出会い01
*僕*
高校三年、春のこと。
僕が通う田舎の県立高校に、
衝撃を受けた。
県内ではそこそこ名の知れた進学校で、狭い田舎社会の中では、いわゆる優等生が通う高校だ。
絵に描いたような高校生像、とまでは言わないが、ごくごく普通の生徒しかいない高校に、それも田舎の高校に、月夜見希望はビッカビカに黒光りする高級車に乗って初登校をかましたのだ。
お金持ちの上品な令嬢ーーではないという噂はすぐに広まった。
僕は直接彼女を見たわけではない。
人伝に聞いたのだが、黒光りする高級車の運転席にはサングラスをかけた黒スーツの男。
月夜見希望と一緒に後部座席から降りてきたのはこれまた黒スーツの金髪女性。
その金髪女性は異常なまでに高いピンヒールをコツコツと鳴らし、校門まで月夜見希望の隣を歩いたあと、見送ってからは彼女が見えなくなるまで頭を下げていたという。
お金持ちの令嬢ではなく、ちょっと危ない筋の人間らしい。そういう噂が入学式初日の段階で、月夜見希望と同じ一年生に留まらず、僕たち三年の全クラスにまで行き届いていた。
その日、学校中は月夜見希望のことで話題に尽きることはなかった。
月夜見家は有名な極道一家。
県内の中学を占めていた。
悪そうなやつは全員友だち。などなど。
だが、そんなドラマや漫画のようなことはあるはずもなく、根も葉もない噂話は半月もすると全く聞かなくなっていた。
唯一、かなり可愛いらしい。というのは事実だそうで、モノ好きな男子の話題にちょいちょい出てくる程度には有名人だった。
進路希望の提出やら模試やらで慌ただしかったゴールデンウィーク明け。
月夜見希望という人物のことを忘れかけていた頃、僕は初めて彼女の姿を目にすることになった。
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