-o-o- 20

「……ともあれ」


わざとらしく咳払いをした明城みょうじょう先輩が、穏やかに笑ってこちらを見た。

明城先輩も笑うんだなぁ。

そらそうだ。失礼な事言っちゃった。ごめんなさい。


「わからない事があったらいつでも来てね。何かの縁だと思って」


う、うわぁ。


「ありがとうございます」


学校生活すら始まっていないけれど

てか、転入すらまだだけど

不安が無いはずがないスタートを切る前に

こんな事を言ってもらえる先輩に出会えたなんて。


もしかしたら、光太こうた先輩も、一見破天荒に見えていても

そこまで考えてくれてのあの強引さ、だったのかな――


「あーっ! この入部届、イチギョーの名前がもう書いてあるー!」


すずちゃんさんの人一倍大きな声に

キラキラと輝いてすら見えた明城先輩の顔が岩石みたいに強張こわばったまま動かなくなった。


ぴょんと飛び跳ねて書類をパスした先、向瀬むこせさんの声が続く。


「備考欄、増員に伴う部費引上の申立……」


「さっきの紙か!」


完全に僕と用紙に背を向けてしまった明城先輩に

光太先輩の流石だぜ副部長ガッツポーズは

届いたとか、届かなかったとか

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