第13話 逆転
「健太、今レベルが上がりました!」
サヤの喜ぶ声が聞こえる。
それを聞いた親父は目を見開き、警戒心を露わにした。
僕は、親父から離れ、サヤに聞いた。
「レベルアップで僕は何が出来るようになった?」
「はい、呪文を1日に使える回数が1回増えました。更に新しい攻撃呪文も覚えました」
サヤは嬉しそうに説明した。
これなら一発逆転あり得るかもな。
1回増えた分を使って新しい攻撃呪文を発動したら勝てるかも知れない。
「サヤ、攻撃呪文の名は?」
「はい、ドラゴ・ザゲキです」
サヤが更に喜んでいるのがわかった。
僕はこれなら親父を倒せるかも知れないと思った。何故ならばドラゴ・ザゲキは僕の物語で出てくる呪文の中でも最強レベルの攻撃力を誇るものだからだ。
ドラゴ・ザゲキは斬撃が金色の龍の形を成し、敵を襲う。しかも、敵が逃げ惑っても直撃するまで追いかけ続ける。つまり、ドラゴ・ザゲキはかわすことの出来ない攻撃だ。また、ドラゴ・ザゲキの攻撃力は自身が戦闘で食らったダメージが大きければ大きいほど強くなり、強力な龍となる。
ここは賭けだが、もっと親父からダメージを受ければ僕の放つドラゴ・ザゲキは強力になる。呪文が唱えられないぐらいボロボロにならないようにしつつ、最大のダメージを受けないといけない。
僕はもう一度、剣を握り直し、親父に向かって行った。
「おい、呪文は使わないのか?」
親父は僕の攻撃をかわし、強力な一撃を僕の腹にキメきた。
「ぐわぁ!」
僕は一瞬意識が飛びそうだったが、なんとかもち直した。
それでも僕は立ち上がり、親父に向かって行った。
「おい、いい加減にしろ」
また、一撃を喰らわさせられた。
これでいい。親父が僕にダメージを与えれば与えるほど、これから使うドラゴ・ザゲキの威力が上がる。
「健太、もうやめてください!早く呪文を!」
サヤはボロボロになっていく僕を見てられないようだった。
確かに、そろそろ限界だ。
「ぐわぁ!!」
また、親父の一撃がクリティカルヒットした。
くそ、意識が飛びそうだ。
やるしかない。
「サヤ!攻撃呪文ドラゴ・ザゲキ!!」
サヤの口から今までにないぐらい明るい金色の玉が飛び出し、僕の身体の中に入った。
凄く力がみなぎるのを感じた。
これならいける。
「親父、くらえ!ドラゴ・ザゲキ!!」
僕が剣を下ろすと、雷が天に上り、真っ黒な雲の中から金色の龍が姿を現した。
「いっけー!」
金色の龍が親父に向かって行く。
かわす親父を龍は追いかけ、続ける。
「くそ!厄介な呪文を唱えおって」
親父は龍からの追跡に辛うじて逃れ続けている。
親父は逃れられないのを悟ったのか、体勢を整え、大きな剣でドラゴ・ザゲキを受けようとした。
バーン!!!
凄い大きな爆音が地面を震わせた。
親父に直撃した。
「やった!」
僕は親父を倒したことを確信した。
あれだけの威力の攻撃を受けたのだ。きっとただでは済まないはずだ。
その時、突如強風が吹いた。
ドラゴ・ザゲキによって舞った砂埃が、強風によって消え去った。
すると、親父が立っているのが見えた。
そんなバカな。
僕は信じられなかった。あれほどの攻撃を受けても普通に立ち続けている。
「健太、今のは少し危なかったぞ」
親父が身体についた砂埃をはたきながら近寄ってきた。
「嘘だろ…」
僕は恐怖で固まってしまっていた。
「もう終わりにしよう」
親父は大きな剣を持ち上げ、力強く下ろした。
斬撃が僕の方へ向かってくる。
これは終わったな。僕は時間の流れがゆっくりになっていることに気がついた。あれ、ムータイ発動してるのか?いや、違うな。身体は動かない。意識だけが高速で動いているだけか。これが走馬灯とな言うやつか?
「ぐうぁ!!」
僕は親父が放った斬撃を剣で受けたが、ものの見事に吹き飛ばされた。
その時、剣が折れてしまった。
「健太!ぐぁ!」
サヤが吐血し、倒れた。
「サヤァー!」
僕はボロボロの身体を引きずりながらサヤの元に駆け寄った。
実はサヤの本体はこの剣だ。僕の決めたクソ設定のせいでサヤは死んでしまう。
僕は溢れた涙を止められずにいた。
「サヤァー!!死ぬな!!」
僕はサヤを抱えた。
「私は大丈夫です。健太、貴方は私に囚われたダメよ。ちゃんと前を見てください」
サヤは呼吸も辛いはずなのに僕を励ました。
サヤとの思い出が僕の脳内を駆け巡った。
そして、サヤはその大きな瞳をゆっくり閉じた。
僕はサヤをゆっくり横にし、剣を強く握り直した。
サヤの残してくれたこの折れた剣で親父を倒す。
僕の目の前にいる親父と言う魔物は圧倒的な力を感じさせる。
でも、僕はサヤの仇を討たないといけない。
「このクソ野郎が!」
僕は剣を大きく振り上げた。
*
親父との戦いの後、僕は案の定ボコボコにされた。
親父は神文家の力を継ぐものとしてもっとしっかりするように言った。
父親は僕がイマジンの力を自分の妄想を実現する為に使って欲しくなかったみたいだ。
僕の場合、この力さえ使えばサヤのように綺麗な女性とも想像するだけで、イメージするだけで付き合うこともできてしまう。
この力は良くも悪くも危険だ。
下手をすれば僕を非常に堕落した人間に変えてしまう。
というわけで、今僕はアメリカにいる。
親父は「もっと世界を知ってこい」といい、僕にお金を渡し、海外に行くように言った。
僕はアメリカのサンフランシスコの海沿いのカフェでコーヒーを飲みながら、この話を書いている。
お店に新しいお客さんが入ってきた。
その人は、まるでサヤのようにスタイルが良く、可愛らしい顔立ちの女性だった。
彼女は、コーヒーを受け取ると、僕の隣の席に座った。
僕は彼女に話かけずにはいられなかった。
異世界転生の物語を描き続けたら、異世界の魔物達が飛び出してきた件 @noberu
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