここを通ると思って待っていました。この薄情者」
立ち上がった彼女は、虫でも見るかのような目で僕の瞳を捉えていた。
彼女の冷たい視線はさておき、とても整った顔立ちと華奢な体が印象的だった。
「お腹が空いたんですけど?」
「……弁当派じゃないんだな」
これが、僕と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます