-o-o- 33

突如、思い出したようにすずちゃんさんがバタバタしはじめた。

このサークルの面々は"突如"が多すぎて、ツッコまずにはいられない事が多いなぁ。

なんか悔しい。

……悔しい? ちょっと違うな、なんだろう。


「イチギョー! 教室の続きだー!」


手指に群がるドクターフィッシュみたいに何本もの眼鏡をぶらさげた涼ちゃんさんが駆け寄ってきた。

うわぁ。


「も、もういいですって……」


「メガネは、かけるだけでモテモテなんだぞ!」


「おわ!」


そのうちの一本を慣れた手付きで僕にあてがった。

速い、気づいたときにはメガネをかけてしまっている!


「う、うぅ、度が……つよ……視界が……」


一瞬で世界がボヤけた。

それに、何もかもがにじんでいるような。

何もかもが斜めに傾いているような。

目を閉じればよかった、そう思ったのは随分後の事で。

咄嗟には何も出来なかった。


モテモテのはずがクラクラだ。

いや、グニャグニャだ。


うぅ、気持ち悪い……


「す〜〜ず〜〜〜〜」


女の人の声がする。

スローな「す」と「ず」。

……なにこれ走馬灯?


「はうっ!?」


目元がガチャガチャして

一瞬でボヤけが直った。

気持ち悪さは……そのままだ。


「アンタ乱視でしょ!?」


何やってんの!

ひーん。


そんなやりとりが

聞こえた

気がする


あれ

もう


夜だっけ――

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